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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第八章 〜親としては新米だけど頑張ります編〜
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1020.きっと裏で責任の押し付け合いがあったのだろうなぁ……。





 話し合いは、話し合いにすらなかった。

 相手が訳の分からない事を言っているのではなく、非を認めての謝罪から始まったからだ。

 相手の全面降伏に近い。

 まぁ私が拡声魔法で派手に喧伝しちゃったからね。

 大袈裟に言えば、証拠もなしに他国の高位貴族を盗人呼ばわりしたとか、その原因となった物はこの国の王家から下賜された物で、それを管理不足で紛失したとか。

 更に止めと言うべきなのが、シンフォニア王国とインシュウシンカン国との戦争になりかねない、不意打ちによる攻撃。

 私、その判断を現場の一責任者か、この港町の領主か、それとも国としての判断なのかと問い掛けた訳だから、インシュウシンカン国としては、そこまで事態を大きくしたくはないはず。

 この地の責任者の独断であったなら、尚更に話しを大きくするのは不味い。

 インシュウシンカン国は大国ではあっても、シンフォニア王国とやり合えるほど大きくはないし、文化レベルも劣っている。

 精々、船長であるアインフォース卿達を寝返らせて最新の魔導船を手に入れられば、って程度の考えだったと思うわ。


「も、申し訳ありません。

 家人(けにん)が汚してしまっては一大事だと、奥に移して保管していたのを、手違いで連絡が行き渡っていなかった模様です」


 王家から下賜された物がどんな物だったのか、興味が湧かないでもなかったけれど、下手に突っ込まない。

 そもそも下賜された事実があったかどうかすら怪しいし、その下賜した物を持ってきた上に、身分を隠して宴に出席していたという第七王子殿下も、この地を既に立っていると言われれば、それを真実として(・・・・・)受け入れるしかない。

 此方としても、戦争だなんて大事にしたい訳ではないからね。

 いざとなったら、時空攻撃魔法【巨石魔弓】(バリスタ)の一発や二発を海か無人の山に打ち込んで脅す必要も考えていたけれど、その必要がなくなったと言うのであれば、それに越した事ではない。

 ノー戦争、イエス平和です。

 なので一方的に攻撃された事に関しては、必要以上に言及しない。


「ほう、家人が」

「はい、言付けを怠ったとして、既に処分を致しました」


 ただね、無理矢理責任を取らされた人が哀れに思ってしまう。

 騒ぎが大きくなった以上、誰かしらに責任を取らせないといけないだろうし、その辻褄合わせのためだけに、処分をされてしまう人とその家族が。


「なるほど、ではこれ以上の追求は、処分を決めた貴殿の顔を潰す事になりますね。

 念の為にお尋ねしますが、ワザとではないのでしょう?」

「この命に代えましても」


 白々しいと思いながら。


「その家人(けにん)もそうであったのかも知れませぬ。

 だが宮仕えである以上、何事も細心の注意を払わねばならぬのも事実。

 昨日まで忠義を尽くしていたのであれば、その家族には報いてやるのも主人としての才覚というものとは思いませぬかな?」

「勿論で御座います。

 許されぬ失態ではあれど、それまで尽くしてきた事実がなくなる訳では御座いません。

 死で以て責任を取った以上、出来る事はする所存です」


 因みに相手がこうも低姿勢なのは、やらかした事が失敗しただけでなく、戦争に発展し掛けた事に対してと言う事もあるけれど、それ以上に我が国でいう子爵程度の身分しかないから。

 私も他人の事は言えないけれど、普通は他国の船が頻繁に出入りするような大きな港を抱える街は、伯爵家以上の高位貴族が収めるものだけど、そこは国の仕組みが違うのと、過去に王の側妃を出している為、その実家と言う事で予算が宛がわれて、その資金で他国との貿易が行えるような大きな港に拡張工事を行なって、そのまま港を任されるようになったらしいとの事。

 たぶん何かしら功績を立てたら陞爵出来る状態だとも言えるので、その辺りも動機の一つになっているのだと思う。

 何方にしろ身分も含めて、此方の方が圧倒的に立場が上だからなのよね。

 だから……。


『控え〜っ! 控えおろうっ!

 此方におわすお方をどなたと心得るっ!

 恐れ多くもシンフォニア王国の宰相様であらせられるぞっ!』


 なんて、何処かの御老公様のような真似はしない。

 まず間違いなく、国際問題にまで発展する事になるだろうからね。

 宰相職って国外に行ったら、王の名代に等しい存在よ。

 つまりその王の名代に等しい存在が乗る船に、話し合いの最中に攻撃魔法を打ち込んだなんて事は、例え本当に間違いだったとしても間違いでは済まされない。

 その時点で戦争一歩手前の、宣戦布告をするかしないかの事態になる。

 だからジル様が監視役で来た時には、国はいったい何を考えているのかと思ってしまったのよ。

 実際には私が側に付いていればそんな事は成り得ない、と確信していての事らしいのだけど、そんな物騒な信頼は要らないと言いたいわ。


「発端は勘違いであった事は受け入れますが、それでもあの様な事を決断されたのは貴殿ですよね?」

「勿論、お詫びはさせて戴きます。

 つきましては─────」


 この港から出せる交易品の数々に金銀銅の財貨、今後十年間の港使用料の減額と同時に関税の緩和。

 報償用に使われる見せ金である元宝(げんぽう)でなく、通常通貨で在る事にはホッとする。

 元宝(げんぽう)は報償通貨であるため、価値以上に高く見られると言っても、それはこの国の中での話しでしかなく、外国の人間である私達には使いにくい代物でしかない。


「我が領からの船のみですか?」

「……い、いえ、シンフォニア王国の船全てにおいて、港使用料の減額と関税の緩和をさせて戴きます」


 ジル様に一瞬目をやると、小さく頷くのを確認出来たので、此れで手打ちにする旨を伝える。


「そうですか、貴殿の思いは分かりました。

 それならば、今回は何もなかったと言う事にさせて戴きます。

 船遊びに、少々熱が篭もってしまった程度の事だと」

「有り難うございまする」


 船を狙った程度で、強奪に至っていない未遂でしかないため、この程度で収めておかないと面倒臭い事になる。

 だってねぇ、私の船だけならともかく、シンフォニア王国籍を持つ船全てに対して関税の緩和だなんて、一領主で権限で決めるなど普通は出来ない。

 私みたいに国からある程度の裁量権がある代わりに、後で報告する義務を背負っているのであれば出来なくはないけれど、それだって大国を相手にその国籍の船全てにおいて全品目の関税(・・・・・・)を弛めるなど勝手に約束したら、まず間違いなく国からお叱りを受ける事になる。

 関税の緩和の内容は僅かとは言え、一地方の権力者の裁量権を超えた内容だもの。

 少なくとも目の前の人物に、それだけの度胸と器量があるとは思えない。

 間違いなく既にこの地を立ったという、この国の王族の意思が働いていると見て良いだろう。

 と言うか、この場にいる文官に身を隠して眺めている可能性だってあり得る話だ。

 なら、此方としては大事に持って行く気はない、という意思表示をしてみせる事。

 勿論、今後此方が舐められる事がないように、しっかりと釘を刺してね。


『船の船脚勝負を見て分かるように、貴国との力の差は歴然。

 多少熱くなった所で、相手にすらならなかった事を忘れるな』


 と婉曲に伝えたのはそのため。

 お詫びの品を用意し終えるのに、もう一日滞在する事になった際に、宴を開くと言われたものの、生まれ付き病弱な身体である事を理由にお断りした。

 部屋の用意も不要だとね。


「そ、それでは此方の誠意が……」

「これ以上間違いがあっては、此方としましては黙っている訳にはいかなくなる恐れがありますので、どうか御理解下さいませ」


 一歩間違えたら戦争になるかもしれないのよ。

 しかも今回の出来事に国が関わっている事を伏せた儘、こんな信頼が出来ない状態で、問題を起こし得る事態は避けたいというのは当然の事。

 あと言いたくはないけれど、我が家の人間全員、此処に泊まりたくないのが本音。

 アインフォース卿達の話だと、御不浄部屋は昔ながらの臭くて汚い形式だし、湯一つ沸かすのだって(かまど)だから、人をやって沸かしたのを持ってきて貰う形式。

 そんな冷めたお湯でお茶を淹れても美味しくはない。

 火鉢に炭を入れた携帯式の物もあるけれど、火事騒ぎの原因になる物を現状で(・・・)使うのものね。

 お風呂だってねぇ、此方は蒸し風呂以外に湯船に浸かる形式の物もあるみたいだけど、やはりオルディーネ領のお風呂に比べたら貧相で、まだ船にあるお風呂の方が狭くても快適だそうだ。

 なにせ湯船という名のタライだもの。

 何方にしろ何が起こるか分からない状態なのに、そんな隙を見せたらどうなる事やら。

 船酔いだって、船に弱い人向けにハンモックも用意してあるから、停船中での船酔いの心配はほぼない。

 何より魔導船だけあって、船内は冷暖房完備。

 昼夜は逆転していても、季節までは逆転していない為、わざわざ寒い思いをしたくないと思うのがごく普通の事。

 そして止めが料理が物珍しくはあっても美味しくないそうだ。

 貴族としては宴に参加すべきなのでしょうけれど、此れで誘われてもね。

 ハッキリ言って、インシュウシンカン国と必要以上に仲が良くなった所で、現段階ではあまり得る物ってないのよ。

 そこそこに貿易が出来れば十分。

 でも一応はジル様にもお伺いを掛けた所……。


「小物に付き合っても時間の無駄だ」


 だそうだ。

 ジル様、宰相様ですからね。

 国賓として免れるならともかく、一地方の役人に機嫌取りをされても、鬱陶しいだけに過ぎなく、それなら船で私の接待を受けていた方が、何倍もマシだそうだ。

 いえ、お望みなら酒と料理ぐらいは幾らでも出しますけど。


「ちなみに例の酒は?」

「在る訳が無いじゃないですか。

 五年物で我慢してください」


 ジル様が催促したのは五十年物の貴腐ワイン。

 氷皇龍であるゼノお爺様にお願いして、実験的に作ったものでしかないので、それほど数は無い。

 我が領の事で付き合わせてしまった事には感謝してはいるけれど、ジル様、たいした仕事をしていないのに甘えないで貰いたい。

 だから、そこでワザとらしく肩を落として落ち込んだフリをしても無駄です。

 最近お孫さんであるセリア様が冷たいからって、代わりにされても困る。

 そもそもジル様は、いくら可愛いと言ってもセリア様を揶揄いすぎです。

 セリア様からの御手紙で、どれだけ愚痴が綴られていると思っているんですか。

 まぁ……、お爺様が大好きなだと思わせる事も書かれているので、本当に嫌っている訳ではないでしょうけど、いい加減にしないと本当に嫌われかねない。

 女性って基本的に記憶が上書き保存だから、良かった想い出も全部悪い想い出に上書きされてしまうので、一度拗らせると長引く事になりかねないので、この際その辺りをジル様に言葉を尽くして説くべきかな?







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