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ミッション10 学舎での命懸けの(ガチ)バトル・・・!?


「・・・・・・な、なんですか、これはぁ!?」


三号の説明を聞いて頭の中でこの学校が崩落する様を想像して顔色を青くしていた時、背後から驚愕するような女性の声が聞こえた

その声に驚いて振り向くと、そこには年若い一人の女性が辺りに貼られている赤い張り紙を見回していた。

長い金髪をサイドテールに纏め、テール部分をまるでドリルのようにカールさせた髪型。

赤縁の眼鏡を掛けており、その奥にある瞳は綺麗な青色。

顔形はシュッとしていて勝気そうな印象だが、十人中十人が美女と呼べる程の美貌。

女性用のビジネススーツをしっかりと着こなしてこそいたが、スーツに収まらない我儘ボディとも言える体が女性としての魅力を十二分に引き出し、ビジネスウーマンと言うより十八禁系のお店にいそうな格好に見えてしまいそうな人物であった。


「イイー!?」(あ、あれは!?)


「知っているのか、二号!」


「イイーッ!イイッ、イーッ・・・・・・!?」(あれは女教師ヒーローの『ウィップティーチャー』です!ヒーロー業の傍らで学校の教師をしていると聞いていましたが、まさかここだったなんて・・・・・・!?)


女教師ヒーロー『ウィップティーチャー』。

二号の説明では数年前にデビューした人物で、主に愛用の鞭を使って戦うヒーローとのこと。

彼女の操る鞭は変幻自在とまで言われ、その巧みな鞭捌きで数多くの怪人や犯罪者たちをひれ伏させ、捕縛してきたらしい。

現在はヒーロー活動は消極化し、兼業していた学校の教師としての仕事に集中していたのだという。


「こんなものをウチの学校に貼り付けたのは貴方達ですね!いったい何者ですか?」


ウィップティーチャーは廊下の真ん中で話をしていた俺達に気付き、指を差して詰問してくる。


「え、えっと、俺達は・・・・・・」


「いえ、聞くのは後でも出来ますね。今回の主犯と思われる貴方達を捕まえてから、じっくりと問い詰めるとしましょう!」


ウィップティーチャーが腰の後ろに手を伸ばすと、そこに収めていたサイドポーチから鞭を取り出し、こちらに向けて振りかぶって来た。


「問答無用かよっ!?」


「「「イイーッ!?」」」(うわあぁぁっ!?)


縦に横にと縦横無尽に振るわれる鞭攻撃を必死に避ける。

彼女の振るう鞭の速度はもの凄く早くてとても目で追えるものではなかったが、俺はそれを聞こえてくる風切り音と勘によってなんとか紙一重で躱し続けていた。


「むっ!?私の攻撃をこうも躱し続けるなんて、貴女相当できますね!・・・・・・しかし、お仲間の方はそうでもなかったようですが。」


「え?・・・ああ!?一号、二号、三号!」


ウィップティーチャーの視線の先を追って見ると、そこにはボロボロになった戦闘員達の姿があった。

どうやらウィップティーチャーの鞭攻撃を食らったようで、手足をピクピクさせながら床の上に倒れていた。


「イイイイイッ・・・!?イ、イー、イイー・・・!イーイーッ・・・・・・!?」(うごごごっ・・・!?あ、あの鞭、なんて速さだよ・・・!全然見えなかった・・・・・・!?)


「イ、イイッ・・・!イイイッ・・・・・・!?」(さ、さすがはウィップティーチャー・・・!変幻自在の鞭捌きという評価は伊達ではなかったな・・・・・・!?)


「・・・・・・イッ、イー。イイッ、イー・・・?」(・・・・・・ていうか、ディーアルナ様。アレを避けられるって、どんな反射神経しているの・・・?)


「「イー・・・!?」」(確かに・・・!?)


「・・・・・・意外に元気だな、お前等。」


倒れながらも聞こえてくる軽口に、無事であることが分かりホッとする。


「貴女はかなり回避能力が高いようですね。ならば、これを躱すことは出来ますか?――――――モードチェンジ!【オクトパスモード】!!」


ウィップティーチャーがそう宣言し、鞭をクルクルと回しながら左右に動かす。

すると、突然鞭が分裂を始める様子が見えた。

否、鞭先から枝分かれするように八本に分かれたかと思ったら、一本一本が分かれる前の鞭と太さと同等の大きさにまで膨れ上がった。


「うふふっ!オクトパスモードとなった私の鞭から逃れることは出来るかしら?・・・そぉら!八本の鞭の嵐を味わいなさいな!」


「げっ・・・!?」


スパパパパンッ!と枝分かれした八本の鞭が迫ってくる。

先ほどよりも回避が難しくなったそれを、俺は屈んだり、飛び跳ねたり、後ろに跳び下がるなどをして回避する。

しかし、すべてを回避するという事はやはり不可能で、手足に何発か食らってしまうこともあった。


「くそっ・・・!さすがに八本も鞭があると避け辛いな!」


「悪態を吐きたいのはこちらも同じよ!まさかオクトパスモードでも完全に捉えられないなんて・・・!貴女、本当に何者なのよ!?」


「何者と言われても・・・・・・あえて言うならアンビリバブルのディーアルナとしか言えないけど。」


「アンビリバブル・・・?聞いたことがないわね。最近新しく出来た悪の組織かしら?まあ、捕まえてしまえばいつでも聞けることよね・・・!」


ジリジリと迫りながらヒュンヒュンと鞭を振るって来るウィップティーチャー。

俺は振るわれる鞭攻撃をギリギリで躱しながら後退していく。


「たくっ・・・なんでこんな所でヒーローが教師なんてしているんだか。」


「あら?別にヒーローが教師を行っても構わないでしょう?それに、幼いころから英才教育を行えば、今後も継続的に優秀な人材がヒーローとなる可能性が高くなると言うもの。」


フフンッ!と鼻で笑うウィップティーチャー。


「私の可愛い生徒達が大きくなって悪人を倒していく様を想像するだけで、期待に胸が高鳴りますわ!」


「うわっ・・・!ととっ!?ひゃあっ・・・!?」


オーホッホッホッホッ!と高笑いをする彼女に対して何か言おうとするが、笑いながら振るわれてくる鞭攻撃を回避するだけで精一杯で何も言い返すことが出来なかった。


「イイー・・・!イーイイイーッ・・・!?」(だ、ダメだ・・・!ディーアルナ様が押されているぞ・・・!?)


「イーイー、イイーッ?」(ウィップティーチャーって、何か弱点がなかったっけ?)


「イッ、イイー。・・・・・・イイッ、イイイーッ。」(いや、特にこれと言っては無かった筈だ。・・・・・・まあ、弱点とは違うがちょっとしたおかしな噂はあるようだけど。)


「イー?」(噂って?)


「イイイッ、イイーイーイイー。イーイーイーッ。」(統計的なデータから推測された噂なんだが、彼女が救助する人間の比率が一番多いのが子供なんだよ。それも十歳前後の少年が特に多いらしい。)


「イイッ?イー・・・?」(え、なにそれ?なんで少年ばっかり・・・?)


「イッ。イイイー・・・・・・」(分からん。噂の中には彼女がショタコンだからと言うものもあったが・・・・・・)


「・・・えっ?この人ショタコンなの・・・?」


鞭攻撃を避けたり防いだりしていた俺は、床に倒れていた戦闘員達の会話が聞こえた際に気になる言葉が聞こえて思わず呟いた。


「イイッ、イーイイー。イッイー、イーイイーイー。」(あ、聞こえてましたか、ディーアルナ様。いえね、飽く迄噂なんですけど、ウィップティーチャーが幼い少年を性的な目で見ているなんて話が出て来たことがあったんですよ。)


「少年の事を性的な目でって、さすがにヒーロー業の傍らで子供を導く教師が、ショタコンだなんてそんなこと・・・・・・」


二号の言葉に反論しながら件の彼女の方へ視線を向ける。

おそらく、澄まし顔で冷静に否定するんだろうなと思っていたのだが、予想外にもそこには顔を真っ赤にしながら横に背けているウィップティーチャーの姿があった。


「も、もももももちろん私がショタコンだなんて根も葉もない噂ですよ!当たり前じゃないですか嫌ですねもう!」


めっちゃ動揺していた。

反論こそしたが、その口調はめちゃくちゃ焦っている様子が丸分かりであった。

彼女の反応を見た俺と戦闘員達は、揃って内心で「うわぁ、マジかぁ・・・」とドン引きしていた。


「な、なんですかその眼は!違うと言っているでしょう!?」


「・・・・・・いや、そんなマジの反応されても、嘘としか思えないんだけど。」


「ふぐっ・・・!?」


嘘だろ?と問い掛けると、口籠るウィップティーチャー。

頬を膨らませて顔を真っ赤にしている様子は、反論したいけど上手い反論内容が思いつかないという風に見えた。


「イ~。イーイー。」(う~ん。まさかのショタコン女教師だったとはな。)


「イッ、イイー。」(噂も、あながちバカには出来ないもんだなぁ)


戦闘員一号と二号がどこか遠くを見るような視線でウィップティーチャーを見る。

その視線に晒されたウィップティーチャーは自身が責められていると感じたのか、ビクついて後ずさった。


「う、ううぅ・・・!?だ、だって、だって!可愛いんだから仕様がないでしょう!外を元気に走り回っている姿も、物静かに本を読んでいる姿も、私の期待に応えようと頑張る姿すら、どれもこれも愛らしいんですもの!もっとそんな姿を見たいというのは教師として当然の事でしょう!?」


真っ赤になった顔を両手で覆い隠し、身を捩じらせるウィップティーチャー。

言っていることは教師としてはまともそうに聞こえるが、ショタコンであるという事が判明した現在では、唯の言い訳にしか聞こえなかった。


「・・・いや、それでも幼い少年に手を出すなんて・・・・・・」


「そこぉ!変な勘違いをしないで頂戴!私はあの子たちを愛でてこそいるけれど、手を出したことなんて一度もないわ!」


呆れた目線を送る俺にズビシッ!と指先を向けるウィップティーチャー。


「幼い少年と言う幻想は愛でてこそ価値があるの!それに手を出すだなんて言語道断よ!私が所属している淑女同盟少年の部では『YES.ショタ.NO.タッチ』が原則!その誓いを破れば同盟からの恐ろしい粛清が待っているわ!」


言語道断の辺りで自信満々に言い切ったウィップティーチャーだったが、所属している同盟の粛清について思いを馳せた時には、真っ青になってガクブルと体を震えさせていた。

有名なヒーローがそんなに怯えるなんて、その淑女同盟という組織ってどんだけ恐ろしいのだろうか?

まあ、変態が集まっている組織っぽいのは、彼女の話すニュアンス的なものである程度分かるのだが。


「・・・・・・・・・・・・ふ、ふふ、ふふふふっ、・・・・・・私の秘密を知られてしまったからには、生かして帰すわけにはいかなくなりました。」


ウィップティーチャーは顔を覆っていた両手を話すと、薄笑いを浮かべながらこちらに鞭を突き付けてくる。


「貴方達全員、今ここで処断させていただきます!」


テメェ等全員ブッ血KILLとと言わんばかりの気迫でもってそう宣言するウィップティーチャーであるが、・・・・・・


「・・・・・・・・・顔を真っ赤にして涙目で言われても、なんだか締まらないんだが・・・・・・」


「「「イイーッ!」」」(可愛いーッ!)


「うるっさいですよ、貴方達!これでも食らって死になさい!」


「キィーッ!?」とヒステリックに怒り出したウィップティーチャーは感情のままに四方八方に鞭を振り回し始めた。


「【インパクトウィップ】!・・・【スネークハイド】!・・・【オクトパスパワァーラァァァッシュ】!!」


「いいっ!?・・・・うわっ!ちょっ!?待ぁぁぁっ!!」


「「「・・・イッ!?イイッ・・・・・・イビィィィッ!?」」」(・・・ちょっ!?こっちまで来て・・・・・・ぎゃあぁぁぁぁっ!?)


辺り一帯に縦横無尽に振るわれる鞭攻撃。

鞭を振るっている本人を中心としたそれは、今まで振るわれていた際に感じていた洗練さこそなかったが、いっそ台風とでも表現できそうな勢いがあった。

しかも鞭が振るわれる先は俺達だけではなく、周囲の壁や床などにも当たり、建物全体がピシピシという音を響かせるほどの衝撃を与えていた。

・・・・・・・・・ピシピシ?


「イッ!?イイー・・・!イイッ、イイイッ!」(ちょっ!?ヤバいよこれ・・・!あの人の鞭攻撃の衝撃が強すぎて、外側の壁が衝撃を吸収しきれていない!)


「イッ!?」(マジで!?)


「・・・・・・という事は・・・!」


「イッ。イイーッ!」(この学校が、崩れるよ・・・!)


三号の呟いた一言の後、一際大きなビシリッという音が聞こえて来た。

そしてそのすぐ後に地響きが起こり、建物全体が崩落を始めたのであった。





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