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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第八章 〜親としては新米だけど頑張ります編〜
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1021.これで歓迎していると言ってもね……、怒らせたいの間違いではないの?





 翌日、賠償となる品を受け取りに行ったら、宴が用意されていた。

 品を確認している間に、せめてもの心遣いという名目らしい。

 正直に言えば迷惑以外の何ものでもないけれど、女性蔑視が激しい国にしては譲歩した方だとは思うので、相手の面子を潰しすぎるのも良くないと思い、顔には出さずに嫌々ながらも参加させて戴く。

 お酒は例によって魔導具【酒精殺し(完全浄化板)】を、全員に身に付けさせた。

 深酒厳禁、酒精による判断力低下防止ってね。

 私とジュリとアドル達、そしてジル様だけは毒検知兼毒消用魔導具【孔雀双蛇の指輪】も付けている。


『先方が仕掛ける気であるのであれば、被害者は必要であろう』


 というジル様の見解と、流石に【孔雀双蛇の指輪】を人数分用意していなかったためと言う理由から。

 それにしても宴への参加のさせ方が酷い。

 既に始まっているから、私達のための宴なんですから責任取って参加してください、と言わんばかりの誘い方。

 肝心の酒と料理はと言うと……。

 前世の老酒や白酒に似た感じのお酒だけど、雑味が強い所を見ると、昔ながらの単発の兜窯蒸留器、しかも冷却水を碌に用いない型式らしく蒸留が不完全で原酒が混ざり込んでいる感じがする。

 それとも敢えて原酒を混ぜているとか?

 熟成期間があればともかく、この世界の事情でお酒を熟成させる事はあまりないので、私から言わせれば酔うだめだけのお酒だね。

 これが良いという人もいるだろうけれど、そこは個人の好みって事で。

 コッフェルさんあたりなら好きかもしれないけれど、好みが合う合わないかはともかく、手間暇が掛かっている事には違いないので、上等のお酒を用意したという意味では歓待したと言える……のかな?


「けほっけほっ、失礼」


 それにしても、想像はしていたけれど煙草の煙が酷い。

 浴びるように酒と煙草を嗜んで初めて一人前とされる、この国の文化からしたら仕方ないのかもしれないものの……やっぱり無理だわ。

 無粋だと思って我慢していたけれど、身を覆う結界に空気清浄魔法を付与。

 こんな状態で料理を食べても美味しいとはとても思えない。

 なにより話の途中途中で縁談を持ち込むのは止めて欲しい。

 あと女性は男に嫁いで尽くしてこそ幸せとか、私が誰か分かっていて口にしていますかと問い掛けたくなる。

 例え私の中身が正真正銘の女性だとしても、この国に嫁ぐ訳がないでしょうが。

 おまけに人の顔に紫煙を吹き付けながら言うなど、最早、嫌がらせにしか思えない。

 揉め事になるので我慢しますけどね。

 そうそう揉め事と言えば、一応はあったかな。


『サキョウ様を殺した相手に何が和解かっ!』


 屋敷に付くまえだったけれど、物陰から飛び出してきた数十人が襲い掛かってきたのよ。

 剣を抜いていた時点で敵認定しても構わないと判断し、魔法で相手の足下に穴を空けてスポポーーンッとしましたけどね。

 そのまま首だけ出して埋めても良かったけれど、さっきも言ったけれど既に話し合いで決着が付いた以上、必要以上に揉め事にしたい訳でもないので、後は向こうに丸投げ。

 もう既に手打ちは済んでいるのだから、今更、敵にすらならない相手の事で難癖を付けても、時間と気力の無駄使いでしかない。

 どうせ無関係を装われるに決まっているもの。

 捕縛されながらも喚く相手の言葉から察すると、どうやらサキョウとか言うのは先日の魔導船に取り付いて結界を破壊しようとして、逆に爆発反応結界に吹き飛ばされて海に落ちて水死したお偉いさんらしい。

 そう言えば、聞き覚えのある名前だわ


『サキョウ様が海に落ちたぞ!救い出せ!』

『救い出せって、サキョウ様は全身鉄鎧を着ているのに無理だっての!』

『無理でも救うんだっ!

 あの方を見殺しにしたら、俺等全員の首が飛ぶぞっ!』


 つい先日の事だから流石に覚えていたけど、たぶん此れの事。

 どう考えても自業自得だとしか思えない。

 だってねぇ、例えるなら屋敷に無理矢理入り込もうと高い塀を登っていて、その際に落ちて死んだような物なのよ。

 それを仇だと言われても、知らんがなと言いたいわ。

 唯、気になるのはそのサキョウとか言う人物、憶測ではあるけれど、領主の家の関係者ではなく、どうやらつい先日まで逗留されていた、やんごとなき方の関係者らしい。

 例えそうだとしても、私の考えは変わらない。

 あの時の船にはジュリや第八師団のお姉様方の様な、か弱い女性が乗っていたのよ。

 その船に許可もなく、目を血走らせながら無理矢理乗り込もうとした相手が、ちょ〜〜〜っと強めの風に吹かれて海に落ちた所で、責任を取らねばならない謂れなど何一つない。

 まぁそんな事を口走った途端、相手は口を強引に押さえ付けられていたから、これもまた無かった事にしたい事実なのだろうから、深くは突っ込まなかった。

 表沙汰にした所で互いの国に(・・・・・)不幸が起きるだけの事だもの。


 フゥ〜〜〜〜〜〜。

「シンフェリア様も、今は幼いからお分かりになりませんでしょうが、女性として産まれた以上、男性を立ててこそ幸せに恵まれる事は避けられぬ事ですぞ。

 今なら、良き縁を用意する事も出来ます。

 何でしたらお連れの娘さん、少々歳は取っておるようですが、結構な器量良しの様ですから、彼女の相手も御用意させて戴きますが、如何でしょうか?

 勿論、この様な喜ばしい話しですので、断る事などあり得ませんよね?」


 ぁぁ……、もういいや。

 臭い煙草の煙と共に臭い口臭を直接吹き付けられて、更には私の嫁の相手を探してやるなどと寝言をほざかれてまで、我慢していても仕方がない。

 酔った上での言葉にしては、いい加減に度が過ぎている。

 これだから、この国の風習は嫌いなのよ。

 初めて受けるこの国の歓待だからと我慢して出席したけれど、これならば最初から断っておくべきだったわ。

 まったく、酒は飲んでも呑まれるな、っての。


「いい加減にその口を閉じて戴けませんか?」


 強めの【威 圧】の魔法を周囲一帯に展開。

 ジル様達以外は耐威圧訓練は受けているし、ジル様も何だかんだと訓練していると聞いている。

 そのジル様が連れて来た人間なら問題ないだろうと、屋敷の敷地全体に行き渡らせる。


「「「ひっ!」」」

「「「ぁぁぁ……」」」」


 ちょっとジル様達が辛そうにしているけれど、訓練が足りてないのかな?

 でも始めちゃったし、もう少し我慢して貰うとしよう。

 丁度良い酔い覚ましになるだろうし、夕べお酒と美味しい料理を存分に振る舞ったのだから、そのお代と言う事で勘弁して欲しい。


「あらあら、いきなり如何しました?」


 【威 圧】の魔法は伝わっていないだろうから、どこ吹く風で不思議そうな顔をしてみせる。

 度重なる不敬に加え、愛すべき私の嫁の相手を探してやろうと言われてキレてはいるけれど、一応は冷静さを保っていますよ。

 せっかく戦争は回避したのだから、そこは遵守します。


「こんなにもガタガタと震えてお可哀想に。

 確かに今日は寒いですが、そこまで寒くはないとは思うのですが、お身体の調子が悪いのであれば、お休みする事をお勧めします」


 【威 圧】の強度的には、素人が何も知らずに受けたら、極寒の地で肌着姿でいるのに、なんで震えているのか分からない程度。

 恐怖を恐怖として認識出来ないまま、生存本能が下手に動く事を拒絶し、冷や汗を滝のように掻きながら震えるばかりで動けないくらいと言うのを、素人にも分かりやすく言えば、たった一人で戦災級の魔物である角狼(コルファー)の大群に囲まれたと思ってもらえれば良い。


「どうやら皆様、揃ってお身体の具合が宜しくないようですわね。

 流行病かしら?

 私も病弱の身故、失礼ながら退席させて戴きますわ」


 一応礼節は最低限は整えたし、【威 圧】は非殺傷型の魔法な上に証拠が残らない代物なので、後で何か言い掛かりを付けてくる事はないと思う。

 まったく歓待の宴だと口では言っておいて、中身が伴っていないのでは意味が無い。

 女性蔑視が強い国なら、こんな物と言えばこんな物なのだろう。

 一応は最初は気を使ってはいたようだけど、酒が入る度に本性が出てきている。

 お喋りな女は嫌われるぞ、と言う考えがこの国にはあるから、何か決定的な事を誤って口にしても、それを口にする事はないとでも思っているのかしらね?

 他国の貴族の立場で宴席に参加している以上、そんな訳がないというのにさ。


「はぁ……、面倒臭い」







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