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ミッション12 動物園への潜入?任務・・・!


悪の組織アンビリバブルの秘密基地の中にある作戦会議室。

今日もここで、悪の組織としての活動に関してボスであるブレーバーから話が出されたのだが、今回の作戦も毎度の如くというか何時もの事と言うか、それって本当に悪の組織の活動なのか?と思えるような作戦であった。


「皆、よく集まってくれた。・・・それでは、今回の作戦について説明しよう。」


ブレーバーが横に垂れ下がっていた一本の紐を引くと、天井からスクリーンが降りてきた。

スクリーンの下降が止まると、ある映像が映し出された。

それはあらゆる動物達を飼育し、管理し、一般に公開している場所。

それは・・・・・・


「今回の作戦名は、"動物達を元気にしよう大作戦"だ!」


『色んな動物達が君達を待ってるよ!おいでよ、坂之上動物園!』


「まさかの動物園・・・・・・!?」


・・・・・・様々な動物達を見ることが出来る動物園であった。


「イイー・・・・・・イーイイー。」(動物園かぁ・・・・・・懐かしいなぁ。)


「イ~、イイイーイー。」(へぇ~、以外と規模も飼育している動物の数も多いね。)


「イィィィイイイイーっ!!?」(ふぅぉぉおおおおーっ!!?)


戦闘員達は「今日はこれかぁ・・・」と、もう慣れたと言うかのように達観していた。

・・・・・・妙に興奮している一名を除いてであったが。


「皆、疑問に思っているだろう。どうして動物園なのだろうと・・・!」


本当だよ!とツッコミたかったが抑える。

ツッコミを入れるのは話を聞いてからでも遅くはないだろう。


「その理由を話す前に聞きたいのだが、君達は先日報道された悪の組織とヒーローとの戦闘についてのニュースを知っているだろうか?」


「イイッ、イーイイイーイイー?」(それって確か、『獣解放戦線』の怪人と仮面ヒーロー『サンフラッシュ』の戦闘の事ですか?)



『獣解放戦線』とは、人に飼われていた動物達が何らかの要因によって怪人化し、もう二度と人に飼われはしないと、また今も飼われている動物達を解放して自由を謳歌させようとしている悪の組織である。

活動開始時期は、自分達が所属しているアンビリバブルが活動し始めた頃よりも一月程早く、前々回の作戦の際に遭遇した野獣戦隊アニマルレンジャーが主に戦っていた組織でもある。

仮面ヒーロー『サンフラッシュ』とは、一年程前に活躍し始めたヒーローである。

専門で対応する組織や怪人は存在しないが、その能力の高さは新人ヒーローの中でも屈指のもので、よく他のヒーローの助っ人や代打で戦う姿が多く見られている。

おそらく今回は、アニマルレンジャーの代打として戦ったのだろう。


「ニュースでも言っていたけど、その戦いってサンフラッシュが勝ったんだよな?」


「うむ、知っているのなら話は早い。・・・これは非公開情報なのだが、獣解放戦線の怪人が倒された際に粉末状の物体が飛び散ったらしく、しかもその物体は丁度近くにあったこの坂之上動物園に来たそうなのだ。そして、それ以降動物園にいる動物達の元気がなくなり、食事もあまり取ろうとしなくなったのだそうだ。」


一旦話を区切り、咳払いをする。

後ろにあるスクリーンには、話に出た怪人とヒーローの戦闘の様子が映っている。


「話を聞いて分かるように、おそらくこの飛び散った粉末が動物達の元気を奪ったのだと考えられる。・・・・・・ここまでで、何か質問のあるものはいるか?」


ブレーバーの問いかけに、軽く手を上げて質問する。


「話の始めに非公開情報だと言っていたけれど、ブレーバーはどうやってその情報を手に入れたんだ?」


「もちろん、例の情報屋だ。」


「例の情報屋ってことは、・・・・・・あの人か。」


脳裏に()()()()()()()()()()()()()()()姿()を思い浮かべる。

話しを聞くに、ブレーバーが懇意にしている情報屋からのタレコミらしい。

ブレーバーが聞いた情報屋の話しでは、戦闘後にこの件についてヒーロー連合協会は箝口令を敷いたそうなのだが、情報屋はあの手この手で情報を集めたのだそうだ。

巨大な組織であり、世界中に影響を及ぼすことが出来るヒーロー連合協会の情報封鎖を掻い潜る事が出来るなんて、本当に何者なのだろうか、あの情報屋は。

ちなみに、タレコミ情報の対価もきっちり請求されたそうで、結構なお値段になったそうだ。

後日その金額を見て、目玉が飛び出そうになるくらい驚いたが。


「他に質問がある者はいるか?・・・・・・いないようだな。それでは、これから君達が行う作戦についての説明をしよう。」


ブレーバーはそう言いながら、懐から十数個の饅頭のようなものが入った一抱え程のプラスチックビンを取り出した。

一体その体の何処にそんな大きさの物を、しかも複数仕舞っていたのか、とても不思議である。

四◯元ポ◯ット的なモノでもあるのだろうか?

内心で首を傾げる光であったが、そんな彼女を余所に話は続く。


「このビンの中に入っている物は、草食及び肉食動物どちらも食べることが出来る材料で作り、動物達を元気にする薬が混ぜ混んだ特性饅頭だ。君達はこれを動物園に持っていき、動物達に食べさせて欲しい。」


「元気にする薬って、危ないものとかじゃないよな・・・?」


「大丈夫だ。薬と言っても栄養剤のような物で、動物達の体に悪い影響を与える物ではない。副作用があるとしても、性欲が増幅されて発情期の状態になってしまう程度だ。」


「それって十分悪影響なんじゃ・・・?」


「イー、イイー。イッ、イイイッ。」(ディーアルナ様、多少の悪影響には目を瞑りましょう。正直話を聞く限りでは、そんなに悪いものではないようですし。)


「イイー。イッ、イイーッ。」(それに僕達って本来は悪事を働く側なんですよ。どちらかと言うと、悪影響を与える方が悪の組織としては正しい姿だと思うんだけど。)


「うぐっ!?そ、それは・・・・・・」


二号と三号に正論を言われ、思わず口籠る。


「イッ、イー、イイイッ、イッイー。」(まあ、今までの活動がそれっぽくなかったから、そんな風に考えてしまうのは仕方ないと思いますけど、今後は意識して悪の組織の構成員としての自覚を持ちましょう。)


「・・・・・・イッ、イイー。」(・・・・・・まあ、と言っても、ウチらのボスがあの調子だから説得力ないけど)


そう言いながら肩を叩いて慰めてくる二号と三号であった。


「イー!イイッ、イー!イイー?」(はい!質問があります、ボス!動物達にはどうやって餌を与えれば良いのでしょうか?)


俺達がそうして話している最中に、一号が特製饅頭の餌やり方法をブレーバーに聞いていた。


「特性饅頭の与え方については、現地についてから君達で考えてほしい。・・・・・・動物園の案内見取り図は入手できても、細かい部分まではここにいては分からないからな。」


「イイー?」(情報屋からは聞かなかったんですか?)


「・・・聞けなかったのだ。情報屋への支払いは、組織運営費とは別の我のお小遣いから出している訳だが、そこまで聞くとなると予算オーバーでな。」


悪の組織のボスの持つ金がお小遣い程度とはこれいかに。

収入が数千億あるのに、それってどうなんだろう?


「・・・あ、今お金持ちのくせにと思っただろう。はっきり言っておくが、収入の大半は秘密基地の設備維持とか作戦費用として当てているから、我のお小遣いなんてそこまで多くないのだぞ!しかもあの情報屋は懇意にしているおかげで、結構割引してくれているのだ!・・・・・・具体的には酒代を奢る形での支払いだけど。あいつ大酒のみで結構な量を飲むから、時々元の情報料の金額よりも超える時あるけどさぁ。」


始めはプンプンと怒り出すブレーバーであったが、話しの終り頃にはどこか落ち込んだ雰囲気を見せた。


「ええい!暗い話はここまでだ!それでは諸君、作戦を開始するぞ!既に転送装置には座標を設定してあるので、すぐに現地に到着出来るようになっている。君達からの作戦成功の報告を期待して待っているぞ!」


ブレーバーは頭を振ることで暗い気持ちを振り払い、バサリとマントを翻しながら、俺達にそう言った。






午前十時頃。

一通りの準備を終えたディーアルナ達は、秘密基地の転送装置を使って件の坂之上動物園へとやって来ていた。

設定された転送先は動物園の園内にある物置小屋の影であり、ディーアルナ達はそこから一般通路へと出て来る。


「さて、やって来たは良いが、これはどうなっているんだ?客の姿が全然見えないんだけど?」


辺りを見回すディーアルナ。

周囲にある檻やガラスで隔てられた飼育小屋には数多くの様々な動物達がいるのだが、その全てが元気がなく、気怠そうな様子を見せていた。

また、それだけでなく動物達を見に来ている筈の一般客の姿も見られず、動物園内は閑散としていた。


「イイッ、イー。イーイイー?」(ディーアルナ様、これを見てください。今この動物園は臨時休業になっているみたいですよ?)


「・・・・・・なるほど、客の姿が見えないのはそのせいか。」


二号が動物園の入口に立て掛けられていた臨時休業の看板を見つけ、ディーアルナ達もそれを見て誰もいなかった理由が納得できた。


「イイーッ、イイーイーイー?」(臨時休業になった原因って、やっぱりこないだの戦闘のせいですかね?)


「・・・だろうな。その時にばら撒かれた粉末のせいで動物達の元気がなくなったのに、それが人間にまで影響を与えないとは限らないだろうからな。」


「イッ、イイー。イーイイー。」(でも、僕たちには好都合かもしれないね。作戦中に一般人に通報されるリスクが減るから。)


「イー。イイー?・・・・・・イッ?イイー?」(確かに。一号もそう思うだろう?・・・・・・あれ?一号の奴、どこに行った?)


二号が自身の隣にいた一号に話し掛けようとしたが、そこに一号の姿がなかった。


「・・・え?あれ!?一号が消えた・・・?」


「イー、イイイー。・・・・・・イッ、イイーイー・・・」(まったく、あいつはどこに行ったんだか。・・・・・・まあ、あいつの事だから多分・・・)


「・・・・・・イッ!イイッ!イー!」(・・・・・・あっ!見つけた!あそこにいたよ!)


ディーアルナと三号も一号の姿が消えたことに気付き、辺りを見回して彼の姿を探していると、三号が見つけたと声を上げてある方向へ指を差した。


「イー、イー!」(おーい、みんなー!)


指差した先には元気に手を振る一号の姿があったのだが、彼がいたのは檻の中であり、しかも肉食動物のライオンが飼育されている小屋であった。


「えぇぇえええっ!?檻の中ぁ!?ちょっ、いったいどうやって入ったんだよ、一号ぉ!?」


「イッ、イイッ・・・!?」(い、何時の間に・・・!?)


「イー・・・・・・!」(やっぱりか・・・・・・!)


まさかの現在地に、思わず悲鳴に近い驚きの声を出してしまった。


「い、一体どうやって小屋の中に入ったんだ・・・?」


「イー。イーイイーイーイー。」(ディーアルナ様。多分あいつは飼育員用の出入口の扉を開けて入ったんだと思いますよ。)


「飼育員用の出入口って、そこは普通動物が出てしまわないように鍵が掛かっているもんじゃ・・・?」


「イー、イイイー、イー。」(ええ、ですからその鍵を開けて中に入ったんだと思いますよ、一号は。)


「・・・え゛!?」


二号からの話を聞く限りでは、アンビリバブルに入る前の一号は凄腕の空き巣犯という経歴の持ち主で、これまで数々の金目のものを盗んできたのだそうだ。

しかも空き巣に入ったという痕跡を一切残さず、金目のものを最小限にしていたらしく、それによって盗まれた被害者も盗まれたのではなく失くしてしまったと勘違いし、今までその犯行がバレた事はなかったという。


「・・・なんでそんな奴が、ウチの組織の戦闘員なんかに・・・・・・?」


「イイー、イーイー。イイイー。」(それについてなんだけど、一号って無類の動物好きなんだよね。戦闘員になった経緯もそれが関係しているんだ。)


「イッ、イイイー。イーイー・・・・・・」(なんでも、空き巣で得た金を使って野生動物が多くいるアフリカのサバンナに飛んだそうです。そこにいた動物達と戯れようと突撃して半死半生の状態になったらしく・・・・・・)


「イイー、イイイー、イッイー。」(そこへたまたまやって来たボスが見つけて助け、その際に普通の医療では助からないと判断して、戦闘員としてサイボーグ化したらしいんだ。)


「ええぇ・・・・・・!?」


戦闘員になった経緯がそんな理由って・・・・・・!?


「・・・・・・イッ、イイー、イッ、イーイーイー。」(・・・・・・まあ、アイツ的には戦闘員になったことを後悔していなくて、それどころか、動物の爪とか牙とかの攻撃をされても無視して触り続けられるようになったことに感謝すらしていたらしい。)


「ええぇ・・・・・・」


とんでもない動物愛と言うか執念と言うか、人間の欲望の凄さを垣間見たような感覚を受けたディーアルナ。

話の中心人物たる当の一号は、檻の中で地面に伏せている四頭のライオンの内の一頭に特製饅頭を食べさせようと奮闘していた。

目の前に置いてみたり、転がしてみたり、鼻の上に置いてみるなど四苦八苦している様子が見られたが、ライオンは一向に食べる気配を見せず。


「・・・・・・グルァッ!」


それどころか、しつこく付きまとっている一号が癪に障ったのか、「テメェ、しつこいんだよ、この野郎!」と言っているように聞こえそうな雄たけびを上げながら一号に襲い掛かった。


「ギャー!?一号が食われたー!?」


「イイッ、イー、イイー・イーイーイイー。」(いやいや、大丈夫ですよ、ディーアルナ様。俺達の着ている戦闘服はアレくらいじゃ傷一つ付きませんから。)


「イー。イイー。」(こらこら、食べるのは俺じゃなくてこっちだぞぉ。)


頭をライオンに思いっきりガジガジと丸齧りされている一号であったが、本人は気にした風もなく、手に持っていた特製饅頭をライオンの口の中に突っ込んだ。


「グルォ・・・!?ガフッ、ガフッ・・・!」


それに驚いたライオンは、思わず一号から引き下がって咳き込む。


「グルゥッ・・・?」


「グウォ・・・・・・!」


「グオォォッ・・・!」


同じ檻に入っていた他のライオン達も咳き込む一頭の様子に何かしらの異変を感じ取ったのか、少しずつ起き上がり、一号に迫って来た。


「イッ・・・!?イー!イイッ。イッ、イィー!」(おお・・・!?皆起きて来たんだね!それじゃあそんな皆にこれをあげよう。はい、プレゼントォ!)


ライオン達が一斉に吠え出そうとした瞬間に一号はその開いた口の中に特製饅頭を投げ込んだ。


「「「グッ・・・!?ガッ、ガホッ・・・・・・!?」」」


残りのライオン達も口に放り込まれた饅頭を飲み込もうとした際に、変な所に入ってしまったようで、それぞれ咳き込み始めた。


「イ~!」(ただいま~!)


ライオン達が咳き込んで行動不能になっている最中に、一号は檻の中から出てきてディーアルナ達と合流する。

もちろん出入口の扉の鍵はしっかりと閉めて。


「ただいま、じゃないよ一号!離れる時は一言言って・・・!ライオンの檻の中にいたのを見つけた時は心臓が飛び出るかと思うほどビックリしたんだから!」


「イイー。イイッ、イーイー。」(申し訳ない。動物達に囲まれてハイテンションになっちゃって、ついつい我を忘れてしまってました。)


勝手に動いてしまったという自覚がある為か、やや申し訳なさそうに後ろ頭を掻きながら謝る一号。

ディーアルナはそれを見て、「次からは気を付けるように!」と注意するのであった。


「・・・でも、一号のこの特技は使えるな。他の檻の鍵も開けることは出来る?」


「イイー。イーイー、イイイッ、イー!」(問題ないですね。使われている鍵も他の動物園でも使われているようなタイプの物ですし、昔動物園に忍び込む際に何度も開けたことがあるので、秒で開けられますよ!)


「・・・・・・そ、そう。」


自信満々に言う一号。

それに対し、以前も動物園に忍び込んだことがあるんだと内心でドン引きしつつも頷くディーアルナであった。




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