ミッション96 逃げようとする女幹部VS逃がしたくないヒーローVS逃がそうとする襲撃者・・・!?
「(・・・・・・御城さんと戦うことになるかと思ったら、なんか突然壁壊しながら現れた怪人(?)が襲い掛かってきて、激闘を繰り広げ始めたんですけど・・・なぁにこの状況?)」
御城さんとの間に流れた緊迫した空気からすっかり戦うものと思っていたのに、突如として現れた怪人と思われる相手と戦い始めたことで、俺は肩透かし感を覚えていた。
というか、なにあの二人めっちゃ強いんですけど。特に乱入してきた奴が御城さんに放った、密着状態からの噴射の勢いを乗せた拳の一撃・・・あれはヤバイ。俺があれを受けたら間違いなく一発KOされる・・・!!。
まあ、それを受けて耐えきった御城さんの方もヤバイと言えばヤバイんだが。しかも、受けると同時に反撃の一手をかまして、更に隙を見つけたら即座に追撃するとか・・・・・・あの人の体、どんだけ頑丈なんだよ・・・!?少なくとも、怪人の俺よりも耐久力があるのは間違いなさそうだ。
今もほら、お互いに超接近戦で殴り合ってるし。ガガガガガッ!!って物凄い音と衝撃波が発生しているのに二人ともまだまだ余裕がありそうだし。
「くっ・・・!お前、本当に何者だ?自惚れじゃあないが、俺と渡り合う奴なんてそう多くはないぞ・・・!それにその動き、何処と無く見覚えがある。・・・・・・まさか!?」
『・・・何に気付いたかは知らないが、意識を他所に向けるとは余裕があるじゃないか。流石は日本の序列第一位のヒーロー、スパイラル・ジェッター・・・とでも言うべきかな!』
ガシャガシャッ!パシュシュシュシュシュッ!!
襲撃者が声―――変声期でも使っているのか、男のようにも女のようにも聞こえる機械音声染みたそれ―――を荒げた瞬間、両足の膝から下、外側側面の装甲部分がガシャッとスライドした。
そして、そこに納められていた縦に四つ並んだレンズから極細のレーザーが連続で放たれた。
「・・・ッ!」
自身に迫り来るそれ等を目にした御城さんは、避けようとして反射的に大きく後ろに跳ぶ。
だが次の瞬間、彼は息を飲んだ。
跳んだ彼を追いかけるように、レーザーの軌道もまた曲がったからだ
「ホーミングレーザー!?しかも追尾性能エグいくらいに高ッ!」
ほぼ直角で曲がってるじゃんアレ!?
「ハァァッ・・・!!」
シュバババババババッ・・・!
「凄ッ!一本一本的確に捌いてるっ!」
移動しつつ自身の後を追ってくるレーザーを両手で摘まむように弾いていく御城さん。
その動きはまるで技を極めた熟練の職人を思わせるものであった。
『はっはっはっ、流石!ならこれはどうだ!?ミサイルのシャワーだ!防げるものなら防いでみな!!』
「・・・なにっ!?」
自身の攻撃が防がれるのを見て驚いてはいたものの、感心の気持ちが強い様子だった襲撃者は、次はコイツだ!という感じに背中を軽く丸めた。
その瞬間、ガシャガシャガシャッと音を立てながら背中の装甲部分が開き、そこからドドドドドドッ!!と大量の小型ミサイルが発射された。
・・・って、多ッ!?ちょっ、もう百発くらいは撃ち出しているんですけど!!?
「くっ・・・!【風刃舞】!」
ヒュンヒュンヒュンッ・・・!ドドドドォォーーーンッ!!!
先程のホーミングレーザー並みの追尾性能で迫り来る大量のミサイルを、御城さんは両手足から放つ風の刃で次々と撃ち落としていく。
だが、襲撃者の背中から発射されるミサイルはまだまだ撃ち尽くす気配を見せない。このまま膠着状態が続くかと思われたが、しかしそこで襲撃者が更なる追撃の一手を放った。
『やるじゃないか!なら、こいつもおまけしてやろう!!』
ガシャッ、と今度は襲撃者の両腕の装甲部分がスライドし、そこに納められていた横に三つ並んだ超小口径の銃口からピンク色の光線を秒間数十発のレベルで乱射した。
ビーム!?今度はビームを発射したぞ、アイツ!?しかもガトリング砲並みの連続で!!?
ガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッ!!!
「う、うおおおおおーーーっ!?!?」
先に発射していた二つと違い追尾性能はないようだったが、しかし弾速は比べ物にならないほど速く、流石の御城さんでも避ける暇がなかったらしい。交差させた両腕を盾にするように眼前に掲げて防御していた。
『そうら、おかわりだ!遠慮せずに持っていけぇ!!』
「なっ・・・!?」
「嘘だろっ!?」
そこへ更に追加で、先程も放ったミサイルとホーミングレーザーを発射する襲撃者。
それはまさに某超戦艦の砲撃戦を思い起こさせるような怒濤の攻めであった。
・・・いや、物量ッ!?
ドドドドドドガガガガガガッッ!!!
「ぐおおおおおおーーーッ!?!?」
レーザーにビームに爆撃の雨霰に晒され、思わずといった風に悲鳴を上げる御城さん。
だがしかし、やられてしまったわけではなく、ギリギリ攻撃を防ぐ事に成功していたらしい。
・・・とは言え、あまりの超火力、重爆撃に身動きが取れなくなっているようではあったが。
『よし、これで動きは封じた。・・・というわけでそこの君、今の内に逃げても大丈夫だぞ』
「・・・はっ?」
肩越しに目線だけをこちらに向けながら襲撃者は俺にそう言う。
なんなら左手の親指をグッと立てて見せる動作も加えて。
・・・いや、えっ?どういうこと?
「あ、アンタはいったい何が目的なんだ・・・?」
『んー?・・・んー、まあ色々あると言えばあるけど、とりあえず今の目的は君を此処から逃がすことだね』
「・・・俺を逃がすって、何の為に?」
『その質問に答える義務はこちらにはないよ。・・・まあ、なんだ。精々・・・ラッキー、助かっちゃった!くらいに思えばいいんじゃないかな?』
「ノリ軽ッ・・・!?」
そう語る襲撃者に思わずツッコミを入れる。
内心で、「いや、その厳つい見た目でそのノリの軽さって・・・!?」とも思った俺だったが・・・なんというか、こちらに背中を見せながらそう語る襲撃者の姿を見て、懐かしいというか、少しだけ胸が締め付けられるような感覚も覚えて思わず戸惑ってしまう。
「・・・い、いや、でも人質になっていた子供達がいるし、その子達を置いて俺一人だけ逃げるわけには・・・・・・!」
『・・・子供達?それって、あの子達の事かい?』
「へっ・・・?」
「おーい!おーい!」
「お姉ちゃーん!」
「・・・・・・」
「・・・・・・ホワッツ?」
襲撃者が「あっちあっち」という感じに顎をクイッとさせる。
それを見て、顎先で示された方へと視線を向ければ・・・・・・そこには筋骨隆々の男―――山田に抱えられながら、俺に向かって手を振る兄妹の姿があった。
・・・・・・・・・えっ?
「い、何時の間に・・・!?」
『君がこちらの戦いに見入っていた間にだよ。おそらくそのまま近くに置いておくのは危ないと判断したんだろうね。鮮やか且つスピーディーな動きであそこの彼が回収していってたよ』
「き、気付かなかった・・・!」
というか、コイツはあの激闘の最中でその動きに気付いてたってのかよ・・・!?
『さあ、これで君が此処に残る理由は無くなっただろう?早く逃げるといい』
「くっ・・・!そ、そうはさせ―――!」
『うん、君はもう少し黙っているといいよ』
ビシャァァァーーッ!ドガァァァンッ!!!
「ヌアアアアアアアッッ!?!?」
「み、御城さぁーん!?」
顔を正面に戻し様に、御城さんに向けてツインアイから熱光線を放つ襲撃者。俗に言う目からビームというやつだ。
それを受けた御城さんは一瞬爆炎の中にその姿を消したが、しかしすぐさま黒煙を切り裂きながら姿を現した。
『へぇ?今のを堪えたんだ。昔に比べて頑丈になっているね。―――まあでも、それくらいなら十分に想定内だけど』
「くっ、その口調に物言い・・・やはり、やはりお前か!最初はエネルギーの質が違い過ぎたせいで分からなかったが・・・何故だ!何故、今更俺の前に現れた!?答えろ!!」
一歩前に踏み出しつつ襲撃者に向けてそう叫ぶ御城さん。
対する襲撃者は小馬鹿にでもするように肩を竦めてみせた。
『そっちの子にも言ったけど、その質問にこちらが答える義務はないよ』
「なら、この手で捕まえて無理矢理にでも吐かせてやる・・・っ!!」
そう気炎を吐きながら更に一歩踏み出す御城さん。両腕に高速で回転するように渦巻く風を纏っているその姿は、まさに本気モードと呼ぶに相応しいそれ。放たれる威圧感も先程までの比じゃないくらいにヒシヒシと感じる。
―――その時だった。ガシャンッ・・・!と何かが閉じるような音が聞こえてきたのは。
「なっ、トラバサミ・・・!?」
音の正体は御城さんの足下に何時の間にか設置されていたトラバサミであった。
彼の足を挟み込んでいるそれは存外頑丈な作りとなっているらしく、彼がどれだけ外そうと力を入れてもガチャガチャと音が鳴るだけで外れる様子はまったくない。
『君の性格はあの時から既に把握している。一つの事に拘っている時は視野が狭くなるということもね』
そう語った襲撃者は、パチンッと指を鳴らした。
その瞬間、御城さんの周りに数えるのも億劫な程の大量のトラバサミが出現した。
「・・・ッ!?イタッ!アダダダダッ!?やめ、まとわり、まとわり付くなっての・・・!この、ハグゥッ!?ちょ、おま、いったい何処に噛み付い・・・あ、アーーーッ!?!?」
彼に向かって一斉に集まる大量のトラバサミ。ガジガジガジガジと、まるで噛み付くが如く御城さんの体を挟んでいくそれ等は、どうやら攻撃を目的としてではなく、飽く迄も御城さんを拘束することを目的に動いているようだ。
・・・まあ、中には赤熱していたり冷気を纏っている物もあるので、地味に嫌なダメージも入っているようではあったが。
『うん、これで暫くの間は足止めができるね。・・・さあ、ほら。今の内に君は逃げなよ』
転ばされ、ドッタンバッタンゴロゴロゴロと地面の上を転がる御城さんの姿を見た襲撃者は満足そうに頷くと、俺に向かって早く逃げるように言う。
「いや、その・・・」
『うん・・・?何か他に気になる事でもあるのかい?』
だが、それに対して俺は返事を濁した。襲撃者の言う通り、あの兄妹の他にも気になっている事があったからだ。
それはピョン太郎のことだ。未だに彼はこの倉庫内でブルー兜という野良怪人と戦っている。野良怪人に成ってしまったとは言え、このまま置いていくというのは、飼い主だった者としては出来ればしたくなかったのだ。
『うーん・・・待ってあげたいところだけど、生憎ともうすぐ弾を全部使い切りそうなんだよね。・・・・・・決めた。君には悪いけど、この場から即刻退場していただくとしよう』
俺の態度を見て悩むような声を上げる襲撃者。
その後でウンと一つ頷くと、背中の装甲部分に搭載されているミサイルの一部の狙いを、ガッション・・・!とこちらに向けてきた。
・・・・・・って、はい?
「・・・・・・あの、なんか背中のミサイルの一部がこっちに狙いを定めているようなんですけど。・・・まさか、ミサイルをブッ放して俺の事をブッ飛ばそうとか考えてるんじゃ・・・・・・・・・」
『大丈夫、大丈夫。今の君の体は怪人のそれだからね。これくらいの攻撃じゃ死にはしないって』
「・・・本気なんだな?本気でブッ放すつもりなんだな!?・・・こ、このスパルタ具合、それに有無を言わせない感・・・覚えがある、なんか既視感めっちゃあるんですけどぉ・・・!?」
『なんか考え込んでいるようだけど時間がないので問答無用で発射ァ!』
パシュパシュパシュッ!シュゥゥゥーーッ!
「ちょっとぉーーーっ!?!?」
そして襲撃者は一切の躊躇いなくミサイルをブッ放してきた。
数は十本と、御城さんに放たれていた分に比べればかなり少なかったが、しかしその高い追尾性能に違いがあるわけがなく、それぞれが独特の弧を描きながら俺に向かって飛んで来た。
いや、問答無用かよ!?
「マジでふざけんなアンタギャアアアアアアーーーッ!!?」
チュドドドドォォォーーーンッ!!!
目を見開き、恨み節を込めて思いっきり叫んだその瞬間、俺の体はミサイルの着弾と同時に発生した爆炎に飲み込まれ、物凄い勢いで吹き飛ばされるのであった。
一方その頃、ブルー兜とピョン太郎の戦いはと言えば、恐竜を思わせるフォルムの怪人が放った攻撃の余波を受けて、一時中断していた。
「チッ・・・!?あの恐竜みたいな見た目の奴め、好き放題やりやがって・・・!お陰であのウサギ頭を見失ってしまったじゃないか・・・!?」
ケホケホとむせ込みながら悪態を吐くブルー兜。その視線は周囲を漂う煙の中に消えてしまったピョン太郎を探してキョロキョロとさせていた。
「(にしてもこの状況はマズイ・・・かなりマズイ・・・!まさかあのスパイラル・ジェッターまでもが来るなんて・・・!クソッ、完全に予想外だ。早く此処から離れなければ・・・!)」
「その為には、自身の逃走の邪魔をしているあのウサギ頭をどうにかしないと・・・!」と思いながらブルー兜は視線を動かす。
「(あのウサギ頭の怪人は、俺が状況が不利になったと判断して逃げだそうとしていたところに突然現れ、問答無用で襲い掛かってきた。どういった理由でなのかまでは分からないが・・・しかしあの攻撃性だ、再び襲い掛かってくる可能性は高いだろう)」
その際は周囲に漂っている煙に紛れて襲い掛かってくる筈だ、とそう考えていた彼は、焦燥感を伴いながらピョン太郎の姿を探す。
「ウサッ!」
「・・・ッ!そこにいたか!」
そこでようやく煙の中にピョコンと跳ねるように動く兎耳を見つけたブルー兜は、そちらに向かって駆け出した。
「先手必勝ッ!また膠着状態に陥ってしまう前に速攻で倒す!そしてその後に全力で逃げる!!」と意気込みを入れながら。
「ウササッ!」
「フンッ、真正面から突撃してくるとか嘗められたものだな!コイツを食らって死ねぇ!!」
ブルー兜の動きに呼応するように、ピョン太郎もまた彼に向かって駆け出した。
それを目にしたブルー兜は鼻で笑いながら緩く開いた片手の指をゴキリッと鳴らし、更にはエネルギーを纏ったその手をピョン太郎に向けて勢いよく伸ばした。
ゴウッという音を立てながら物凄い早さで進むブルー兜の腕。一瞬とはいえ音速の壁を越えたことで衝撃波さえ伴ったその一撃は、食らえば大ダメージを負う事は必須。
「ウサッ!!」
「なん、だとぉ・・・!?」
そして伸ばした腕がピョン太郎にぶつかろうとしたその瞬間、ブルー兜は驚きに目を見開いた。
眼前にいた筈のピョン太郎の姿が突然煙の様に消えてしまったからだ。
「(しまった、後ろを取られた・・・!?)」
何時の間にかピョン太郎は自身の後ろに背中合わせになるように立っている。
その事に気付いたブルー兜は、このままでは先程の二の舞に・・・いや、あの怒濤の攻撃を鑑みるに下手をしたらやられかねないと考え、せめて視界だけでもと肩越しに振り返る。
「ウゥゥッサァァアアアッ!!」
「・・・・・・はっ?」
しかしそこにピョン太郎の姿はなかった。何時の間にか倉庫の入り口に向かって全力疾走していたのだ。
すっかり攻撃してくるものと思い込んでいたブルー兜は、まさかのピョン太郎の逃走に思わずあんぐりと口を開け、呆けた声を出してしまう。
ムニュリ。
「・・・え?」
と、そこで伸ばしていた手が何か柔らかな感触のモノを触った気がした。
いったい何だ?と思いつつ前を向けば、そこには頬を真っ赤に染めたウィップティーチャーが立っていた。
更に手元へと視線を向ければ、自身の手が彼女の豊満な胸を鷲掴みにしている様子が目に入った。
「・・・ちょっと貴方、いったい何処を触っているんですの」
鞭を持つ腕をフルフルと震えさせるウィップティーチャー。
涙目になっている様子は傍から見れば可愛らしいと思うかも知れないが、しかしその体から立ち昇る怒気と殺気はとても可愛らしいと呼べるモノではない。まるで般若でも降臨したような、身の毛が弥立つ程の恐ろしさが感じられるそれだ。
「い、いや、これはワザとではないぞ!?偶然、偶然伸ばした手が当たってしまっただけで、決してそういうつもりだったわけでは・・・!?」
「御託はいいから・・・いい加減、その手を離しなさい!この痴漢怪人がぁぁっ!!!」
「いやそれは酷い風評被害アンギャアアアアアーーーッ!?!?」
スパンスパンスパパパパァァァンッ!!!
必死に「偶然、偶然だから!?」と言い訳をするブルー兜。
しかしそんな彼に向けてウィップティーチャーは「言い訳をしてる暇があればとっととその手を離せぇ!!」と言わんばかりに鞭を振り上げ、ズタズタのボロ雑巾みたいになるまでメッタ打ちにするのであった。
次回の投稿は5月20日の予定です




