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西の魔王とは

 目が覚めるとすぐ真横でエルが寝転げているから心底驚いたのは記憶に新しい。

 その後エルも俺が目を覚ましたのに気づいたのか、のっそりと起き上がる。


「おはよう、リュウヤ」

「お、おはよう…」


 自慢じゃないしただの自虐でしかないが俺は朝が弱い方であると思っている。

 呂律はまともに回らないし思考も纏まらない。

 瞼が重く、片目を開けるのに数十秒くらいかかる。

 そしてやっとこさ右目を開けることに成功した。


「ちょ、ちょっと…エル」


 そこに飛び込んできたのはかわいらしいピンク色の髪と、それと同じ色のパンツ。

 エルの着ている黒色のワンピースが少し捲れて、それが見えてしまう。


「あっ…ご、ごめん」

「い、いや…」


 赤くなるエルを見ながら、照れる様子もかわいらしいなあ、と感じた。







「俺はアホカスまぬけだ…」


 それから数十分。

 外はすっかり夕暮れ時で、俺は今自分の部屋として割り当てられた部屋にいる。

 魔王軍参謀だからと言うよくわからない理由でエルの部屋と同じくらい豪華な部屋にしてもらったが…逆に落ち着かない。

 そんな俺は…絶賛さっきまでの自分に絶望していた。

 ほんの僅かにでも小さい少女。妹くらいの年頃をした女の子に一ミクロンでも劣情を抱くなんて、あの勇者となんら変わりないではないか。

 なんて自己嫌悪に陥ってると、部屋の扉がこんこんとノックされる。


「リュウヤ、ちょっといい?」

「あ、はい」


 扉の向こうから聞こえてきたのはエルの声。

 丁度エルの事を考えていたから返事が硬くなってしまう。


 部屋に入って来たエルは、ベッドに腰掛けていた俺の隣に座ると、


「…リュウヤって、どうしてあんなに強いの?」


 と聞かれた。


「ああ…ちょっと特別な魔法が使えるからかな」


 毒魔法(ポイズンマジック)はなんとなくだがぶっ壊れ能力の気がする。

 あと俺の身体能力も圧倒的に上がっている気がするが、それは知らない。


「それと、気になってたんだけど。なんでさっきは襲われてたの?」

「それはその、長くなるけど…」


 つつらつつらとエルは話を始める。






 西の魔王の領域は、北、東、南の魔王の領域に比べ、大きな面積を所持し、その中央に存在する泡壁の核がなんかすごいバリアを貼っているらしくて、それのお蔭で滅多なことじゃ侵略されないらしい。

 東西南北に魔王が居る。この時点でもうよくわかんなくなって着いていけそうにないと感じたが、話は続く。

 その泡壁の核は、定期的に魔力をチャージしないと機能を停止してしまうらしい。

 また、それに近づくことが出来るのは非常に多くの魔力を保持した者か、西の魔王の血筋を引くものだけらしい。

 それで、四天王を護衛に付け、しかしながら彼らはあまり近づくことはできないので、一人でそこに行こうとしていたら勇者に絡まれた、と。


「そうだったのか」

「うん」


 と言うか、勇者はその泡壁の核? だったっけ? に四天王は無理だったのにそれに近づけるくらい強かったのか。幼女趣味の癖にやるなあ。


「それで、私達は…人間と仲良くしたいの」


 更に聞けば、魔王と言ってもその実は地方の魔族を統治する者の事を指すらしく、西の魔王だったら西の地方の魔族を従えているらしい。それ+幾ばかの亜人、龍族等もらしい。

 魔族と言うのは羽と角と尻尾のある人、亜人は獣っぽい人間だと説明された。それはとどのつまり人間ではないのでは?

 そして、西の魔族の領域は人数こそ多いものの、平和主義を掲げる統治で、今まで侵略なんてしたことがないとか。

 ただ東、南の魔王があまりにも積極的に人間界に侵略活動を行うせいで、西の魔王も狂暴な魔王なのではないかと勘違いされている…と言うのがエルの話だった。


「だから、参謀と言っても、特にやることはないし、ずっと私の近くに居てくれたらそれだけでいいの」


 なるほど。

 どうやら、魔王軍参謀と言うのはニートを格好良く言い換えただけの役職である可能性が高いようだ。




 四天王の面々は何やら忙しいらしく、滅多に魔王城には戻ってこないとか。

 巨大な食卓で、二人っきりで俺の作ったご飯を食べるのはなんとも不思議な感覚だ。


「俺も魔王軍参謀になった訳だし、魔王軍の為に何かしら活動したいな」

「そんな、別にいいの。貴方は居てくれるだけで」


 いや~、だって、この城料理人居ないじゃん。

 俺とエルの分だけだったら俺が作れるんだけど、この城数百人くらい在駐してるらしいし、彼ら全員分作るのは無理。

 となると彼らの食環境は終わってしまう訳で。

 それはあんまりかなあと。あと俺も異世界のプロの料理食べたい。

 それで、魔王軍参謀の仕事をすると言うのは建前で(ただ飯ぐらいになるのが気まずいと言うのもあるけど)、ホントはどこかで料理人見つけて雇えないかな~ってちょっと考えたのだ。


「とりえあず、明日は泡…なんだっけ?」

「泡壁の核」

「そうそれの修理? に向かおう。俺が護衛するよ」

「…分かった」


 今後の俺の目的が決まった。

 名づけるなら目指せ魔王城の食生活改善! である。

 それに、多分、毒魔法(ポイズンマジック)以外の魔法もあると思うから、それも使ってみたい。

 俺はまだ毒魔法(ポイズンマジック)頼みの戦闘経験しかないし、なんとか四天王や勇者に勝ったけれど、もっと強い奴はたくさんいる筈だからな。自衛手段は多ければ多いほどいいに決まってる。


 更にエルに話を聞いた所、今日俺達を襲ってきた勇者は人間界でも最も強力な勇者だったらしい。

 俺もう強くならなくていいか…。

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ヒジョーにありがとうございますです土下座

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