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<歌う風のエルファ> ログホラalt  作者: 名無之直人
12/28

11.開戦の火蓋

 エルファは、ギルド会館の一室で、供贄一族の菫星きんじょうという若者と面会していた。


☆★☆


 アキバはともかくミナミではきなくさい噂が立ち始め、オーク達からの資金が積み上がった段階で、俺は交渉を持ちかけた。

「責任者の方とお話しできませんか?」

 口調こそ平穏に、ただしイズモ大祓神官のヤチホコにもらった書状を添えた事で、すんなりと、銀行窓口の係員は奥まった一室に案内してくれた。


 彼は青年と言って良い年齢に見えた。だが供贄一族は、ゲームシステムの銀行を通じた金貨やアイテム預け入れと引き出し、マーケットを通じたトレードまで管理。さらにプレイヤータウンの衛士達でさえ、彼らの一族から排出されていると昔のクエストで読んで覚えていた。

 つまり、大地人である筈だが、古来種とはまた違った意味で冒険者にとって無視し得ぬ存在。その代表がただの青年である筈も無いとは思っていた。


 イズモのヤチホコからの書状を読み終え、テーブルの上に差し戻してきた菫星は言った。

「これを、どう使われるつもりですか?」

「平和の為に、使うつもりです」

 菫星の美麗な眉の端がぴくりと動いた。

「その書状が書かれたのはおよそ一月前。ここまで伏して頂いた事は感謝します。しかし大地人の、特に貴族層にはだんだんと知れ渡っているようですが」

「でしょうね」

「この書状で、何か便宜を図れと?」

「それだけでは、弱かったでしょう」

 俺はポケットから金貨一枚を取り出してテーブルに置いた。

「先日、オークの親衛隊長から受け取った物です」

 菫星の眼差しは金貨からそらされず、その意味を受け止めているように見えた。

「最近私が銀行に積み上げた金貨も、オーク王達に集めてもらい、とある取引の対価として受け取った物です。それはこれからも継続的に支払われる事でしょう」

「何が、仰りたいのです?」

「不思議だったのです。<大災害>の前ならいざ知らず、<大災害>以降、私はあちこちを走り回り、そしていくらかの事を試し、確認しました。この世界の誰も金貨を造ってはいない。それはただ配られているだけ。詳しい仕組みは理解していませんが、供贄の手によって配られているとも推測できると結論しました」

「推理の飛躍では?」

「ミラルレイクの賢者辺りに協力を仰がなければ文献での裏付けは出来ませんが、そちらはいずれ他の誰かが達するでしょう。

 私は何も全体をどうこうしようという気はありません」

「しかし脅迫しようとはしている」

「これは古い友からの噂話ですけどね、絶対中立であるべき衛士が、ミナミでは何者かに籠絡されたとか・・・」

「証明されない限り、それは噂です」

「ではあなたはそれが真実でないとここで私に明言して下さいますか?」

 菫星は沈黙を選んだ。

「アキバなりミナミなりから、大地人勢力を取り込んで、他の冒険者達の上に立つ者達が出てくるだろう事は予測していました。

 より権力と財力を持つ者という事であれば、イコマに近いミナミの方に立った者こそがそこにより早く辿り着く事も。

 私はその誰かと最初から事を構えるつもりはありませんが、あちらはそう考えないでしょう。だから、ある協力をお願いしたいのです」

「融資のお話であれば、お受け出来ません。私達はただお預かりした物をお返ししているだけですから」

「遙かな古代よりの決まり(ルール)で、決して破れないものなのでしょうね」

「はい」

「しかし、私がお願いしたいのは融資ではありません」

「では何を?」

「差し止め、それが難しいなら、保留でしょうか」

「何を差し止め、何を・・・」

 言い掛けた途中で菫星は気付いた様だった。

「販売中止にするのは仕組み上難しいでしょう。ただ保留して頂けるだけでも非常に助かります。非常に」

 大事な事なので二回繰り返したが、意図は伝わったようだった。

「例え私がそうしたいと願ったとしても、太古からの約定は・・・」

「ええ。あなた方は課せられたルールを破れないでしょう。だから、保留、なんです」

「具体的には?」

 そこで俺は、彼らを縛る拘束に違反する訳ではない方策を説明し、時間はかかったが受け入れてもらった。金を融資してもらう訳でも分割(ローン)にしてもらう訳でもなく、本当に、ただ保留させておいてもらう事と、後はほんの一つの小さなお願いだけだった。


 交渉の席を立つ時、ふと思いついた事を俺は告げてみた。

「オークや蜥蜴人でさえも、知性と心を得た。であれば衛士とて同じです。冒険者を守るのではなく狩る為にその力を振るう者も出るかも知れませんね」

「・・・・・」

「憶測ですが、現実の出来事とならないよう願っています」

「それは、私とて」

 言い掛けて菫星は口をつぐんだが、俺はもう一つ言葉を置いてみた。

「もし供贄の一族に手に余る事でも、私ならお力になれるかも知れません。彼らが道を踏み外さぬようなすべを施せるかも」

「それは・・・」

「起こってしまってからでは遅いと、私は思います。あなたはその時誰かに頭を下げれば済むと?」

「・・・言葉が過ぎるのでは?」

「いえ。事実を述べているだけです。供贄は供贄を裁けぬでしょう?そんな法が既に用意されているとも思えない。だからあなた方は自分に課された掟は破れぬと言いつつ、他者に対して課せられた約束を破っても責任は取れぬと。そんな決まりは存在しないから。ですよね?」

「あなたはそれを証明出来るのですか?」

「いいえ、時が来れば証明するのはあなた方ですよ。供贄の一族の長よ。その時が訪れてさえ、あなた方はその重責を他者に押しつけようとするでしょう。あなた方に課せられた掟を口実にして」

「あなたは予言者のつもりなのですか?」

「いいえ。ただ予測しているだけです。流れをね。そしてあなたは興味無いでしょうけれど、この世界は永続的に存在する物ではありません。何か特別な目的の為に歪められ生み出された一時的な短命な物」

「何を、根拠に・・・」

「イズモの大祓の神官のヤチホコさんにイズモ騎士団が壊滅させられた時の様子を伺ってきました。彼らの大半は、得体の知れぬ者共に何かを囁かれただけで動きを止め、虹の泡となって消え去っていったと。

 もしこの世界が、その歴史が、まことに積み重なって来た物なのであれば、戯言を囁かれただけで、数百年の重き任務を果たしてきた英雄達が崩れ落ち消え去るとは、私には思えないのです」

「それは、供贄の一族にも当てはまると。その掟にもと、そう仰るのですか?」

「ご想像にお任せします。それではお願い事、お忘れ無きよう」

「我らを塵芥、この世界を夢幻と言っておきながら、ですか」

「この世界が実在しないとは言っていません。あなた達を信じていないとも。無限の存在なんてそもそもいない。私はあなたとその一族を信頼していますから」

「もし、何かあれば、その時は」

「ええ。どうぞお気軽に頼って下さい。その為の冒険者ですしね。ただしその時はまた別のお願いをさせて下さい」

 そうして俺は菫星という供贄一族の長との最初の会合を終え、合戦場へと向かった。



 向かった先は由布ユフ。天然の温泉が数多く点在する地にて、会合を設定しておいた。クルメのウォーロードとその配下の精鋭96人と、オーク王オーヴァとその配下の精鋭96人。オーク達の方がまだ平均で5以上レベルは高いが、それでもここ一ヶ月近くの地獄の特訓を別々の場所で耐え抜いてきた。

 互いの中央に置かれた席にアデルハイド侯爵とオーク王オーヴァが着くと、俺はその中間に立ち二人に酒を満たした杯を渡し、自分の杯にも酒を満たし、告げた。

「作戦はすでにお伝えした通り。冒険者達を含めた部隊は展開済み。後は開戦の狼煙をお二人が上げるだけです」

「仇敵と杯を交わす時が来ようとはな。いやこれも歌う風の勲の一部として語り継がれるとなれば、武人としてこの上ない誉れなのだろう」

「ふ、我らオークの足を引っ張らぬ事だな。殺されておらねば後から助けにも行ってやれよう」

「抜かせ。本番はまだ後日としても」

「ああ。この日にてこの地の東岸に巣くった蜥蜴人どもを撃滅する」

「勝利の祝宴は、共にきゃつ等の城で」

「応!」

 アデルハイドとオーヴァは杯を打ち付けあい、俺もそこに脇から杯を打ち合わせ、三人が杯を干すと、それぞれの軍団に前進を命じた。


 九州東岸に築かれた蜥蜴人の拠点は六つ。北からベップ、オオイタ、ウスキ、ツクミ。それらの中央奥の最も四国西岸に近いサガセキには城が築かれていた。アサシン達の事前偵察では、九州東岸におよそ一万五千、四国西岸には二万以上の蜥蜴人兵士が配置されていた。

 こちらの兵力は、アデルハイド候の兵士が五千、オーク兵が五万、冒険者達がおよそ五百。作戦立案時点から、ほぼ負けは無いと踏んでいた。

 ひっくり返されるとしたら、相手の隠し玉や親玉が出てくる事くらいしか無かったが、それはそれでその正体を掴めるだけでも今後の対策は立てられると割り切っていた。


 開始前の会合からきっかり二時間後、一番北のベップから、ウォーロード配下の兵士達が砦攻めを開始した。平均レベル50から55。相手の60から70よりはだいぶ低いが、フルレイド(24人)のレベル90と、100人以上のレベル50から70の冒険者達多数が介添えに入るのだ。心配はしていなかった。

 やがて砦から救援を求めるような狼煙が上がり、一つ南のオオイタに駐屯する三千の蜥蜴人兵士達の内、約二千が増援に出た。もちろん早馬はさらに南の支城にも走る。

 この二千の増援の先頭と最後尾に、レベル70から80の冒険者達のフルレイドが襲撃。彼らを取り囲もうと蜥蜴人達が前後に分かれ膨らんだ外側から、オーク王の軍勢一万が襲いかかった。

 レベルで引けを取らないオーク王の精鋭が蜥蜴人達を分断、すり減らしていく。自分達Windと<紅姫>から借りた1パーティーとで逆包囲を受けようとするのを範囲魔法やチャームや混乱などで阻害はしたが、戦いの主役は王達に譲った。

 陸側を完全に包囲された蜥蜴人達は海側に泳いで逃げようともしたが、ソーサラーの浮遊補助魔法のバフを受けていた冒険者達は海上でも多くの蜥蜴人兵士達を討ち取った。

 敵増援を打ち破る戦いは一時間もかからずに終わり、ベップの砦はそれより一時間遅れて落ちた。


 南のウスキとツクミの支城にも三千ずつの蜥蜴人兵士達が詰めていたが、それぞれ一万以上のオーク兵達を配して圧力をかけ、彼らの侵略根拠地となっているサガセキ半島の城の正面には最大の二万のオーク兵を展開。


 そうなれば当然、四国本土から大量の増援が送られる事は必定で、百人以上の蜥蜴人を乗せた大船がいくつも舳先を並べて短い海峡を渡り、随伴する様にその数倍の蜥蜴人達は泳いで渡ろうとした。

 本土からの増援が対岸まで過半の距離を過ぎた辺りで洋上に何体ものフェニックスが出現。軍船を次々に炎上させ蜥蜴人達を海に追い落としたところで、サモナー達が広範囲に雷撃の魔法を展開。感電させ行動不能にしたところにソーサラー達がフリージングライナーで海を凍らせて身動きを取れなくして、九州東岸にまで到達できたのは四国西岸を出立したほんの一部だった。

 泳ぎ戻れた蜥蜴人達を待っていたのは冒険者達。沙夜率いる<紅姫>のレギオンレイドを中心とした、ナカス有志の90レベルレギオン二つがその左右から蜥蜴人の桟橋と砦に残っていた軍勢に襲いかかり、海上の部隊と包囲網を構築。

 レギオンを構成する四つのフルレイドの一つを交代で休ませる車がかりで容赦無く蜥蜴人達を攻め立て、撃ち減らしていった。


 海上と本土の部隊の受けた損害の大きさに、ウスキとツクミの部隊もサガセキの本隊との合流を図った。半包囲状態から追撃にかかったオークの部隊を打ち破り突破しつつも損害を出し、ようやくサガセキの城前に集結した蜥蜴人の軍勢は、開戦前の一万五千からだいぶ減り、本土から合流できた者も含めて一万に足らなかった。


 四国本土側での戦いを圧倒した三つのレギオンレイドは海上の部隊と合流すると、サガセキの城に攻めかかり始め、それを合図に平野部に展開した人間とオークの軍勢対蜥蜴人の軍勢も戦端を開こうとしていた。


 オーク・大地人・冒険者連合軍は、中央右手にオーク王とその軍勢、中央左手にアデルハイド侯爵とその軍勢、冒険者達は要所要所に配置されていたが、Windの六人はオーク王とアデルハイド侯爵の中央前面、相手側前線軍指揮官の蜥蜴人の将の真正面だった。


「おいおい、あいつレイドランクのレベル77だぞ。いくらあんたがデッドコンテンツまみれだったとしても」

「その将や側近が騎乗してるのもレイドランクのレベル70越えのヒュージ・リザードだな。属性も毒や炎や氷やいろんなのが混じってて」

「魔術師や神官に見えるのもたくさんいますよね・・・」

「心配ないよ、ゴーレッド、グレン、ツクシさん。たぶん、圧勝しかしないから」

「ふふっ、見せてもらおうじゃないか。その自信の根拠をさ」

「なーに、単なる余興だよ。な、余興?」

余興(遊び)という意味か。気楽でいいな」

「一世一代の晴れ舞台っていうのかな。お前自身にとってのきらきらになるのは間違い無いぞ」

「・・・期待している」


 俺は今までに数え切れないくらいのレイドグループを組んできた。回数だけなら純粋なレイドギルドの方がずっと多いだろう。しかしレイドを構成するメンバーと職業クラスのバリエーションだけなら決してヒケは取らない自負があったが、今回のはその中でも極めつけだった。

 バード24人のみのフルレイドグループと、サモナー24人のみのフルレイドグループを合体させたダブルレイドグループ。

 バード達は俺を先頭に思い思いの楽器を手に、サモナー達はエア・エレメンタルを召還した状態で蜥蜴人達と連合軍の中間位置まで進み、バード達はそれぞれの楽器を構え、ソーサラーとエレメンタル達はその後方に半円形で控えた。

 俺は<歌う風の剣>を指揮棒の様に振り、敵の将を指した。その距離、約100メートル。もちろん、バードのどんな歌でも届く筈の無い距離。しかしバード達は距離には構わず合唱と連唱を開始。空気を振るわす音も、心を揺らす歌も、エア・エレメンタル達の風に運ばれて敵軍中枢を直撃。音や歌を耳にした者達を魅惑しあるいは眠りに陥れた。

 レイドボスなら一瞬から一秒未満、その護衛クラスなら長くて二秒前後だとしても、それが二十四人に連唱されたら何が起きるか?魅惑され、あるいは眠りに落とされ、攻撃されれば正気に返るとはいえ、気がついた時には騎乗しているヒュージ・リザードは一頭、また一頭と<薩摩隼人>の武士と神祇官の突撃を受けて頭をかち割られるか首を切り落とされていた。

 蜥蜴人の将はもちろん、バードとサモナーの集団を狙えと号令はしたが、その時にはすでにオーク王とアデルハイド候のレギオンレイドが前を塞ぎ、肩を並べて敵将に戦いを挑んでいた。

 ならばと後方にいる魔法使い達が楽団を狙おうとしたが、高位の者から暗殺者達にアサシネイトを立て続けに食らって沈み、回復役達には混戦の中空を駆け抜けてきたモンク達がタイマンを挑んで仕事をさせなかった。盗剣士達はダメージよりもバステを振りまく事に専念し、付与術士達は眠りと束縛のツタをばらまき、蜥蜴人よりもレベルの低いオーク達は競ってそのツタを断ち切り敵の数を削いだ。

 ソーサラー達は敵の動きがどこかに集中しようとすればそこに容赦なく範囲魔法を重ねて意図をくじき、ドルイド達は脈動回復を味方に移動阻害を敵に配り、守護戦士達は後方で蘇生と回復などを務めるレベル70以下の冒険者達を守り抜いた。

 戦いの冒頭に中核戦力を無力化され、後方支援部隊も予備兵力もズタズタにされれば、戦いの趨勢が決まるのは早かった。

 唯一粘っていたのは敵将とその側近とのウォーロードとオーク王のレギオンレイドの戦いだったが、後方支援を先に潰された蜥蜴人側がはっきりと不利に立ち、レベル差を埋めてあまりある冒険者達からのバフやヒールの支援が形勢を固め、最後は敵将とアデルハイド侯爵とオーヴァとの1対2の熱戦となり、ゲーム時代にはほぼ見る機会が無かったであろうレイドボス達同士の戦いは、敵将の胸をアデルハイド(大地人)の剣が突き刺し、その首をオーヴァ(オーク)の斧が跳ね飛ばして決着した。

 戦場や城に残っていた兵達も戦意を喪失し雪崩を打って逃げ始め、連合軍側はこれを地上に海上に追ってさらに打撃を与え、蜥蜴人達をフォーランド西岸からも追い払った。


 やがて戦場にそれぞれの勝利の雄叫びが満ちあふれた時、<三洋商会>に依頼してあった祝勝会の為の料理と酒がこれでもかとばかりに運び込まれ、大地人もオークも冒険者達も、その美味と美酒と勝利とに酔いしれたのだった。


☆★☆


「無いよね」

「うん、無い」

「考えたって、ふつー、やらない」

「だから、ふつーじゃないんだろ」


 そんな、極度の興奮が過ぎ去った後の心地よい虚脱があいまった、笑みがこぼれてきて止まらない瞬間を<紅姫>のメンバー達は分かち合っていた。


「アサシン二十四人のフルレイドとか、何だよそれ。魔法使い(キャスター)系死ね死ね団じゃん」

「いや相手倒れるまでアサシネイト連発とかさ、もー夢だよねあれ」

「モンクだけ二十四人も、ロマンだったよ」

「横一列に並んでワイバーンキックで飛び込んでいった時とか、泣きそうになった」

「<薩摩隼人>の気持ち少しわかったよね」

「うん・・・」

「ソーサラー達はヘイトあれだけ気にせず高火力ぶっぱなし続けるなんて無かったろうしね」

「レベル高い連中も低めの連中もそれぞれ見せ場あったろうし」

「でもさ、あれ」

「元の世界でも、何とか十いくつ楽房とかあったっけ」

「あったあった。グループユニットぽいよね」

「てゆーか、まんまオーケストラじゃないの?」

「むしろビッグバンドじゃん?」

「チャームとスリープの二十四連唱ハメとか何その鬼畜の所行?相手カワイソ」

「殴られて起きてもチャームされるか眠らされるかまた殴られるかの強制三択」

「ヘイトばりばり稼いでも前埋まってるなら関係無いよねって」

「オーク王さん達もさんざ範囲タウントはしまくってたけどさ」

「・・・・・・怖いねぇ」

「うん」

「敵に回したくない人かもだね」

「かもじゃないと思うぞ」

「この後どーするんだろうね?」

「蜥蜴人達全滅させるのかな?」

「不可侵条約締結させるとか?」

 そこに沙夜がやってきて、メンバーに告げた。

「相手の勢力と版図削りながら、攻略するそうだ」

「何を?」

「おそらく、<ノウアスフィアの開墾>最難関目標の一つを」

「あの人はもうそれがどこにあって、どれくらいのレベルかもわかってるんだ?」

「らしい。通常のレイドボスで100前後は当たり前。最終目標のレベルは最低100で高くて150オーバー。さらにそこで複数のレベル100越えのレイドボスが絡んでくるくらいを想定してるみたいだ」

「えっと、それを24人とかでって無理ゲーじゃないの?」

「インスタンスレイドゾーンなら多くて96人だろうが、最高レベル100で150を相手しろってだけで無理そうだな」

「普通ならね」

「普通じゃないならいけるのそれ?」

「やってみないとわからない。だから楽しいんだろ、って。言われてみればその通りなんだけどね」

「5万のオークを丸ごと味方につけて、仇敵の筈のウォーロード達と共闘させるとか」

伝説エピックとか伝承サーガの世界だよねもう」

「ふっふー、たのしーくなってきたなーもう!」

「どーやってレベル150のボス倒すのかとか見当つかないけど」

「まー、それが150でも200でも、あの人は挑戦しちゃうんじゃないの」

「私は絶対に参加する!」

「私も私も!」

「あったしもーー!」

 そんな声が次々にいつまでも続き、それは次の大波までの準備期間に向けた誓いとして連なっていった。


ログホラの設定的には、バード達が連唱してたのはたぶんここら辺の歌ぽいです。

〈月照らす人魚のララバイ〉

 呪歌・特殊攻撃技・行動阻害_対象の敵とその周囲に対して睡眠効果のある歌をぶつける補助用呪歌。


〈夢見る小熊のトロイメライ〉

 呪歌・特殊攻撃技・行動阻害_対象の敵とその周囲に対して、魅了効果のある歌をぶつける補助用呪歌。抵抗に失敗した敵は演奏に聞き惚れ、演奏している〈吟遊詩人〉にふらふらと引き寄せられるように近づいてくる。ダメージを与えると即座に解けてしまうので、複数の敵をまとめて誘導して高火力の範囲攻撃で始末する

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