ミッション9 学舎への潜入任務・・・!?
今日も今日とて悪の組織としての活動をするディーアルナ達。
本日の彼女達が悪の限り?を尽くす場所は、数多くの子供達が通い、多くの事を勉強する建物。
子供達の学舎である、とある小学校であった。
普段は小さな子供達が元気に勉強しているであろう学校も、日曜日の休みともなれば騒いでいる子供など誰もおらず静かなものであった。
「イー、イイイーイイー!」(さあっ、今日も悪の組織としての活動を頑張ろう!)
「「イー!」」(おーっ!)
「おー・・・・・・」
元気よく腕を振り上げて気合いを入れる戦闘員達。
だが、彼らと共にいるディーアルナは、気が進まないという雰囲気が丸出しで、やる気が全然感じられなかった。
「イー。イイー、イッ?」(ディーアルナ様。やる気が微塵も感じないけど、どうしたんだ?)
「そりゃ、やる気なんて湧くわけがないよ。この小学校ってあれだろ?ヒーロー業と校長職を兼任している鉄拳校長が経営している学校だろう?」
ディーアルナはそう言いながら、校門に取り付けられている『私立鉄拳小学校』という看板を見る。
『鉄拳校長』とは、三十年も昔からヒーロー活動を続けてきたヒーローの中でも最古参に位置する人物である。
全身を古めかしいデザインの機械的アーマーで覆われたヒーローで、性別は自己申告で男性との事。
元々はある悪の組織の手によって産み出された改造人間であり、様々な悪事を行ってきたそうだが、純真な心を持った子供達と出会い、その子供達の心に触れていったことで、人間としての人格を取り戻し、子供達を守る為の活躍をし始めたという経緯があるヒーローである。
その鋼鉄の拳から繰り出される一撃だが、生半可な装甲など簡単に貫き、粉砕するほどの威力がある。
そして鉄拳校長を産み出した悪の組織だが、鉄拳校長がヒーローとして活躍を始めた一年後に、彼の手によって壊滅させられたのは有名な話である。
悪の組織を壊滅させた後も、彼は子供達を守る為にヒーロー活動を続けており、今は彼が私財を投じて作った恵まれない子供達のための私立学校を作り、運営している。
また、彼は子供達を害そうとする輩には一切容赦せず、そんな輩には基本的に半殺しがデフォルト。
そのせいで、十年前にテロリストが子供達を人質に取った際に、当時三十人いたテロリスト達全員を再起不能にするか殺害するという暴挙を行ったことすらある。
教育委員会やその他の会議等に出掛けていないとはいえ、そんな人物が勤める小学校に入ろうとするなんて、正直に言って自殺行為そのものであり、敵対行動と取られてもおかしくなく、やる気が出ないのも当然とも言える。
「鉄拳校長の怖さを知っている分、ちょっかいを出した時の報復がどんなものになるのか・・・・・・」
「イーイー、イー。イイイーイー。」(そんなに悲観的にならなくていいと思うぞ、ディーアルナ様。今回はちょっかいを出すにしても嫌がらせみたいなものだし)
そうディーアルナに声を掛けて慰めようとする戦闘員一号。
彼は今回の作戦を行ったとしても、報復の可能性は低いと考えているようであった。
今回のアンビリバブルの活動目的は、私立鉄拳小学校の内部調査であった。
それを行うことになった経緯は、ブレーバーの元に彼が親しくしている情報屋から一つの情報がもたらされたことが切っ掛けであった。
なんでもその情報屋が言うには、とある筋から件の小学校に構造的欠陥が存在しているという情報を入手したのだそうだ。
ただし、飽くまでも噂話の領域に近いらしく、確認作業は行っていないとのこと。
その話が持たらされた状況も、酒の席でのことらしく、酔っ払った際に零れたように情報屋の口から出てきたのだと、作戦内容を伝える時にブレーバーが話していた。
あほだが頭の良いブレーバーがそんな酔っ払いの話を信じるなんてことは普通はしない筈なのだが、今回は事情が違ったようで、むしろ積極的に「事実確認をしよう!」と言い出し始めた。
妙に意気込んでいるブレーバー。
後で戦闘員達から聞いたが、ブレーバーは昔に鉄拳校長とトラブルを起こした事があるらしく、それ以来鉄拳校長のことを目の敵にしているのだそうだ。
この作戦を俺達に伝えたときなんて、「あの堅物頭の頑固爺に、ようやく痛い目を見せてやれるぜぇ!アイツの悔しがる顔が目に浮かぶようだなぁ!」と、悪役らしい高笑いと共に、千載一遇のチャンスとばかりウキウキワクワクとしていた程であった。
「イー、イイーッ、イーイー、イイイーッ。」(今回の作戦だって、構造欠陥の事実を確認して、欠陥のある場所があったら、そこがどういう状態となっているのかの詳細を書いた紙を貼っていくだけ。)
「イーイー、イイーッ。」(そうそう、言ってしまえば相手の経営上の不手際を教えてやるお仕事というわけ。)
「イイー、イーイイー、イー。」(親切とは言えないけど、さすがに欠陥があるよと教えるだけで潰そうとするとは、彼の性格から判断してあり得ないと思うよ。)
戦闘員達の話を聞いていき、彼らの言う通りに大丈夫かも知れないと思い始めるディーアルナ。
それでも不安な気持ちは隠せていなかったが、仕方ないとため息を吐きながら、戦闘員達と共に小学校の中へと侵入するのであった。
小学校に侵入したディーアルナ達は二手に別れて調査を開始した。
まず戦闘員一号と二号だが、彼等は校舎の中を調べて回っていた。
一号と二号はそれぞれ手に持っているアサルトライフルに似た形状の、しかし銃本体の後ろがずんぐりむっくりとしている形のそれを、銃口の先を壁や床に向けながらトリガーを引いていく。
トリガーを引くと、銃口の先から扇状に伸びる緑色の光が照射されていく。
光が壁に当たって少しすると、銃身の上部に付いていた青い水晶ーーーーーーホログラム映写機からホログラム映像が投影され、壁の内部構造を映し出していた。
「イー、イー。イー、イイー、イーッ。」(映ってる、映ってる。いやぁ、綺麗に映るもんだな、これ。)
「イー、イイイー。イーイーッ。」(ブレーバー様が用意してくれた、この3D構造解析機は便利だな。一々壁を壊さなくても中の様子が分かるんだから。)
「イー。・・・・・・イイー、イー。イーイー、イイイー。」(だな。・・・・・・それにしても、実際に調べてみて驚いたぞ。情報屋の言っていた通りにこの校舎、所々に妙な欠陥がありやがる。)
「イー。イーイー、イイー。イー、イイッ、イー?」(確かにそうだな。内部構造を見る限りでは壁の中の建材が腐っていたり、酸化してボロボロになっている。どうも、経年劣化でそうなったように見えるが、さすがにこれはボロボロになりすぎているように感じるぞ?)
ホログラムによって二人の目の前に映し出された壁の内部映像。
その様そうはとても酷く見るに耐えないものであった。
まず壁の中に埋まっている建物を作る上での柱となる木材だが、被害の大小はあれど全体的に腐敗しており、一部は腐り折れているモノもあった。
壁を形作っているコンクリートの壁も、外から見たら分からなかったが、内部は大小無数の罅割れが存在し、何か強い衝撃を与えれば簡単に崩れ落ちてしまう程、その耐久性は脆くなっているように二人には見えた。
「イー。イー、イー。イイッ。イッ、イー。」(こりゃあれだ。防腐剤を使ってないぞ、これ。コンクリの方もおそらく材料をケチッたんだろう。じゃなきゃ、ここまで酷く劣化はしない。)
「イーイイーッ、イー。」(外から見る分には異常があるようには見えないから、分かり辛いな。)
「イー、イイーッ?・・・イー、イー。」(多分、外側だけはしっかりと作ったんじゃないか?・・・いや、それもそれで性質が悪いが。)
「イー、イー?イイー。」(ここ、本当に鉄拳校長が建てた学校なのか?とても信じられないんだが。)
「イイー、イッイイッ、イイイッイイー。」(調べた範囲内じゃ、少なくない額を建設費用として建設業者に払っていたし、鉄拳校長が支払いを誤魔化して自らの懐に入れた形跡も工作も確認されなかったと三号が言っていた。)
「・・・・・・イッ、イイー。」(・・・・・・ってことは、問題があったのは建設業者の方か。)
「イイッ、イー?」(守るべき市民に騙されるヒーローとか、どう思う?)
「イッ、イー!」(そりゃ勿論、滑稽だと笑ってしまうね!)
顔を向き合わせて「イッイッイッイッ!」と笑う一号と二号。
「イイッ、イッイッイッ!」(まさかケチられているのって、ここだけじゃなかったりして!)
「イッ、イッイッイッ!イー、イイー。」(おいおい、流石にそこまでじゃないだろう!もしそうだったら、欠陥なんてレベルじゃなくなるぞ。)
「イー!イッイー!」(だよな!何時倒壊してもおかしくないもんな!)
そう笑っていた二人であったが、その笑いがふいに止まった。
これまで自分達が話してきた内容を思い返して嫌な予感が沸き上がって来たからだ。
「・・・・・・イッ、イー。イイー。」(・・・・・・まさか、まさかな。そんなわけないもんな。)
「イ、イー、イイッ。イイー、イイイー。」(あ、ああ、そうだぜ。マジでそんなことをしているとしたら、担当した建設会社の信用が落ちるどころじゃ済まなくなる。)
話していくうちに、もしかしたらと考えて冷や汗を流す一号と二号。
「イー、イーイイー。」(俺、ちょっと気になるから一度一回りして調べてくる。)
「イイー。イイッ、イー。イイイッ。イッイー。」(俺も行くぞ。もし予想が当たっていたら、ヤバ過ぎるからな。こっちは上の階から行く。お前は下から頼む。)
「イー!イッイー。」(了解した!そっちは任せた。)
一号と二号はその場で二手に別れ、校舎内の調査を続行するのであった。
戦闘員一号と二号が校舎の中を調べている時、戦闘員三号とディーアルナは校舎の外を調べて回っていた。
体育館や野外プール、物置の倉庫にいたるまで調査を行っていた。
「イー・・・・・・?」(う~ん・・・・・・?)
そして一通り見て回った後、戦闘員三号が唸り声を上げながら首を傾げていた。
「どうしたんだ、三号。何か気になる事でもあったのか?」
「イー。イイイー、イイー。」(うん。ここの設備というか使用されている建材について、ちょっとね。)
「建材が?構造じゃなくて?」
「イーイーイイー。イッ、イイイー、イー・・・・・・」(欠陥構造だと言うのは3D構造解析機ですぐに分かった。でも、どうしてあんなものを建築材料として使っているのか、不思議に思って・・・・・・)
俺の問いに対し、曖昧な返事を返す三号。
どうも彼にとってこの学校は言葉にできない不可解の固まりだと感じているようであった。
「・・・・・・ん?あっ、一号と二号だ。アイツ等も仕事が終わったのかな?」
遠くで校舎から出てきた戦闘員一号と二号の姿を目にして、「おーい!」と大きく手を振る。
俺の呼び掛けに気付いた二人はこちらに近寄って来たのだが、なんだか雰囲気がおかしかった。
なにか恐ろしいモノでも見たかのように体をブルブルと震わせながら、重苦しい雰囲気を背負っていた。
「ど、どうしたんだ、二人とも?」
「・・・・・・イッ、イー?」(・・・・・・あっ、ディーアルナ様。)
「・・・・・・イー。」(・・・・・・お疲れ様です。)
「あ、うん。お仕事お疲れ様。・・・じゃなくて、本当にどうしたんだ?」
「イー、イー、イイー、イイイーッ・・・・・・」(いえね、なんだか、見てはいけないもの見てしまったというか、お化けなんかよりも恐ろしい光景を見てしまったというか・・・・・・)
「イイー、イーイイーッ。」(口で説明するよりも、見てもらった方が早いと思う。)
「「・・・・・・?」」
意味深に答える二人に首を傾げる俺と三号。
とりあえず俺たちは言われるままに、彼ら案内で校舎の中へと入って行った。
「・・・・・・な、何これ!?」
そして校舎の中に入った際に目に入った光景に、俺は思わず瞠目した。
校舎内の壁や床などのありとあらゆる所に、俺達が用意した忠告文を書くための赤い張り紙が無数に貼り付けられていた。
「ちょっと、二人とも、これってどういうこと!?」
「イッ、イー。」(どうもこうも、見たまんまです。)
「イイー。・・・イーイイー、イーイーイー、イー・・・・・・」(校舎の中を上から下まで調べた結果ですね。・・・ここまで欠陥箇所があるなんて想像すらしていなかったというか、調べている筈の俺達の方がその事実を知っていく度に、言葉に出来ない恐怖に襲われて・・・・・・)
「イ、イイイーッ、イイー、イイイッ・・・・・・!!」(こ、こんなに欠陥だらけだってのに崩壊していないという事実に、下手な怪談話を聞くよりも怖くなって来て、最後辺りは無心になって張り続けてました・・・・・・!!)
報告をしながら互いに身を寄せ合ってガクガクブルブルとしている一号と二号。
マスクで隠れていて見えないが、中の顔色はおそらく真っ青になっているのだろうという事が分かるくらいの怯えっぷりであった。
「・・・・・・しかし、見た目はこんなに綺麗で傷一つすらないのにな。」
そういいながら壁に手を付きながら、マジマジと観察する。
罅割れどころか傷一つないその壁は、知らなければ本当に欠陥箇所があるなんて思いもしない程頑丈そうな印象があった。
「・・・・・・イッ、イイッ!」(・・・・・・あ、もしかして!)
その時、一号と二号の話を聞いていた三号が何かに思い至った様子を見せた。
「イー、イイー?イイイーイー、イーイーイー?」(二人とも、ちょっと聞いてもいい?校舎の壁って中は結構空洞とか罅割れとかあったりしたけど、外側はそんな様子とか形跡とか見られなかったんじゃない?)
「・・・イ?イイ、イー、イー。」(・・・お?おお、その通りだぜ、三号。)
「イイ、イイイーイイーイーッ。」(ああ、外側の壁は中の部分に比べて異様な程しっかりと作られていたぞ。)
「イー・・・・・・」(やっぱり・・・・・・)
間違いないと何度も頷く三号。
俺達は何が間違いないのかと三号に問いかける。
「イイーイーッ。・・・・・・イーイイーッ。」(ディーアルナ様と一緒に校舎の外にあるプールとか体育館とか調べていてずっと疑問に思っていたんだ。・・・・・・いくらなんでも手抜き工事過ぎるって。)
三号は持っていた3D構造解析機を取り出し、記録してきた解析データをホログラムで投影してみせる。
「イイー、イーイー、イーイイーッ。イッ、イイイッ。」(中身はスカスカのボロボロなのに、どうしてこれで崩れないのか分からなかったけど、二人が調べてくれたことでようやく分かったよ。その答えは、この外側の壁のおかげだったんだ。)
「外側の壁?」
「イッ。イーイーイーイイイーッ。」(うん。多分この壁に使われている素材に特殊強化セラミック素材の『モースアルファ―01』が使用されているんだと思う。)
『モースアルファ―01』とは研究者のヒーローである『マドティスター』が発見し開発した合成素材の事。
分子レベルで物質構造の配置を任意の形に整えた代物で、見た目は黒い砂状の物質。
これが混ぜられた物質は頑強性及び柔軟性が飛躍的に向上し、重量百tの衝撃を置けても折れず曲がらず砕けないのだと、三号は説明する。
「イイー、イイイーッ。」(多分これのおかげで、こんな欠陥建築が崩れることなく形が維持されているんだと思うよ。)
「・・・・・・・凄いな、そのモースアルファ―01ってのは。」
「イイー。」(発表された当時は世紀の大発明とまで呼ばれたものだからね。)
「・・・イッ、イイイッ、イイー、イーイーッ・・・・・・」(・・・確か、作るための製造機械も完成して量産体制も整えられているし、使用する建材とかに一割くらい混ぜれば十分だから、さほどコストはかからないって話を聞いた事があるけど・・・・・・)
「イーッ、イイーッ。」(コスト削減にもなるからって、建築業者には結構な人気となったとニュースで見たことあるぞ。)
あれ、もしかして心配しなくても大丈夫?と首を傾げる一号と二号。
「・・・・・・イッ、イイッ、イイイーイー。」(・・・・・・ただ、外側がしっかりしていても、内部がきちんと出来ていなきゃ危険なことには変わりないんだ。)
「「イッ・・・・・・?」」(え・・・・・・?)
「イイイーイーッ、イイッイー、イーイイイー。」(モースアルファが使われている壁が大抵の衝撃とかを防いでいるおかげでこの建物は形を維持できているけど、壁の内側にまで響くほどのよっぽど強い衝撃を受けたら、壁の内部が壊れて建物を支えきれずに崩れることは間違いないよ。)
「・・・・・・マジか。」
「・・・・・・イー。」(・・・・・・うわぁ。)
三号の説明を聞いた俺達は全力でドン引きした。
ここで下手に戦闘などで大暴れでもしようものなら、この校舎が耐え切れずに完全崩落するのは間違いないだろう。
その時の事を想像しただけで思わず体が恐怖に震えてしまった。