第3章 10
孫嘉は牙狛侯と黒武侯に風雅のことなど、
後の事を任せると北方の黒竜党の臥狼のもとに向かった。
次の日。
孫嘉は臥狼がいる黒竜党へと飛竜に乗ってやって来た。
孫嘉はすぐに黒竜党の兵士らに捕まり、
臥狼の前に引きずり出された。
「我が、もとに何しにやって来た!」
臥狼が自分の前に引き出された孫嘉にそう尋ねると
孫嘉は臥狼に臆することなく、
「じ、実は…… 今、我が、主君【劉・小狼】と
対峙している仮面の男【劉閣】のことなのですが……」
と臥狼に郭瑜が仕掛けた仮面の男【劉閣】を
水霞曉から退かせる策を実行し始めた。
「仮面の男【劉閣】?……」
臥狼は孫嘉が言った仮面の男【劉閣】の言葉に
顔色を変えた。
そんな臥狼の顔色を見た孫嘉は畳み掛けるように
「臥狼殿は仮面の男【劉閣】に兵と部下をお貸しして、
我が主君(劉・小狼)を討とうしているようですが……
未だに我が主君を討とうとしてません。
これはいかに?…… 仮面の男は我が主君を討つのは
口実で実は臥狼殿を討とうと龍炎国の各地を手中に収め、
兵力を増しています! このままじゃ、臥狼殿の黒竜党は
あの仮面の男に攻め取られますよ!……
ここはあの仮面の男と手を切り、我が主君と手を結び、
仮面の男を攻め滅ぼしませんか?……」
と言い、仮面の男【劉閣】討伐を持ちかけた。
少し考えた臥狼は前から仮面の男【劉閣】の行動に
不信感を持っていたから孫嘉が持ち掛けた
仮面の男【劉閣】討伐に応じた。
孫嘉が黒竜党の臥狼を唆して暫くして、水霞曉の国境沿いで
劉・小狼らと睨み合っている仮面の男【劉閣】のもとに
臥狼からの使者・天蓋【てんがい】が現れた。
天蓋は仮面の男【劉閣】らに臥狼からの勅命の書状を見せながら
「臥狼様からの命(令)で…… 貴殿らはここを直ちに撤退し、
黒竜党のアジトに帰還するように……」
と言い放った。
「な、なんだと…… 折角、アイツ(劉・小狼)と
戦えるのに……」
仮面の男【劉閣】は全身から異様な殺気に似た
気を発しながら、目の前の臥狼の使者・天蓋に
食ってかかろうとした。
韓忌と餓典は流石に臥狼の命【令】に歯向かうことが出来ず、
「ここは無実を証明するために一旦退き、
臥狼様に説明をすべきでしょう……」
韓忌は仮面の男【劉閣】にそう進言した。
「そ、それは……」
仮面の男【劉閣】は苦々しく、対峙している
劉・小狼らの軍勢を見詰めていると更に韓忌らに
帰還を促そうと天蓋が
「いつまで私を待たせるのですか?……
そなた達に帰還の意思がないのなら、力尽くで
臥狼様のもとに連れて帰らなければ、なりませんが……」
と韓忌らにそう言った。




