四人の喧嘩その一
白露は沢山の仕事の中に埋もれていた。そしてそんな状況を考えながら、ふと思う。
「俺もそろそろ結婚したいな」
それは久々に初恋の相手と出会って愛を欲してしまったのだ。
「そろそろ三十だもんな、仕事も安定して貰えるようになったし、奥さん貰っても養えるはずだしな」
だけど恋愛をしたいと言うよりは、自分の家族が欲しいと考える方向で別に初恋の相手と運命的な再会を得て彼女とどうこうしたいと思っているわけではなかった。
「奥さん欲しいの?」
「ふわ?」
いきなり話しかけられて驚き座っていた椅子から転げ落ちる白露、そして転けたところから頭を出して声の主を探すとそこに
「どうしたの?」
それは座敷童の富ちゃんだった。
「と、富ちゃんか、どうしたの」
白露は冷静を装いつつ富に話しかける。
「うん、なんかヨシコちゃんが呼んでるの」
「そうなんだ、分かったよすぐ行くね」
「うん、ところで」
「なんだい富ちゃん」
「白露は奥さん欲しいの?」
「ぶっー」
驚くと言うより独り言を聞かれた恥ずかしさで白露は顔を真っ赤にする。
「いや、あの、それは」
「それは?」
「未来の話だよ」
誤魔化す方向にする白露
「未来? 今は違う?」
「そうだね、今の話じゃ無いよ」
ホッとする富、彼女は今の環境が気に入っておりそれが白露が結婚することにより壊れてしまうかもしれないと不安で仕方なった。
とりあえずホッとしたので富は白露をヨシコのところまで案内する。
「おお来たのじゃ、白露よ夏のバカンスはどうするのじゃ?」
「えっいきなりだねヨシコちゃん、もしかして夏休みの話かな?」
「そうじゃ、千歳達が喧嘩しに出かけたので妾の夏の計画が決まらぬのじゃ!」
ヨシコがプンプン怒りながら喋る、その言葉に白露が
「へっ? ヨシコちゃん今なんて言った?」
「じゃから夏の計画が決まらぬと」
「そこじゃない」
「えーっと、千歳達が喧嘩しに出かけたかの?」
「それだ!」
白露はとんでもないことになったと焦って四人の元に行こうとした頃、とうの四人は
「久々に本気になれるわね」
「ええ、白露様のメイドも楽しいですがやはり我らは戦いこそが本能、久々に血がたぎりますわね」
マールとエリスが物騒な事を言いながら千歳とラスティとに対峙する。
「本気でやる気か? 手加減なんてしないぞ」
千歳のそんな言葉に
「それはこちらのセリフです。だいたい千歳さんは白露様のずっと近くにいて卑怯でした」
「ええ、私が封印されてる間も白露様の側にいたなんて、未だに許せません」
二人の敵意が千歳に集中し始める。
「また昔の事を、お前達が下手打ったから私が白露の護衛をしなけりゃいけなかったんだろ? 今更なこと言うなよ」
何があったのかは、ここでは語らないが何か事件があったようだ。
「うるさい、だいたいお前は白露様からのご寵愛なんか興味ありませんって態度を取りながら常に白露様にベッタリして卑怯だぞ」
「そうです、千歳さん私は知ってますよ、白露様がお風呂に入っている時に白露様のパンツを……」
「わぁ! それ以上言うなエリス!」
急に慌てふためく千歳、果たして白露のパンツをどうしたのかそれは分からない。
「はぁ口喧嘩はその辺でいいでしょ、私は早くこんな事終わらせて白露様のお世話をしなければならないのです、早く終わらせましょう」
「ちっ、お前が一番分からん、ラスティ」
「そうです、いつまで長年封印されて来たメイドロボットのフリするのです?」
「フリでは無いですよ、本当にそうなんです」
「はん、人間味を捨てる事で白露様の近くに置いてもらえやすくしとこうなんて考えましたねラスティ」
「ふぅ、やはりあなた方にはバレてましたか」
なんとラスティの今までの白露への態度は演技だったらしい。
「当たり前だろ、何年の付き合いだと思ってる」
「かれこれ数万年はたってますか」
「ふん、そんぐらいかしらね」
「まあいいさ、とりあえずここでお前達を屠って白露様のご寵愛を一身に受けるのは私だ」
そうマールの宣言に
「なに? マールさんここは共闘する場面なのにもう裏切りますの?」
「うるさい、お前達三人は邪魔だ」
「それは確かにな」
「ええ、同感です」
「なるほど、チーム戦では無く個人戦になるみたいですね」
マールのブチギレ具合に、既に2対2ではなく四人の、バトルロイヤルに突入する事になる。
こうして始まったのは地獄絵図だった。




