従魔契約
ゴブリン達が汗水垂らして街を建設している頃白露は小説を書いていた。
「うーん、異世界に行ったと行っても、よく考えれば異世界らしいのゴブリンだけで後はなんも無いな」
白露は異世界に行ってからの行動範囲の狭さに悩んでいた、一番遠くでも旧ゴブリンの村で今は家の目の前に住んでいるので用事があってもすぐに済むし、ゴブ郎に格安の携帯を持たせてあるので電話だけで事が済む事も多い
「小説にいきるかと思ったけど、今の所なんの面白みもないな、ブラッドベアとの戦いも、よく考えれば唯の熊退治だし」
白露はうんうん唸りながら何か飲もうとキッチンに向かう、その時リビングを通ると
「あっ先生、書けました?」
「そんなすぐに書けないよ」
「そうですか」
「にゃーん」
「お前は会社に行かないでいいのか?」
「何行ってるんですか、私は先生の担当ですよ。ここで先生を見張るのが仕事ですよ」
「はぁサボってるだけだろ」
「そんな事ないですよ」
「にゃーぁん」
「まったく、まあいいか、それより食料きれそうだから買ってきてくれよ」
「えー、仕事中なのに」
「にゃん」
「なんだよ、だいたいここに住むことの条件だろ、家賃もガソリン代さえ出していて、食費もこっちもちだぞ、買い物ぐらい行けよな」
「むぅ、大家さんが酷いです」
「にゃぉん」
「酷くないだろ、ともかく行ってきてくれよ、露美ちゃんの好きなお菓子も買っていいから」
「仕方ありませんね、じゃあ行きますか、それでは行ってきますねミーコ」
「にゃん」
「はいはい、行ってらっしゃい」
そこで白露はあることに気づく
「ってなんで猫がいんねん!」
いつの間にか猫がリビングで遊んでいた。
「へっ? いちゃダメなんですか?」
「いや、いくらなんでも家主の許可無く飼うなよ」
「えっ、飼ってませんよ」
「じゃあその猫何なんだよ」
「えっ? ミーコは先生のペットじゃないんですか?」
「にゃん」
猫が白露の足に擦り寄る、白露は基本的に動物好きで広い庭も動物を飼うために決めたと言っても過言では無いのだ。
「なんだよ野良かよ、それにしては人懐こいな」
「にぁぅん」
白露は猫を撫でながら思う。
「そうですね、変な羽も生えてるし珍しいですよね」
「あん?」
露美の言葉に白露は猫をよく調べる、すると背中に小さいコウモリのような羽が生えていた。
「おう、猫ちゃうの」
「なんですか、先生が異世界から連れ込んだんじゃ無いのですか」
「いや知らない、迷い込んだのかな?」
実のところ白露の中で猫を飼うことは決めていた、だけど
「種類分かんないな、こいつも魔物なのかな?」
「にゃにゃ!」
白露が指で叩くと楽しそうに戯れている。
「ミーコ飼わないのですか?」
「飼っても良いけど猫かどうかわからないと危なく無いかな?」
「大丈夫でしょ、私が初めて来た時からいましたし」
「そうなのか……」
白露は露美の言葉をよくよく思い出す、そして
「露美ちゃんが来てから一週間は経ってるけど」
「そうですよ、よく一緒に寝てましたし」
「えーー! なんで俺だけ知らないんだよ」
「知りませんよ、ミーコのこと知らないなんて酷いですね先生は」
「そうなのか、いやまあいいか」
白露は考えてから子猫程度の魔物なら安全かとしかも一週間も何も無かったなら飼うのに問題ないかと
「じゃあ正式にこのうちのペットになるか?」
「にゃーん!」
こうして猫が白露家のペットになる、名前は露美が主張してるのでミーコに
「ミーコってメスか?」
そんな白露の疑問に
『オスニャ!』
「うわ!」
白露はいきなり響く声に驚く
「えっ? えっ? なになに? えっ?」
キョロキョロ辺りを見渡す白露
『ご主人、こっちにゃ!』
「えっ、ミーコお前か!」
『ハイにゃ!』
「えっ、喋るのか、でもこれは?」
『これは主従関係にある者とだけ繋がる念話にゃん』
「念話?」
『そうにゃ、ご主人がにゃーを飼うと言ったにゃ、それをにゃーが承諾したから従魔契約が成立したにゃ』
「従魔契約?」
『そうにゃ』
従魔契約とは白露が転移した世界ではよくある契約で、この事により主人格である者から魔力を与えられ、従魔はそれに対して献身で返す。
「魔力を? 俺そんなの無いけど?」
『そんな事ないにゃ、ご主人からは凄い魔力を感じるにゃ』
「えっ、そうなの」
白露はその言葉に嬉しくなる、彼の考えでは異世界に言ったならやっぱり魔法に興味があった。
「この世界に魔法はあるの?」
『当たり前にゃ、魔法が無いなんておかしいにゃ』
「そうなんだ」
そこで白露は白いゴブリンを思い出す
『そういやゴブ子はゴブリンメイジだったよな、という事は魔法使いなのか、なんだよなんでその時に気づかないかな』
白露は少し自分の観察眼の無さに落ち込む、だが
「じゃあ俺も魔法を使えるのかミーコ」
『大丈夫だと思うにゃ、ご主人の魔力は正にキングクラスにゃ』
「そうか、キングクラスか、キングクラス?」
ふと疑問に思う白露、はて? キングクラスとはなんぞやと
『ありとあらゆる種族の最高位がキングにゃ、ご主人は人間のキングでは無いにゃ?』
「えっ、違うけど」
『そうにゃ、キングじゃ無いのに凄い魔力にゃ』
「そうなのか、とりあえず凄いのは分かる、これが俺に与えられたチートなのか」
こうして異世界に楽しみを見出した白露、そして謎の猫を従魔にして冒険に行こうかと思ったが
「先生だけミーコちゃん独占はずるいです」
そう言ってミーコを取り上げる露美、最後に
「あと原稿速くして下さい、次の締め切り明後日ですよね」
「なぬ?」
白露は売れっ子作家、書いてる作品は複数あるのだ。
「やばい!」
こうして部屋にこもり白露は小説を書くのだった。
「やばい、やばい」
必死に