第一話:異世界でコンビニ店主になった件
深夜のコンビニ。
誰も来ない静まり返った店内で、俺──真部辰雄はレジ横の椅子に腰を下ろしていた。
「今日も暇だな……。よし、次の休みのキャンプのイメトレでもするか」
キャンプは俺の数少ない趣味だ。
だからと言って仕事中に雑誌を読むのはどうかと思うが、もちろんちゃんと買っている。
……誰もいないから弁解しても意味はないけど。
棚からキャンプ用品の雑誌を取り出し、ページをめくっていく。
すると、あるページで俺の指が止まった。
「……出た。憧れの最新モデルのキャンピングカー」
何度見ても胸が高鳴る。
だが、値段を見た瞬間、心が折れる。
「高すぎて……高嶺のキャンさんだろ、これ」
ため息をつき、雑誌を閉じようとした──その瞬間。
パァァァン!!
「うわぁぁぁ!!」
視界が白に染まり、何も見えなくなった。
反射的に目を閉じ、しばらくしてゆっくり開く。
「……えっ?」
コンビニが消えていた。
代わりに、見渡す限りの森。
「な……なんだこれ……!?」
混乱する俺の脳内に、突然声が響く。
【初めまして。案内型AIです】
「はぁ!? 脳内再生!?」
【手に持っている雑誌を開いてください】
「怪しすぎるだろ……なんで雑誌?」
【真部辰雄様は異世界に転生しました。ステータス案内を開始するため、雑誌を開いてください】
「説明増えたけど……雑誌推しの理由は?」
【雑誌が開錠だからです】
意味はわからないが、開けば状況がわかるかもしれない。
俺は決断した。
「……開くぞ」
パラパラ──。
雑誌が緑色の光を放ち、文字が勝手に動き出す。
————
名前:タツオ
年齢:二十歳
性別:男性
職業:コンビニ・店主
スキル:店舗増設、店舗収納、店舗展開、言語理解、通貨変換
————
「若ッ!? 四十代の俺が二十歳に!? しかも店主って何!?」
混乱していると、AIが続ける。
【特別特典として、雑誌に載っているものから“なんでも一つ”プレゼントいたします】
「……なんでも?」
【はい。なんでも一つです】
俺は雑誌を開き直し、最後のページを見て涙した。
「これ……選んでいいのか?」
長年の夢だったキャンピングカー。
その写真を指差す。
【一度選ぶと戻せません。宜しいですか?】
「ああ……お願いします!」
【スキル認証……成功】
《スキル──魔導駆動式キャンピングカーの登録完了》
ステータス画面が目の前に展開される。
————
【魔導駆動式キャンピングカー】
《内装・外装》
・異空間製冷蔵庫(コンセント不要)
・魔導式エアコン(室温自動安定)
・魔導式調理器具(魔石内蔵)
・魔導式コンロ(無限使用)
・ふかふかベッド(マスター権限で人数分生成)
・車内異空間仕様(広さ可変)
・魔力回路式エンジン(外気魔素で駆動)
・防御結界
————
「……ロマンの塊じゃん」
【すぐ使用可能ですが、どうしますか?】
「今はいい。森で傷つけたくないし」
【了解。では案内型AIは終了します。よい異世界ライフを】
声が消え、森の静寂が戻る。
◇ ◇ ◇
──だが、その静寂は長く続かなかった。
「きゃああああっ!!」
悲鳴。
近い。
今までの俺なら「誰かが助けるだろ」と見て見ぬふりをしたかもしれない。
だが、今は違う。
「……助けられるなら、助けたい」
気づけば俺は全速力で走り出していた。




