ミッション105 VS最強の女幹部・・・!!
「・・・うっわ、なんだよあれ。一目で力自慢だと分かる怪人を軽く一蹴とか、とんでもなく強いじゃないか、あの人」
ブルーナイトメアによって筋骨隆々な体の怪人が倒され、海へと落とされた光景を目にした俺は思わずそう呟いていた。
力自慢―――つまりパワー型の怪人というのは、基本的に身体能力が高い奴が多い。怪人化の際に取得する能力も自身の能力や攻撃の威力を強化するものが多く、それ故に突ける弱点も少なく、シンプルに強くて戦う際はかなり厄介だ。
以前、秘密基地のトレーニングルームに設置されている戦闘シミュレーターというやつで、過去の記録に存在していたパワー型の怪人と戦ったことがあるので、その倒し辛さは俺も実感している。
だからこそ、あの筋骨隆々な体の怪人をブルーナイトメアが瞬く間に倒したのを、俺は素直に凄いと思った。
戦闘の様子を一緒に見ていたブレーバー、戦闘員一号、二号もまた同じ感想を抱いたらしく、彼らもまた感嘆の声を上げていた。
「イイイッ、イーイーイイーイー?イイッイー」(彼女が戦ってたあの怪人、確かここ最近所属していた組織から独立して傭兵として有名になってきた『ザンバラン』じゃなかったっけ?大剣ぶん回して色んな場所で無双してるって噂の)
「イッ、イイッ。イーイイー・・・・・・イイイーイーイー」(ああ、特徴が一致していたから間違いないだろう。実力に関しては幹部級だという話だったが・・・・・・この場合は相手が悪かったと言うべきだろうな)
『ふぅむ・・・流石は噂に名高い〝堕ちた青騎士〝と言うべきか。十年前の例の騒動で堕ちてしまったとしても、千年に一人の天才と称されたその剣の腕は衰え知らずといったところか・・・・・・』
むむむ・・・!といった感じに話す三人。
その話の中で少し気になるものがあった俺は、「なぁ・・・」と声を掛けながら彼等に尋ねてみた。
「さっきからちょくちょく話に出ていて気になっていたんだけど、〝堕ちた青騎士〝って何なんだ?聞いている限りだと、なんか異名というか蔑称みたいに感じられるんだけど」
『む?ディーアルナよ、君は彼女の事を知らないのか?・・・いや、待て。ああ、そうか。そう言えば、彼女がそう呼ばれるようになったのは十年前のことだからな。当時は幼い子供であった君が知らなくても無理はないか』
ブレーバーは納得するように軽く頷くと、ブルーナイトメアがどうして〝堕ちた青騎士〝と呼ばれるようになったのかの理由を話してくれた。
『彼女に〝堕ちた青騎士〝という異名が付けられた理由はな、彼女が元はヒーローであった事から起因しているのだ』
・・・・・・はい?
「イッ、イイイッ、イーイー。・・・・・・イッ、イイッ、イイイーイーイイー」(つまり、俗に言う悪堕ちってやつですよ、ディーアルナ様。・・・・・・まあ、彼女が堕ちてしまった理由については、当時の状況をテレビで見ていた俺としては些か同情を覚えるものがありましたけど)
「イイッ、イー。イーイーイイー。イーイー、イイーイー。イッ、イイイッイー。イーイイー」(ああ、その話なら俺も知っているぞ。彼女が悪堕ちする要因となった例の騒動のことだろ。あれは確かに酷かったし、色々と彼女が不憫だと俺も思ったよ。何せ、明らかに悪かったのは彼女の周りだったからな。あれは悪堕ちしても仕方がないと今でも思う)
「えっと・・・それはどういう・・・・・・?」
悪堕ちしても仕方がないとはどういうことなのかと聞き返そうとした俺だったが、しかしその時、ブルーナイトメアがゆっくりと俺達の方へ向けて視線を動かしてきた。
「・・・・・・さて、邪魔する者がいなくなったようなので、そろそろ本来の目的であるブレバラント・アーユーカウス・レンテイシアとの戦闘を行うとしましょう。―――アナタに言っているのですよ、そこの着ぐるみ着込んだ人!!」
『ワンッ!?』
ズビシィッ!とブレーバーに向けて突き付けられるブルーナイトメアの指。
それを向けられたブレーバーは驚いたように身を竦ませた。
『ぼ、僕はブレなんとかという奴じゃないワン!この船のマスコット、シプワンだワン!賑やかしの為に雇われたアルバイトで、怪人じゃなくて唯の一般人だワン!』
「この状況で着ぐるみを着込んで正体を隠そうとする者が怪しくないわけないでしょうが!そうでなくとも、周りが水着やラフな服装ばかりの中で一人だけ着ぐるみの格好しているのが目立たないわけがないでしょう!!」
『ワフッ!!?』
ブルーナイトメアの指摘に再度驚き、後退るブレーバー。
うん、まあそうだよな。彼女の言う通り俺達の周り・・・つまりは甲板にいる人達の格好はどれもラフで涼しげなものや水着ばかりだしな。その中で一人だけ着ぐるみを着てたら、そりゃ誰だって怪しいと思うよな。
「さあ、早くその被り物を外して正体を現しなさい!」
『ワウウゥゥゥッ!?やめて!頭を取ろうとしないで!子供達の夢と希望が醒めてしまうワン!』
「ええい!まだ言いますか、そのような戯れ言を!い・い・か・ら・外・し・な・さ・い!!」
『ぜ、絶対に外さな・・・ワフッ!?』
「えっ?」
うんうん、とブルーナイトメアの指摘に俺が内心で頷いている間に、彼女はズンズンとブレーバーへと近づくと、彼が被っていた着ぐるみの頭をガッシリと掴み、外そうとして力一杯に引っ張り始めた。
当然、外されまいと抵抗するブレーバーであったが・・・しかしなんの偶然か、何時の間にか足元に落ちていたバナナの皮を彼は踏んづけてしまい、ツルッと足を滑らせた。
・・・というか、本当に何時の間にあったんだあのバナナの皮!?いったい誰が捨てた!?
「イッ。イイッイー」(あ、やっべ。アレ、俺が食べた後にゴミ箱に投げ入れようとして失敗して落としたやつだ)
いやお前かい戦闘員一号ーーー!?
『ば、バナナの皮で足が滑って・・・!?ノ、ノオォォォーーー!?』
「ちょ、きゃあああっ!?」
勢いよくすっ転ぶブレーバー。そして前のめりに倒れる彼の体に押されるようにブルーナイトメアも盛大に尻餅を着いた。
「あ痛た・・・うぅ、何が起きたのですか一体?・・・って、これは?」
強かに打ち付けたお尻の痛みに顔をしかめるブルーナイトメア。だがそこで彼女はふと自身が手に持っている物に気付いて思わずといった風に目を見開いた。
それは先程までブレーバーが被っていた犬の着ぐるみの頭であった。
これが手元にあるということは、今のブレーバーは素顔を晒している筈と考えたのだろう。ブルーナイトメアはバッとブレーバーへと視線を向ける。
「ようやく正体を表しましたね、ブレバラン、ト・・・・・・え・・・?」
その視線の先にあったのはブレーバーの素顔(と言っていいかは分からないが)である四つ目の付いたマスク―――ではなく、脂ぎったおっさんの顔であった。
・・・・・・ファッ!?
「あ、あら・・・?ブレバラントでは、ない・・・?い、いいえ、もしかしたら変装している可能性が・・・!!」
「痛タタタタッ!?!?」
「そんな、変装ではない・・・・・・!?」
驚きに硬直していた状態からすぐに立ち直り、脂ぎったおっさんの顔を引っ張るブルーナイトメア。
マスクを被っているなら取れる筈だと思ったのだろうが、しかしその予想に反しておっさんの顔が外れることはなかった。
シプワンの正体がブレーバーだと確信を抱いていたからこそ、まさかの予想外の展開にブルーナイトメアは表情を愕然とさせる。
ついでに言えば俺もびっくりしていた。あの着ぐるみ着てたのって確かにブレーバーだったよな?なのに、なんでその下から出て来たのがおっさん顔なん!?
『ふっふっふっ、驚いているようだな、ディーアルナよ』
「ッ!?」
・・・と、そこで唐突に通信が入った。
自身の腕に装着している変身ブレスレットに組み込まれている機能の一つであり、仲間内だけに繋がる秘密通信だ。そしてその通信の送り主は、先程犬の被り物が外れておっさん顔を晒した人物からであった。
『これぞ十八ある我の宴会芸技の一つ、パーフェクト変装術である!今我が着けているこのおっさん顔のマスクは質感は人肌に限りなく近く、加えてボイスチェンジャーの機能も組み込んでいるので声色の変化も容易!また、簡単に外れないように工夫を施してあるので切り込み等を入れられない限り正体がバレる心配は皆無!』
なにその無駄に洗練された技術!?
『そしてとくと見よ!我が華麗なる演技を!!』
ブルーナイトメアには見えない角度でニヤリと悪い笑みを浮かべるおっさん顔のマスクを被ったブレーバー。
その後で彼はキリッとした表情となり、ギュピーンと目を光らせた。
「だから言ったのに。子供達の夢と希望が醒めてしまうことになるって」
「!?」
「シプワンは子供達にそれなりに人気があるマスコットキャラだ。そのキャラの着ぐるみの下がこんなおっさん顔であると子供達が知ったら、どれだけがっかりする事か・・・」
「うっ!?」
おっさん顔のマスクを被ったブレーバーが、悲しそうな表情を浮かべ、恨めしそうな声を零しながら切なげな瞳をブルーナイトメアへと向ける。
い、いやいやいや、いくらなんでもそんな適当な言い訳、信じられるわけが―――
「す、すみません。そのような理由があったとは知らずに・・・」
信じたーーー!!?いやチョロすぎないアンタ!?素直か?以外と素直な性格なのか!?
『フハハッ!!どうだ見たかディーアルナよ!我の演技力も中々のものだろう!これが大人の処世術というものだ!!』
表面上は悲壮感を漂わせながらチラッと俺に視線を向けてくるブレーバー。
しかし、通信越しに聞こえてくるその声は内心でドヤ顔を浮かべている様が容易に想像できるものであった。
「し、しかし、そうなるとブレバラントはいったい何処に?一通り周りを見回してもそれらしい人物の姿は見えませんし・・・・・・困りました。此処に彼がいるという情報を得たからこそ私達は乗り込んで来たというのに」
キョロキョロと周囲を見回した後に若干残念そうに肩を落とすブルーナイトメア。
だがその後に、落としていた肩をすぐさま戻した彼女は一つ溜め息を吐くと、視線をこちらへと向けてきた。
・・・・・・ん?
「・・・・・・仕方がありません。彼がいないというのであれば、ここは計画をプランBへと変更するとしかないでしょう。―――ねぇ、悪の組織アンビリバブルの幹部であるディーアルナさん?貴女には我々の仇敵であるブレバラントが何処にいるのか教えていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
ブルーナイトメアはそう言うと、チャキリッと刺突剣の切っ先を俺へと向けた。
・・・・・・ホワッツ?
「え、え?ちょ、ちょっと待ってくれ・・・!いきなりそんなこと言われても・・・・・・というか、なんで俺の事を知ってるんだ?」
「仇敵であるブレバラントの事を調べていたのです。であれば、彼の部下である貴女達の事も調べるのは必然。特に貴女のことは入念に調べ上げましたよ、ディーアルナさん」
「お、俺の事を・・・?」
「ええ。―――我々が入手した情報の大半は人伝や噂ばかりでしたが、その中でとある情報屋から仕入れた貴女の戦闘データは驚きに値するものでした。少なくともその潜在能力は並みの怪人など遥かに越えている。完全に開花すればどれほどの驚異になるのかと思わず身震いしてしまう程に」
話の途中でブルリと体を震わせるブルーナイトメア。
彼女はピュンッと刺突剣を振るうと、それを掲げるように眼前に構えた。
「ですが、それも今の内に叩いてしまえば問題はない。データ通りなら今の貴女の実力は私には及ばない。ここで叩き潰してしまえば後の驚異は潰える。ついでにブレバラントの居場所も吐かせれば一石二鳥というもの。―――さあ、構えなさい。抵抗する自由くらいは与えてあげましょう」
ギンッ、とブルーナイトメアは戦意に溢れた鋭い目付きを向けてくる。どうやら彼女は俺のことをかなりの強者と見ているようだ。
いやまぁ、確かに俺は自分の戦闘能力がそれなりに高いものであるという自覚はある。・・・あるけれど、でも彼女が言うような力が自分にあるとは到底思えないのだが。
・・・それはそれとして、俺の戦闘データなんていったい何処から手に入れたのだろうか?とある情報屋から仕入れたとか言っていたけど・・・・・・もしかして?
「あの、ブルーナイトメア、さん?つかぬことを聞くが、いったい誰から俺の戦闘データなんて仕入れたんだろうか?俺達の組織は他の組織と交流はあるけど、あまり戦闘行為とかはしてこなかったからそんなデータがあるとは思っていなかったんだが・・・・・・まさかとは思うが、その情報屋ってあの酒飲みなネクロマンサーだったりしないよな?」
「おや、彼女の事を知っていたのですか?・・・ええ、その通り。貴女の戦闘データは彼女から買い取りました。まあ、存外高くつきましたが」
やっぱりかーーー!!!いやあの人何してくれてんの!?確かあの人ブレーバーの酒飲み友達だったよな!いくら情報屋だからって、その友達に関する情報を売るか普通!?
『いや、アイツなら金になる、商売になるというのであれば売るな、普通に』
アイツならやってもおかしくない、というブレーバーの肯定に俺は頭を抱えたくなってしまった。
あーもう!ホントにあの人はもう!!
「聞きたいことは十分ですか?では、そろそろ始めるとしましょうか。これ以上無駄に時間をかけるわけにはいきませんからね。―――行きます」
ブォンッ、と刺突剣を勢いよく振るったブルーナイトメアは、次の瞬間には地面を強く蹴って目にも止まらぬ速さで俺に接近すると、ヒュヒュヒュンッ!と連続の斬撃を放ってきた。
「やっば!?」
それを目にした俺は、反射的に回避しようと大きくバックステップを踏む。
だが、そんな俺の動きを読んでいたのか、ブルーナイトメアは即座に追撃を仕掛けてきた。
「逃しませんよ!【ブルースプラッシュ】!」
ブルーナイトメアがそう叫んだ瞬間、彼女の右手に持つ刺突剣の刃からエネルギーが放出され、それは水のように波打つと俺の事を飲み込まんと迫って来た。
「ちょっ、危なっ!?【瞬兎】!」
それを足にエネルギーを集め、強化した脚力でもって大きく空中に跳んで回避する俺だったが、しかしブルーナイトメアはそれすらも読んでいたらしい。空中にいる俺に向けて更なる一撃を放ってきた。
「逃がさないと言ったはずです!【ブルースプラッシュ】!!」
「うぇっ!?」
再び刃からエネルギーを放出し、今度は縦長の水の斬撃を放つブルーナイトメア。
その攻撃を、俺は咄嵯に身を捻る事によってギリギリのところで回避したが、足場のない空中で無理に体を動かしたが為にバランスを崩してしまった。
「そこです!【ブルゥゥースプラァッシュ】!!」
「あぁもう!おんなじ技名の癖して妙にレパートリーが多彩だなぁおい!?」
なんとか体勢を立て直し、甲板に激突する寸前に着地する事に成功したものの、その隙を狙ってまたもやブルーナイトメアが水の斬撃を放ってきた。
今度は螺旋を描くような軌道であり、その規模や形はもう渦潮や水竜巻といったものに近い。威力も先程まで放たれていたものよりもありそうだ。直撃したら大ダメージは確実だろう。
ではまた避ければいいだろうと思うだろうが、不安定な体勢で着地したこともあってかすぐに移動するのは難しい。それ以前に、水の斬撃の攻撃範囲が思った以上に広く、上下左右の逃げ場がない。もし動けたとしても避けきれずに当たってしまうのがオチだろう。
「【龍気弾・廻】!!」
なので迎撃することにした。
両手を前に出し、掌にエネルギーを集中。目の前に高速回転する球形のエネルギー弾が形成された瞬間、俺はそれを螺旋描く水の斬撃に向けて発射した。
ドゴォン!!という轟音と共にぶつかり合う二つの攻撃。互いに押し押され、拮抗したそれ等は、最終的に弾けるように相殺された。
「ほぅ・・・・・・中々やりますね」
「そりゃどう、も!」
感心した様子を見せるブルーナイトメアに対し、お返しだと言わんばかりに拳を振るう俺だったが、しかし彼女はその動きを見切っていたらしく、簡単に避けられてしまった。
「お返しですよ!」
そして俺の攻撃を避けながらブルーナイトメアは反撃として刺突剣による突きを放つ。
顔面狙いのそれを紙一重で躱し、刃が顔の横を通り過ぎていくのを視界の端に見送る。
そのまま俺は体を回転させ、ブルーナイトメアの首狙いの回し蹴りを放つが、それは彼女が突き出した左手によって防がれてしまう。
互いの手足がぶつかり、衝撃音が響く。
一瞬だけ硬直状態に陥るが、すぐさまお互いに手足を振り払うようにして離れた。
「・・・ふむ、やはり強い。現時点でこれ程とは、やはり私の見立てに間違いはなかったようですね。―――だからこそ、余計にここで潰さねばという気持ちが強くなりました」
距離を取った直後、ブルーナイトメアが不意にそう口を開く。
それに対して俺は苦々しげに言葉を零した。
「クソッ、流石は〝最強の女幹部〝と呼ばれるだけのことはあるな・・・!」
ブレーバーや戦闘員達の話を聞いて彼女は相当強いだろうと思ってはいたが、しかしその強さは俺の想像以上であった。
何よりも彼女の戦闘センスの高さには驚かされた。
こちらの動きを読み、的確な攻撃を仕掛けてくる。それだけでなく、踊るような軽やかな身のこなしで相手の弱点や隙を突いてくる。
それは歴戦の、戦い慣れている者特有の動きであった。
―――だからこそ俺は彼女との戦闘に違和感を感じていた。
「(しかもこの感じ・・・たぶん彼女はまだ本気も、全力も出していない。・・・マズいな、こっちは結構全力に近いってのに。このまま戦っても勝ち目がないように思える)」
先程まではこちらを格下だと思っていたからこそ全力を出すまでもないと多少手を抜いていたのだろう。だが、それもここまで。一度ぶつかりあったことで俺の実際の実力がどれほどなのかを理解したのだろう。明らかに警戒の度合いが増していた。
現状はこちらが不利。それを分かっていたが故に俺の心の中には焦りが生まれ始めていた。
せめてもう一人か二人、一緒に戦ってくれる仲間がいれば・・・と思った俺は、そこではたと気付いた。
そういえばいるじゃん仲間が、と。
立場的に戦えないブレーバーを除いたとしても、この場には戦闘員一号、二号、アルミィ、メドラディ、ピョン太郎がいるのだ。皆が共闘してくれれば人数的にも戦力的にもこちらが有利になる。
「・・・・・・あれ?」
そうと決まれば善は急げ。そう思い、皆に声を掛けようと辺りを見回して―――しかしそこで何かがおかしいことに気付いた。
―――誰もいなかったのだ。仲間が。
いや、ブレーバーはいた。相変わらず着ぐるみを着て、頭部分を被り直した状態ではあったが、しかしそれ以外の戦いが始まるまで俺の近くにいた戦闘員一号と二号、プールにいたアルミィとピョン太郎、テーブル席に座っていたメドラディが甲板上から姿を消していたのだ。
・・・・・・いやなんで?
『どうしたのだ、ディーアルナよ。何やら困惑しているようだが?』
と、そこでブレーバーから通信が入った。
俺は戸惑いながらも彼に尋ねる。
「な、なあ、ブレーバー?皆は、俺達以外の仲間の皆は何処行ったんだ?なんか何処にも姿が見当たらないんだけど・・・?」
『む、皆か?皆なら我の指示でこの状況を打破する為にそれぞれ散ったぞ。今此処にいるのは我等だけだ』
・・・・・・は?
「ちょっ、えっ、どういう事!?」
『この巨大な船をたった一人で制圧、占拠できる筈があるまい。必ず他にも仲間や部下がいる筈だ。皆にはそいつ等の撃退を命じたのだ。・・・とはいえ、我の予想が正しければ彼女が連れてきているのはおそらく数名程度だろう。その程度の数で船内を制圧するとしたら、操舵室か動力室が可能性が高い。・・・懸念があるとすれば、多数のロボットが置かれてある倉庫区画の方だが、そちらは何もなければすぐに戻ってくる筈だ』
「いや、ふざけんなよ!?というか、そんな指示何時出した!」
『君がブルーナイトメアと戦っている間にだ。それと、我もやることがあるので少しこの場から離れる。君には我等が戻ってくるまでの間、彼女の足止めを頼む。任せたぞ、悪の組織アンビリバブルの女幹部ディーアルナよ』
思わず叫ぶ俺だったが、ブレーバーは特に悪びれた様子もなく淡々と答えると、そのまま人混みに紛れるように姿を消してしまった。
・・・いや、置いていくなよ!?
突然の事態に驚愕し、唖然とする俺だったが、しかし何時までも驚いたままでいることを状況が許さなかった。
「さぁ、続きを始めましょうか、ディーアルナさん。貴女の強さは大体分かりました。ここからは本気で行かせてもらいます」
ブルーナイトメアが再び攻撃の体勢に入ったからだ。刺突剣を構え直し、こちらに鋭い眼光を向ける様は、まるで獲物を前にした狩人のようだ。
「くっそ、恨むぞブレーバー!もしこれで死んだら絶対化けて出てきてやるからなぁ!?」
そんなブルーナイトメアの姿を目にした俺はそう言葉を吐き捨てながら構えを取ると、彼女との戦いを再開するのだった。
次回投稿予定は10月16日の予定です。




