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レベル0に見えますが実はカンストしてるんです  作者: 酢酸 玉子
第6章 カンストゼラー流外交
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第55話 会談直前

 前回の反省を踏まえ、ジーシカの女王について調べてみたが、その地位にふさわしく、公明正大で徳のある人物らしかった。なんでも、キリシカ魔導学院に在籍していたことがあるらしく、最もレベルの高いステータスは“魔力”でそのレベルは008だった。キリシカ魔導学院とは俺もまだ行ったことのない場所だが、その名の通り魔法について研究を深めている大学のようなところらしい。エルフのような長寿、かつ魔法が得意である種族ならばともかく、そうでなくて魔力のレベルが二桁かそれに近い場合は、魔導学院がなんらかの関与をしていると考えてまず間違いはないのだとか。

 さて、キリシカ魔導学院も興味深いが、今考えるべきではないだろう。目下重要なことは、ジーシカに来てから数日が過ぎ、遂に首脳会談が開かれる日程となったことだった。

 俺はジーシカの宮殿に向かう。ジーシカの女王であるエパナはバランスの取れた外交戦略を行っており、複雑に利害の絡んだ首脳会談もジーシカでなら行えるらしい。各国の要人たちが、さほど伴も連れずに訪れるのだからその信頼度はかなりのものなのだろう。とはいえ完全に一人で来ているのは俺くらいのもののようだった。なおヘルネとミエラは今日は留守番である。夫婦で顔を出すイベントは、また後日に予定されていた。


「お待ちください。ここから先は許可を得た者しか入れなくなっております」


 宮殿からはまだ遠い所に、立派な門が建っている。その両脇を守っていた門番が俺を止めた。俺はオートランドでチャリーズから預かって来た印章を手渡した。

 俺の前でしばし確認作業を行った後、門番達は俺に道を譲る。“ゼラー”である俺が国家の代表として現れるなど、彼らの常識にはないことのはずだったが、表情を全く変えずに対応してきた。相当訓練されているのだろう。このようなところからも、この国のレベルの高さが伺える。

 だが、他の国もそうであるかというとそれは別の話であり――


「オートランドは何を考えているんだ、あんな“ゼラー”を使者として寄越すなど」

「まったくですな。ネルジランド占領の件といい、他国に対する礼を失している」


 あまり聞いたことのない言葉は、大陸の南東で主に使われているジャオ語だ。

 ようやく宮殿に辿り着いたのだが、宮殿の中にはすでに他の国からも使者が来ており、俺のことをじろじろと見ながらそんなことを言ってきた。曲がっているような鼻をした中年の男と、その従者らしい男の二人。どうせ言葉は通じないとたかをくくっているのか。


「失礼、俺がオートランドの特使であることに何か問題でも?」


 だから俺は完璧なイントネーションのジャオ語で彼らに話しかけた。

 二人はぎょっと目をむく。“語学”Lv000の“ゼラー”がそんな言葉を使えるとは思っていなかったか。だがあくまでステータスは語学の習得力の高い低いを表している。昔住んでいた国の言葉を話せるシュリの例もあるし、長い経験を積めば“ゼラー”が他国の言語を使えても不思議なことではない。だから二人は驚きはしたものの、俺を“ゼラー”だと見下す態度は変わりはしなかった。


「貴様のような“ゼラー”を特使にするなど、オートランドの政府は何を考えているのだ。新しく新王が即位されたと聞いたが、少し品位に欠けるのではないか?」


 より年配で、鼻が曲がっているような男が言う。“知識”Lv10000によると、ダッカス国の特使で国王の弟だ。


「――それは我が国に対する侮辱と受け止めますが?」

「たかが“ゼラー”が、何を偉そうに」


 もう一人の従者も、そのように言う。これで言質を取ったことにするか。

 俺はにやりと笑って、いきなり二人の腕を取った。


「な、貴様何をする!気安く触るな――」

「まあまあ、そんなこと言わないで、ちょっと“散歩”でもしませんか?――ダッカスまで」





 30分後――


「お許しくださいお許しくださいお許しくださいお許しくださいお許しください……」


 二人は俺の前で土下座して許しを乞い、ダッカスにある王弟の所領をどのくらいオートランドに割譲するか、という議題が今回の首脳会談に新たに加わっていた。

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