ラッキースケベとはいえ本当にラッキーであるかは
「さて、話しを聞こうか」
部屋着に着替えた俺はクラニーちゃんに尋ねた。
「どうしてここにいる?鍵はどうした、かかってたはずだろう。
そもそも何故俺の家を知っているんだ」
「どーでもいーデスが、お前その格好はなんデスか?
ちょーダセーデス」
「うるさいな!俺は家にいる時この格好が一番落ち着くんだ。
ダサいとか関係ないだろ、本当なら誰にも見られないはずなんだから」
「それもそうデスね。よし、エシリア!頼むデス!!」
丸投げしやがった、大丈夫デスか。
「はい、クラニー王女」
「……もういいです、今に始まったこっちゃねーデス」
「ありがとうございます。では、椎名様。
この星を目標に定めてから貴方の素行を調査させて頂きました。
生活環境が主なものでしたが。
現在両親共に海外赴任中で一人暮らしとのこと、大変羨ましく思います」
「ちょっと調べただけでわかるのそんなの」
仮にも一国、いや一星の王女なのだからそれくらい出来ても当然か。
当然なのか?プライバシー保護はどこに行った。
「お褒めに預かり光栄です。
続けさせて頂くと、この家には空き部屋も現在あり
私と王女が住むには最適かと」
「かと、じゃない。勝手に決めるな。
そもそも俺は了承してないだろ、ここは俺の城だ。
誰にも邪魔されたくないんだ、わかるだろ?」
「はい、ですがマザーのこともありますし
飛び出すかのような勢いのワガママ、クラニー王女もいらっしゃいます」
この人ちゃんと王女様に敬意を払ったりしているのだろうか。
「ですので、大変恐縮ですがクラニー王女のことも考慮すると
私も含めてであれば同居してしまうのが
お互いを最もよく知る効率的なやり方であると判断致しました」
「ふぅ……。
だから俺の意志!俺の意志ってあるよね!?」
「ご心配無く、ご両親には既に許可を頂いております」
「どういう根回しだよ!」
「仮にも一星の財力を舐めないでくださいませ。
素性を明かした上での交渉であれば存外スムーズに進むものです」
「お金で買ったの!?」
いくら何でもそうでもないと許可なんてしないか。
逆に言えばこの星に滞在出来るほどクリーンな異星人は
地球人よりもよほど信用できるということでもある。
あとはまぁ、俺の事情とかあるのに……もっとあるだろきっと。
「はい、ご両親が大変喜ばれておられたので
私としても恐悦至極でございます」
「でもさ、年頃の王女様と一緒に暮らすとか認めていいわけ?
仮に俺がよくても王女様の意志だってあるだろ?
なぁクラニー王女はこんな下民と同居するのって嫌じゃないの?」
俺はわざとらしくクラニー王女に問いかけた。
「心配することねーデス!私は器が大きいデス!
お前程度が私のプライベートエリアにいたところで気にしねーデス!」
気にしない人だった、どうなのそれ。
プライベートエリアというのも言葉が間違っている気がする。
パーソナルスペースじゃなかったっけ。
「私としましても、椎名様のご意志は尊重したいところなのですが
ご両親は既に銭を受け取りましたし、
もう部屋のセッティングまで終わったのに今更帰れと言われても。チラッ」
「銭て、準備いいね!嘘過ぎない!?ホントに受け取っちゃってるのあの人達!?」
「証拠が必要とあれば、お見せしますが」
「見せられても同じだろ、わかんねーよそんなの」
これだけ根回し出来る人が俺が看破出来る程度の嘘を用意しているとは思えない。
「でも俺も男だし、どうする?
クラニー王女みたいな可愛い子と同居するとなると
色々問題が起こったりするかもよ?」
実際問題パーソナルスペースがこれだけ限定されると
男女の様々な問題が起こらないわけがない。
トイレとかさ。
「な、な!?可愛い?!テメー何言ってるデス!?」
え、何このリアクション可愛い。
「あぁ、可愛いだろ。顔も小さいし整ってる。
気品もあるし、王女と言われても納得するよ」
言葉に嘘はない。
人間的な魅力があるかと言われると今はわからないけれど。
「そそそ、そんなこと初めて言われたデス……。
お褒めに預かり光栄……デス……」
耳まで赤くなっていますが、王女ってそんなに褒められないものなの?
イメージだと接待やら何やらで過剰に持ち上げられるものかと。
「ま、まぁ言葉に嘘は無いが。
そういうのも考えないとだし、逆に面倒かもってさ。
どうなのかな」
「おおお、おま、お前は嫌なんデスか?
その……同居……ワタシと……」
「私を忘れていただいては困りますが」
「そ、そうでした……」
「いや、俺が嫌というかそちらがさ。
あぁもう面倒だ、ここでいくら問答しても変わらないだろ?
どちらにせよ今日行く当ても無いのに放り出すわけにもいかないしさ。
今日だけだったとしても泊まればいいよもう」
「そ、そうデスか!話のわかるヤツデス!!」
「有難う御座います」
すぐわかるくらい明るくなった二人の顔を見ると悪い気はしない。
特にクラニーちゃんは顕著だ、いちいち反応が良いなこの子。
「では、私共との同居もかろうじて了承して頂けるということで?」
「あぁもう、そもそも両親が承諾したのなら俺に何か言う権利も無いさ。
ただ年頃の王女様は気をつけてくれよ。不可抗力をこちらの責任にされても困るからな」
「そのようなことであれば問題ありません。
そもそも、いえこれは後にしておきましょうか」
「なんだ?何かあるのか?そう言えば、ゆずに何て言うかな」
「何て、とは?」
「いや、一応隣家で幼馴染だし俺が王女様と同居なんて知ったら騒ぎそうだしさ。
かといって黙ってるのも何かやましいことが。
いややましいことがあったとしても別に関係無い気はするんだがどうもな」
「であれば、全く問題は無いと思われます」
「え?何でだよ」
「相変わらずえぇケツや……柔軟剤つこてんねやろ……?」
すぐ後ろにゆずが恍惚な表情を浮かべて立っていた。
「うおおおお!!?!?ゆず!!??何でここにいんの!?」
「さっきからず~っと居ましたが、聞いてましたがこの私ですが」
「嘘でしょ!?どういうステルスだよ!!尻触ってんの何で!?」
「あ、ごめん。ついすべすべモチモチだったもので」
「お前股間握るのは恥ずかしいのに何で尻は平気なの!?」
「棒と割れ目は違うぜ?」
「そういうことじゃねぇだろ?!」
「というわけで、新宮様からも特に反対意見は無いようですので。
というか、本当に気づいていらっしゃらなかったのですね」
「お前がここに来てからずーっとケツ触ってたデス」
「ホントに!?何か言ってよ?!何で誰もがノーリアクションなの!?」
「いやぁ、自然すぎる私?ナチュラルリビング?困っちゃうね!てへぺろ」
「手を離してくれないかな!?」
「あぁごめん、今晩カレーでいい?」
「何でキッチン把握してんの!?謎すぎないお前!?」
「幼馴染の嗜み(スキル)だよ、当然でしょ?」
「あ、私はカレーの隠し味にヨーグルトを入れる派なんですが
新宮さんのご家庭ではどういった味付けをされてるんですか?」
「委員長!?」
いつの間にか委員長がクラニーちゃんの隣に座っていた。
「ゆずはともかく、どうして!?」
「どうしてと聞かれても、子宮に導かれるままに歩いていたら
たまたま椎名君の家があったから新宮さんと一緒にピッキングでお邪魔しただけです」
「子宮に導かれるって何?!
八代さんの内臓って語りかけてくんの!?」
「新宮さんがどうしてもというから私としても断れなくて、すみません」
「そっからいたんだったね!
君たちの隠密スキル凄すぎない!?普通気づくよ!?」
「気づかない椎名君がどうかしてるとと思うんですが
私も尻を撫でさせてもらっていいですか?」
八代さんが自然な流れで発情して俺のジッパーを下ろそうとする。
「八代さん発情しないで!!これ以上場を乱さないで!」
「そうデス、ずっといたデス。
何でツッコまないのか不思議でしょーがなかったデス。
不法侵入に寛容な家主なんて嫌デス」
「それは君たちも一緒だよね!?」
「じゃ~カレー作っちゃいますね~。
八代さんはお米準備してくれちゃわないかな?」
「はい、お手伝いしますね」
何故何事もなかったかのように皆で食卓を囲む流れに。
「何で皆この状況で普通に出来るんだよ……。
もういい、わかったよもう……俺が黙れば済む話だよねこれ」
「大丈夫デス?ちょっと休むデスか?」
「そうするよ、出来上がったら呼んでくれ。
あれでもゆずは結構料理が上手だから、期待してていいぞ。
それとお前らも原因の一つなんだから無関係を装うな」
文句を言う気力も無くなった俺は自室に戻った。
あの状況で喚いたところで結局全てを受け入れざるを得なくなるのだから
それならばこうやって自室に戻ってくつろいでいた方がいい。
しかしせっかく一人暮らしを満喫していたというのに突然大変なことになったものだ。
いや、考えてみると両親には既に根回しが行っていたようだから
突然こうなったと感じているのは俺だけなのか。
それにしても一体いくら貰ったらこんなことを了承出来るんだ?
今すぐに連絡していくらか請求してやらないと割に合わないだろう、絶対そうする。
考えて実行に移すよりも早くドアをノックする音が聞こえた。
「早いな」
もう出来上がったのか?
ドアを開けるとそこには
「椎名様、エシリアでございます。
少々お時間を頂戴しても宜しいでしょうか?」
意外なことに、エシリアさんが居た。