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ラッキースケベと正装のクイコミ

重い、体が重い、呼吸が苦しい。

体に鉛が張り付いているかのような気だるさと朝の光を感じながら目を覚ます。

顔の両横には肌色、胸部には赤い線、股間に圧迫感。

窓は相変わらず割れていて鍵も前回、やたらと布団の中が熱いのは俺以外に二人いるから。

「起きてるなら出て行け、ほら、ゆずも起きろ!!」

思いっきり眼前の物体を叩くと気持ちの良い音色、お高い楽器ですね。

「あと……3時間……」

「勿体ねぇデス!!ちょ、ご無体な!!」

「暑いしもう、あぁ、ほらほら俺は起きるんだからもう」

二人を強引にどかし、そもそも強引にここに居るのだからそんな気にするのもどうかという話なのだが。

「んぅ……ね、眠い……」

「昨夜は頑張ったデスから、ゆずはもうしばらく寝かしといてやるデス」

「それはいいけど君らのその格好は一体何ナノ」

サラシ、ハッピ、ふんどし姿の二人であった。

「何とは何デス、応援するときの正装だと教わったデス」

「そんな文化は無いんじゃないかと思うんだけど、一応誰から教わったわけ?」

「知らんデス、ゆずは八代とかいう奴に聞いたとか言ってたデス」

「わけがわからないけど、あの人は結構いつもわけがわからない気がするね。

理解の外側にいる人間だよ本当にね」

「まぁ~私もそう聞いちゃ黙ってられないからね~、昨晩頑張って二人分こしらえたわけさ~」

いつの間にか目が覚めてくれたようで、寝ぼけ眼をこすりながらゆずが話した。

「『応援といえば、男のロマン、はみ出す尻肉、ゆれるヒップ、弾ける太鼓~~』とかなんとか。

途中から何言ってるかよくわかんなかったんだけどね」

「それが正しい人のあり方だと思う、ヒップと尻肉って同じだろうし。

たまにはゆず達も彼女の発作を止めてやろうとしてくれないかな」

「人が一生懸命なモノを止めるなんて無粋な真似は許せねぇデス」

「どうしてクラニーちゃんは変なとこ真面目なのかな」

真面目にやるならふざけた格好をどうにかしてほしい、そもそも。

「応援って、大げさな。何する気なの?」

「何って、ワタシらは見てるだけデスがそれがどうかしたデスか?」

「頑張ったらご褒美だよ~シーナ」

「うーん、とりあえず着替えるからこの部屋から出ていって貰えると嬉しいよ」

面倒になってきたので、彼女らを部屋から出るように促した。


 「待つデス、その前にオメー、ちょっと立つデス」

「は?何言ってんの」

「もう一度、後生デスから、拝んでおきたいデス」

そういうことか、そうであろうとなかろうとどうでもいいんだけれど。

「なんだかんだ言いながらシーナもバキバキになっちゃってるの~私知ってる~」

「じゃあ立つけどさぁ……文句言うなよ」

俺は寝るとき下はボクサーパンツ、上は結構お高いブランドのアンダーウェアを着ているので

困ったときの対処法であるパンツに挟んでTシャツで隠すことも難しい。

「なんか、そうしてるとお腹に腫瘍が出来たみたいだね」

「これが学園四指に入るという……こんなもん、内臓壊れるんじゃねーデスか?」

「うるせぇな!文句言うなっつっだろーが!!

ゆずも、なんかだいぶ周りに毒されてきてる気がする!!」

「え~、私だってなんというか、環境の変化に合わせて本妻の座を守っていこうかと~」

「誰が本妻か、もうこれ何の罰なの?恥ずかしいし。

言っとくけどさぁ、最近君らほんとになんつーか、俺にだって……性欲はあるんだからね!」

我ながら男前に決まった気がするが、目下の彼女らの反応を見ると間違ったことを言ってしまったらしい。

「性欲だって~!!キャー、奥さん、私達どうなっちゃうのかな!!」

「ワタシとしてはそれはそれで、本来の目的が果たせるような気がするんデスが……あれ??」

「そう言えば当初はそんなことも言ってた気がするね~」

「やかましい、もうつまみ出すからな!」

ゆずとクラニーちゃんの取っ手を持って外に投げた。

「そういう持ち方するものじゃないのに~」

「自重で股間が割れちまうデス」

「もう割れてるでしょ~!」

「それもそうデス!」

どっ。

俺は静かにドアを閉めた。


 「ところでさ」

朝の一騒動も落ち着いたところでエシリアさんを除く一同に俺は声をかけた。

「成り行きで鍛えてもらうみたいな話になったんだけど、具体的に何すればいいのかな?」

そんなに広い場所があるわけでも、と思ったがそういう問題はわけわからん技術でどうにかなるのか。

とはいえ、実戦で殴り合うとかそういうことでもないだろうし日常的なトレーニングは

既に何度も見ているはずなので今更ダメ出しがあるというわけでもないはずだ。

「実戦形式でぶん殴り合ってもらう予定デス、心配無用!武器有り!!」

殴り合いだった。

「ちっとも心配の種が減らないどころか増えたよそれ」

「まぁ、その辺りは行ってみてやってみてのお楽しみにしとくデス!

終わった後感謝の涙を流すこと間違いなし!!我が計画に狂いはナシデス!!」

「何でそんなに自分に自信を持てるのか俺は羨ましくて仕方がない」

「オメーは自信が無さすぎんデス、今日のとこの目標はソレデス」

「んー、自信を持つための努力じゃないかな」

「その方向性ってやつがあんです、ソレ以前の問題デス」

「後は私にお任せ頂いて宜しいでしょうか」

「もうこの突然さ加減にも慣れてきたのが怖いね、あぁ」

いつでもどこでも神出鬼没、この人のことも何気にわからないことが多い。

それが聞いてもいいことなのかどうかも含めてのことだ。


 「じゃあ私達は見てるだけだけど頑張ってね~」

「そのためのこの姿デス!!」

「それはどうかと思うけど、流石にどうやってんのか気になるなこれ」

「我々の技術の結晶ですから、存分に堪能頂ければ宜しいかと」

ついて行った先のドアを抜けると、一面の青空と際限の無い緑の空間が広がっていた。

「地面は柔らかく設定しておりますし、圧迫感の無いよう空も作ってみました」

みました、の度合いが俺のそれとはレベルが違う。

踏んだ感じ陸上競技場のような弾力の地面、空に風が気持ちよくこのまま昼寝でもしたくなる。

「こういう空間が作れるならバケーションも苦労しないだろうなー」

大きく深呼吸してみると気持ちの良い風が吹き抜ける、風も起こすことが出来るのか。

風呂場にしてもそうだが、この技術は訓練なんかより平和的な用途がベターだと思う。

少なくとも

「武器ありの殴り合いをやってもらう、とかバイオレンスなこと言ってたけどどうなの?」

「そうですね、多少語弊はあります。

まず第一に殴り合いにはならないかと思います、第二に武器を持つのは椎名様のみです。

私と五分な条件でやったとすると、実力差もわかりにくいかと」

「俺が得意なモノを持ってようやく差がわかる程、俺は相手にならないってことね」

「それでも手加減はします」

「ちょいちょい、シーナ、こっちこっち」

クラニーちゃんが背伸びをして俺の方を叩く。

「オメー、ワタシの護衛がエシリア一人であるという意味をよく考えるといいデス」

「それは少なすぎるんじゃないかとは思ってたけど、そういう意味?」

「そういう意味デス、十二分な働きを見せるからこそ、デス。

そもそも本来は5人体制でいつ何が起こっても対処出来るようにする予定だったデス。

それをこいつは実力を持ってしてねじ伏せやがったデス、あの時は鬼かコイツと思ったデス」

「それって、クラニーちゃんのためを思ってのことなんじゃないのやっぱ」

「あまり余計なことは言わないで下さいませ」

「だぁぁ!!イダダッ痛いデス!!そういう持ち方でこすり上げるんじゃねぇデス!!」

「違うかもしれない」

前後で持ち上げてゴシゴシしてる……怖いよう。

「では、懸念材料である私への攻撃についてですが」

「何も無かったかのように続けてるよ」

「うぅ……それについてはこれを見るデス……」

なにもない空間から木刀を取り出す、なにそれ初めて見るんだけど。

「この木刀エクスなんとかで、喰らえぃ!!」

「あぁ、クラニーちゃんが華麗に飛び上がって何かの技を繰り出そうとしてるんだよ!!」

急に解説を始めたゆずだった。

「飛天!オン・ソードスタイル!!日頃の恨みぃぃぃぃ!!!」

「これは幕末辺りになんやかんやあって有耶無耶になったと言われる伝説の~」

雑な解説をよそに木刀をエシリアさんに振り抜いた。

「ちょ……!!」

本当にやるな、と思ったが。

木刀は粉々に砕け散った、しかしエシリアさんには傷一つ無かった。

「流石です、常人ならば折れるか曲がるかのところを粉々にするとは」

「木刀は曲がらないけどな普通、にしても」

「これが私の体です、驚きましたか?

ハッキリ申し上げますとこの星に存在する重火器で私に傷を付けられるものは無いでしょう」

「流石の私もこれには驚きを隠せないよ~」

「マジなの?実は砂で作ったとかじゃなく?」

破片を拾って触ってみると本物の感触である、ということは。

「マジデス、こいつの体の強さは生まれついてハズレていたらしいデス」

「詳しいことは今はよいでしょう、見たほうが早いと考えましたので実践したまでです。

それより」

「ヴッ!!!」

「日頃の恨みとは聞き捨てなりません」

クラニーちゃんのみぞおちに中指が突き刺さった。

「ゴホッ、こういうことばっかしやがるからデス……グゥ……エゲ。

ダメージ無いのはわかってんデスから勘弁して下さいデスごめんなさい」

「思っきり護衛対象をやっちゃう人に任せていいのか、これ?」

もしかしてこういうことをするために他の人を排除したんじゃないだろうか。


 「この辺りで良いでしょう」

武器ありなので当然少し離れたところに二人で位置取った。

「それはいいんだけど、どこまで続いてるのこれ」

「貴方が想えば想うほど、可能性は無限です」

「そんな夢に溢れた言い方されても……」

「では始めましょうか」

「宜しくお願いします」

クラニーちゃん主催、雑な解説と観客兼任、二人の稽古が始まった。

「応援!応援デス!!間違えんじゃねぇデス!!」

「そうだよ~、そのための正装だよ~!!」

やりたかっただけだろうに。

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