ラッキースケベと大体集合
「しかしあれだな」
フクロウはこう切り出した。
「クラ嬢は、随分刺激の強いパンツを履いているな」
「はぁ!?なんデス!?」
「己れは影の中に居たからな、ハッハッ、見えてしまった」
「……影から自在に出入り出来るって一体どういう理屈なのかさっぱりわからなすぎて
文句を言う気も失せるデス。
それからワタシのはセクシーって言うので覚えとけデス」
「ふむ……そうか。礼儀を欠いてしまったな、不可抗力とはいえ済まなかった」
「いや、そんな正式に謝らなくてもいいんデスが……」
「許してくれ!悪気は無かったのだ!」
「こいつぜってーおちょくってんデス!!ちけーデスし!!」
「フクロウは真面目にグイグイいくタイプなんだよ」
「ハッハーッ!ワカはよくわかってくれているな!!
いや済まん!このとおり!」
「はぁ、最初から別になんとも思ってねぇデス。
ミニスカート履いてりゃ見られることだってあんデスから、それくらいどうでもいいデス」
「流石に星の王女ともなれば器がでかいものだな!」
「……え?」
「あれ、フクロウお前知ってるんだっけ?」
「いつ知ったんだろねぇ~」
ひょいとゆずも疑問を呈した。
ともあれ、フクロウが知るタイミングは無かったはずである。
「いやなに、己れは世界を回っていただろう?
その時にワカの両親と会ってな、色々聞いただけだ。
思わせぶりなことを言って悪かったが、それだけだよ」
俺の両親とはいえば、当然同居を許諾した人間であり事情も把握しているはずだ。
つまり世界を旅してきたついでに会ってきたというわけだろう。
いや、逆か。
「あぁそうか、お前にとっては企画自体はオマケだもんな」
「だな、当然世界を回る機会などそうあるものではないから感謝はしているが
写真を撮ること自体は二の次ではある。
というか、ワカも一緒に来ようと思えば来れただろうに」
「流石に俺には無理だろうよ」
世界で最も美しい顔100選に選ばれるなんて殆ど全ての人にとっては無理な話だ。
「で、どうだった?」
「何も無かったな、聞いてはいたが実際に見るとやはり思うところはあるよ。
ワカの両親もそういう仕事をしているのだろ?」
「復興支援というか、まぁそうだな。そこでしか出来ないって聞いてるよ。
具体的に何をしているのかまではわからないけれど」
巨大隕石の衝突、エネルギーの膨張と大爆発で裂けた次元、上下に別れた大地。
そこから判明した並行世界や
今まで信じられてきた物理法則を超越した結果を出す人々の存在など
ありとあらゆる常識が覆った時代があったらしい。
ちょうどこのフクロウのように、特異な体質を持つもの(グレコもそれにあたる)
が現れたのも同時期だそうだが、今となってはそれが『普通』になってしまった。
クラニーちゃん達が現れた時も同様に、俺がそれほど大きく驚かなかったのも
今という時代による影響が実のところ大きい。(そもそも担任が平行世界の住人である)
「しかし、今は平和なのだから何も心配はいるまい」
「歴史を知ることが重要とはいえ、だからといって今が大事なことに変わりはないからな」
「あいつらホモなんじゃねぇデス?」
「いやぁ、昔からあんなんだよぉ」
「男同士に友情は芽生えねぇとどっかで読んだ気がするデス」
「それ、男女の友情に関する議論じゃないかなぁ~」
眼前を歩く二人から不穏な会話が聞こえたが、俺には聞こえなかった、何も。
「やぁやぁ!みんなお揃いで!!」
しばらくするとグレコが手を振りながら俺たちに合流する形になった。
しかし彼女の家からであれば普通には鉢合わせにはならないはずだ。
「グレコ、どうしてこっちから?っていうかクラニーちゃんは大丈夫なの?」
「ワタシはもう気づいた瞬間からシャットアウトデス……完全には無理デスが」
「ハッハーッ!それが噂に聞く人の魂情報を嗅覚で判別するというものか。
であればなるほど、こいつの匂いはさぞキツかろう!」
正確には現在のその人が抱く感情、例えば怒った時に出すフェロモンを分別し
ある程度であれば考えも読めるとのことだ。(以前嗅覚を自慢された)
「テメェフクロウ、何言ってんの?ウチとクラッちは超仲良しなんですけど?」
「ほぅ……それは奇っ怪なこともあるものだな!
お前、昔から快楽で落とせない女性には全く好かれないタチであろうに!」
「そんなこと無いんですけどー、普通に友達いるんですけどぉー!
相変わらず変な服着ちゃってさ、なにそれ和服?道着?武道家気取りですかぁ~?」
「心身をいつでも鍛えるためにな!理解されなくて残念至極!」
「おい、こいつら何でこんな調子なんデス?」
「仲良しなんだよぉ~」
「フクロウはモテる上に幼馴染だからだな」
結局は嫉妬というやつなのだと思う、フクロウは意に介して無さそうではあるが
実のところグレコを誰より理解しているのもフクロウという男なのだ。
「そのつもりなら今回こそ屈服させてやんよ?ん?」
「面白いな!今回も己れの精神力を見せてやろう!さぁ来い!」
おぉっと急展開だ。
「じゃあ、俺達はちょっと離れようか」
「ん?なんデス急に、見た目よりは険悪という匂いでもねぇんデスが」
「まぁまぁ、グレコちゃんが本気出すから危ないよぉ~」
俺達3人が少し離れたのを見計らって、グレコがフクロウの手を握る。
「あれから結構鍛えてっかんね、いっくぞこのやろ~!
全力の『吸精注入』を喰らえよぉぉぉ~!!」
その瞬間、グレコが発光し大量のエネルギーがフクロウに対して注がれた。
「ぬぅぅぅ!!!」
手を握りあった二人からバチバチと激しいナニカが放出される。
フクロウは中腰で耐え、グレコはそれに対し前のめりで応戦する形だ。
空気が激しく振動しこちらに伝わってくる。
「ほら、近くにいたら巻き添え喰らうから」
「なんデス、あれ」
「前にグレコのこと、サキュバスがどうとか言ったろ。アレだよアレ。
正確には任意の相手から吸収した精力を任意の対象に注ぎ込む、らしい。」
「本来的には自分の持つ『何か』を譲渡出来るんだって~、
だから正確に言うとちょっと違うんだよねぇ」
「んー、だからつまり、対象が男の場合は」
「あ、感度3000倍デス!?」
「……それが合ってるのかはわからんけどさ」
真剣な二人の傍ら、3人でしばらく見守っていた。
本人たちは至って真剣だ、真剣だと思う。
「はぁ……はぁ、くっそ、終わり……もう出ない、なんだけど~こいつ……」
「今回も俺の勝ちということかな!ハッハー残念、また来るが良いだろうよ!」
「ちっきしょ、何でウチの『譲渡』に応えてねぇのこいつ……。
そもそも効かないシーナならともかくさぁ……」
全力で精を放出したグレコがその場にへたり込み、
それに対して清々しい顔のフクロウが手を差し伸べた。
「こういう時もあるということだな、ハッハー。
しかしグレコ、今回は己れも流石に参るかと思ったよ、よく頑張ったな!」
「うっせ、次は屈服させてやるし……」
その手を取ってグレコが立ち上がる、先程と打って変わりこちらもさっぱりとした顔だ。
「昔からこれ繰り返してんだよ、だから仲良いのアイツラ」
「グレコちゃん、どうしてフクロウ君だけ屈服させたいんだろうねぇ~」
くすくすとゆずが笑いながら言った。
「あいつにはあいつの事情があるんだろうな」
「別に、そもそも嫌ってねぇデスし理解もしてるデス。ワタシだって同じデス」
成程、人と異なる特性を持つことで時に苦労するのは誰もが同じなのだろう。
「はぁ~もう、ところでシーナ達。エシリアさんは?」
「え?だからこっちまでわざわざ来たの?」
「そりゃそうっしょ、別にこいつとの勝負なら学園でも出来っしね。
そもそも今日って休みじゃん?面白いもんがあるからって言われたんだけど
ウチはそもあんま知んねーから謎なんだけどね」
「んー、フクロウが帰ってきたからその関係ってことかな」
「それではここからは私が説明しましょう」
突如空間が裂け、その中からスーツ姿のエシリアさんが出てきた。
もう慣れたなこういうの。
「この度皆様を、あぁ椎名様達に関しては学園が休みであることさえ伏せたままで
集合していただいたのは他でもありません。私が以前より注力して作成していたゲームが完成したからです」
「相変わらず意味のない嘘をつくやつデス……普通に集めらんねぇんデスかこのおんガフッ」
「文句ばかり言う子にはお仕置きです」
「身内に切らレルとは……」
暴君の拳がクラニーちゃんに突き刺さった。
いくら肉体にダメージは無くとも精神は大丈夫なのだろうか。
「実を言うと、己れが帰国後早速合流したのも指示でな」
「えぇ、椎名様のご友人とのことですから。それに含めて土喰様もですね」
「なんだーウチついでなんだー」
「いえ、そういうことではなく。つまり!私が頑張って作ったゲームが完成したので
皆様方にテストプレイヤーとして楽しんで頂こう、と。
端的に申し上げればそういうことでございます」
なんだか随分イキイキしている。
「んあ?なんかよくわかんねーけどこの人すげー強引じゃね?
でもすっげー美人だしー……さっき出したばっかだからちょっと吸わせて欲しいかもー」
「はいバリアーです」
「うえっ!なんか壁がある!なにこれ不思議ー」
「土喰様に精力を吸収されては活動に支障をきたす恐れがありますので、
近づくほど0に近づく空間を間に設けさせていただきました」
「なんでもありくね、この人。マジ?」
「最近慣れてたけどだいぶ反則なんだよな」
「で、ですね。説明させて頂きますと……つまり、完全没入型体感RPG、
触感、視覚、嗅覚は勿論皆様の脳内データを抽出し限りなく現実に近くそれでいて
非現実な空間を堪能して頂けるものとなっております」
「もう俺達の意見を聞く気は無いだろおい」
「えぇ……やらないんですか?」
「俺がおかしいの!?」
「あぁ、あー、それってオメーがあの脳波測定用のおもちゃを改造してたやつデス?」
「その通りです、流石王女様。頭脳明晰容姿端麗、私尊敬」
「さっきオメーに腹どつかれたんデスが」
「まぁ、先程そこの王女様が説明した通りです。
当然安心安全は保証いたしますし、何よりこのゲーム内では
一日過ごしても現実世界では1秒程度しか経ちません、その代わり脳の疲労がエグいのですが
その辺りのケアはきちんと行いますので全く心配する必要はございません」
「脳の疲労がエグいというだけで怖いんだけどさぁ」
「しかしどういうゲームかわからんが面白そうではあるな」
「没入型だったら現実と変わらないんじゃぁ~?よくわからないかなぁ。
シーナがやるなら~」
「ウチはどっちでもいいよ」
「では決定ですね」
「ワタシがまだ喋ってねぇデス!!」
「これがお約束ですね」
ひとまず(脳内から抽出やら疲労がエグいやら恐ろしいワードはあったものの)
体験するだけしてみようという結論になった危機感が無い人々であった。




