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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第八章 〜親としては新米だけど頑張ります編〜
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1029.お姉様からの御説教。……御褒美と思うほど屈折していませんよ。





 朝食を交えた談話後、ミレニアお姉様に個室でちょっとだけ御説教を食らった。


「私達の事は放っておいて良いから、今日は身体を休ませなさい。

 これは貴女の姉としても命令よ」


 えぇぇ〜〜、私としてはミレニアお姉様やライラさん、勿論子供達と遊びたいのに〜と思っているのが顔に出ていたのか、睨まれてしまった。

 子供の頃からやられているから、身体が条件反射で従ってしまう。

 『相沢ゆう』の意識が目覚める前の『ユゥーリィ』として生きていた頃からの刷り込みだから、こればかりは仕方がない。


「だからって仕事をしたら、休んだ事にならないからね」


 おまけに先手を取られてしまう。

 流石はお姉様、私の扱いに関しては熟練の業が窺える。

 それだけ私の事を、妹として愛してくれているからだろう。

 でも休暇中であろうと、関係なく仕事が一方的に溜まって行くのが、領主業のブラックな所。

 可及的速やかに処理をしなければならない案件もある可能性もあるので、最低限書類や手紙に目を通さないといけない悲しい職業。


「それと昨日の事だけど─────」


 幾ら姉妹だからと言っても、嫁達の前に甘えすぎだと怒られた。

 乗っていたお姉様も同類だとは思うけれど、倍になって帰ってくるのでそこは突っ込まない。

 お姉様はお姉様で、真剣にお兄様の事を想っての事だからね。

 嫌な話だけど、ミレニアお姉様の性格を考えると、お義兄様に家と領地のためだと頼まれたら、おそらくお義兄様以外の人間と肌を重ねる事も受け入れると私は思っている。


 淑女の貞淑さは何処に行ったのか?


 そう思う人もいるかも知れないけれど、そもそも親の決めた縁談に黙って頷いで、例え嫌な相手であろうと嫁いで相手に尽くすのが、貴族家に生まれた者の義務であり責務であり、宿命だと、それが家を救い、より多くの領民達を救う事になると、幼い頃よりそう教えられて来ているのだから、同じく家や領民のためにと命じられれば従わざるを得ないのよ。

 むろん私みたいに、冗談じゃないと思う人間もいるけれど、大半は家や領民のためならば命を賭けるのが、貴族としての義務であり矜持であり誇りだと言ってね。

 そして、誇り高い貴族女性の場合はそれで済まない場合があるのよ。


 理由はどうあれ、夫以外の者に肌を許し、裏切った事には違いありません。


 勿論、性に対して奔放な方もいるけれど、貴族女性全体としては珍しくない考え方であり、ミレニアお姉様は結果を見届けたら、自ら命を絶つ可能性が高いと思っている。

 なにせシンフェリア家の淑女教育では、その辺りを徹底的に刷り込んでいたし、十歳の誕生日の翌々日に自決用の小さな懐剣を渡され、肌身離さずに何時も必ず持っているように教えられるからね。

 だからこそお義兄様には、例え親戚であろうと甘い考えは捨てて貰いたいし、それは現グッドウィル家の当主であるラルガード様も同じで、今回の旅行中にお義兄様が油断を見せるようなら、徹底的に叩いて鍛えて欲しいとお手紙で頼まれている。

 勿論、取引の上での事ではあるけれど、親戚筋だと甘えるにしてもそこは必要最低限の事。

 本来は他家の人間でしかない、私がやるべき事ではないもの。

 ただ単に、私もお姉様とお姉様の子供が大切だから、お願いに応じているだけ。


「それで、私が妬かれた甲斐はありました?」

「そうね、素直に(・・・)落ち込んでいたわ」


 逆恨みをしていない、と言うのであれば何より。

 お義兄様は本気で成長したい、という想いがあるのは確かなようだ。

 普通、一回りも下の小娘、しかも私のように幼い見た目の者に説教を受けたら、自尊心が傷付き反感を覚えるものだもの。

 でもそうではなく素直に(・・・)落ち込んでいると言う事は、逆恨みをする暇があるなら、自らの至らなさに対し真剣に考えるべきだと思っている表れでしょうからね。

 ラフェルさんの夫であるハインリッヒ卿にも、態々演技をしてまで御協力して戴いた甲斐があったのなら何より。

 お礼はハインリッヒ卿のお母様が患っている病気、その病気に対するお薬の材料。

 病名と聞いている病状から完治する事はないだろうけれど、病状を楽にして病気の進行を遅らせられる薬に使う貴重な薬草が、我が家の温室で人工栽培に成功しているため、それを幾らか定期的に融通する事で話が付いている。


『これで母が少しでも苦しまなくなると思うと、ユゥーリィ殿には感謝の思いしかありません』


 正直もう少し早く知っていれば、完治する可能性もあったものの、知らない事にはどうしようもない。

 ラフェルさん夫妻に御協力して戴けないかと、情報を集めてようやく知る事が出来た訳だもの。

 勿論、完治する可能性があった事は欠片も口にしないけどね。

 それこそ知った所で、手遅れになった後ではどうしようもない事だもの。

 精々が、末期になった場合は痛みを除去するため方法があると、お教えしとくくらい。

 それだって副作用で免疫力を低下させる事になるから、それが原因で逆に命を縮める事にも繋がるから、本当に最後の手段なのよ。


「まぁお義兄様の事は、やるべき事をやりましたからどうでも良いです。

 先日も言いましたが、私、お姉様が関わらなければ、お義兄様には欠片も興味はありませんから、後はそちらの家の問題ですので、私が口出す事ではありません。

 なので私が身体を休ませるかどうかは、お姉様がどうしてもと言うなら、大人しくお姉様のいう事を聞きます」

「ええ、どうしてもよ」

「分かりました。

 その代わり、お姉様も御自分を大切にして下さいね。

 お兄様が馬鹿な事を言ったら、何時でも言って下さい。

 馬鹿な事を言うなと、お尻を蹴飛ばしに行きますから」

「ふふふっ、嬉しい言葉だけど、それはこの地の領主としてやっちゃ駄目な事よ。

 分かっているでしょう」

「お姉様のためなら、それくらいの事をねじ伏せる力はあるつもりです」

「そうならないためにも、今回は貴女に無茶をお願いしたの」


 本当、貴族って面倒臭いし、変な所で頑固だから哀れみすら感じる。

 覚悟を決めた女性は強いと言っても、その覚悟の仕方自体が間違っていたら意味がない。

 やはり監視の目はこれからも必要どころか、お義兄様の事を考えたら強化すべきかも。


「では、少しだけお仕事をしたら、今日はのんびりと過ごさせて戴きます」

「そうしてくれた方が、此方としては気が休まるわ

 夫も少し色々考えたいだろうし、子供達も遊び疲れているでしょうから、今日くらいは私達家族もこの屋敷内でゆっくりした方が良いと考えてもいるから、丁度良かったのよ。

 彼方のお客様方は、本さえあれば満足してくれそうな人達だから、問題ないんじゃない?」


 ラフェルさんのところは夫婦揃って本が好きだし、書店を営んでいるライラさんは言うまでもなく本好き。

 コッフェルさんはお酒も好きだけど、一応はああ見えても知識人(インテリ)なので、お酒片手に書物を読む姿は似合っているのよ。

 まぁ……ライラさんの旦那さんは、それほど本が好きという訳ではないけれど、技術書の類いの本には興味を示すので、確かに本さえあれば満足してくれる人達である事は間違っていない。

 教会との取引もあって、私の所には世界中から多種多様の本が集まってくるからね。


「そうですね。

 そう考えれば少しは気が楽になります」

「だから、安心して。

 あっ、でも念の為に言っておくけれど、研究や魔法の練習に打ち込む事はのんびりとは言わないから、今日はそちらは禁止と言う事で……って、なんでそこで目を見開いて驚くのよ貴女は」


 いえ、それこそ私にとって楽しみを問答無用に禁止するのかと、驚くのは当然の事ですよ。


「……貴女、ほ・ん・と・う・に・っ、その辺りは変わっていないわね」


 何故、そこで呆れるのだろう。

 研究は半ば趣味だから、それこそ一番やっていて楽しい内容の研究に手を出そうというのは寧ろ当然の事だと思う。

 魔法の鍛錬に関しては私のライフワークと言うか、生きて行くには必要な事。

 って、そう言えばお姉様達に話してなかった。

 なので、軽〜くだけどお話ししておく。

 私の生まれながらの病気は完治している訳ではなく、魔法で無理矢理押さえ込んでいるだけだと。

 その事に凄く驚いていたお姉様ではあるけれど……。


「でも、貴女の年齢ならもう関係ないのでは?

 あれ、子供にだけに罹る病気……、ぁぁ、見た目が変わらないと思ったけれど、もしかしてそう言う事?」

「違います」


 確かに魔力過多症候群は、子供にだけに罹る病気だと言われている。

 幾ら背が低くて、童顔で、発育不良だからと言って、流石にそれは幾らお姉様であって、私に対して失礼というもの。

 なので魔力神経(かいろ)発達が、魔力の成長に追い付かない事によって起こる症状、魔力過多症候群の仕組みと、身体の成長と共に魔力神経(かいろ)の発達が

魔力の大きさに追い付く事で病状が収まる事を説明しながら、私はそれに当て嵌まらない特異な体質なのだと説明する。

 詳細は伏せるけれど、産まれた時より魔力神経(かいろ)と呼ばれる器官が欠損して生まれた未熟児である私は、発達すべき魔力神経(かいろ)がないため、病気が治る事はないのよ。

 魔力神経(かいろ)の代わりに擬似的に生み出した魔力神経(かいろ)で、症状が起きないように押さえ込んでいるだけでしかない。

 そしてこれがお姉様が一番勘違いした原因なんだけど、一般的に魔力と魔力容量の増大は、成人すると共に止まるものなの。


「そしてその体質が影響しているのか、は分かりませんが、私の魔力と魔力容量は未だ成長しています。

 けっして私が子供の儘という訳ではないですので、そこはそう言うものだと御理解ください」

「……、……」


 目を逸らすお姉様。

 昔から私に言い負かされると、目を逸らす癖は昔と変わっていない。

 真面目な話、魔力制御で魔力過多症候群の症状を抑え付ける方法は、魔力と魔力容量、そして魔力神経(かいろ)の発達に関連するため、魔力神経(かいろ)が無い私は、魔力と魔力容量が増え続ける限り、それに対応出来るよう魔力制御を磨き続けなければならない状態なの。

 以前にも言ったけど、身体の成長が止まれば魔力と魔力容量の成長も止まる傾向にある事から、魔力神経(かいろ)が逆に魔力と魔力容量の成長を阻害しているのではないかという逆説も出て来る。

 ジュリなんて、擬似的な魔力神経(かいろ)を十代前半で使えるようになったためか、魔力と魔力容量の成長は鈍化したものの、成人した今でも僅かに成長を続けている。

 その辺りは、ラード王子の今後を見守らないとなんとも言えないけれど、可能性としてはあり得る事なのよね。


「目を逸らすのは構いませんが、私は確かに歳の離れたお姉様の妹ではありますが、何時までも子供という訳ではないのですよ」

「そ、そうね。

 でもその姿を見ると説得力がね」

「私の年齢は?」

「……た、確かに大人の女性として扱わないといけないわね」


 ふっ、勝った。

 此の侭お姉様を丸め込んで行けば、お姉様公認の研究三昧。








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