第3章 4
突然、水蓮と風雅の周りを取り囲んでいた強盗の男らの数名が
口から血を吐き、崩れるようにその場に倒れ込んだ。
その倒れ込んだ強盗の男らの背中には矢が刺さっていた。
「だ、誰だ!……」
強盗の男らは自分らの仲間を射殺した矢が飛んで来た方を
見るとそこには孫の文字を掲げた商団の一団があった。
弓矢を強盗の男らに向けている商団の警備兵に孫嘉は
「第2弾、撃て!」
と言い、残りの強盗の男らに向かって、
矢を射掛けるように命じた。
孫嘉の商団の警備兵の弓矢の腕は正確で次々と強盗の男らを
射殺していった。
強盗の男らを全て射殺すと
「大丈夫か?……」
と言い、孫嘉は水蓮と風雅のもとに近付いてきた。
「あれ? 水蓮さまでは?……」
孫嘉は強盗の男らに絡まれていたのが水蓮だったので驚いた。
「良かった! 孫嘉さんで……」
水蓮は自分を助けたのが孫嘉とわかると安心し、
その場にへたり込んだ。
孫嘉は水蓮の横にいる風雅を見ながら
「水蓮さま。 こんな所で何をしているんですか?……」
とそう訊くと放心状態の水蓮に変わって、水蓮の横にいた風雅は
「この子が小狼殿に会いたいといったから
連れてきたんだが…… この村はどうしたんだ?」
と我箕で顔見知りだった孫嘉にそう言った。
孫嘉は智龍侯の居城にいる劉・小狼のもとに4侯の一人・牙狛侯が
迫っていることを説明すると風雅は急に顔色を変え、
「あ、アイツ(劉・小狼)は無事なのか?」
と言い、孫嘉に詰め寄って、劉・小狼の事を訊いた。
突然のそんな風雅の態度に
『え?……』
と驚いた顔で水蓮は風雅の事を見詰めた。
孫嘉も一瞬、驚いた顔をしたがすぐに
「小狼さまはまだ大丈夫です。 ここはいつ、危なくなるか
わかりませんからお二人とも小狼さまらがいる頭臥山に
移ってください!」
と言い、水蓮と風雅を劉・小狼らがいる頭臥山へと
連れて行った。
「孫嘉殿がお戻りです!」
頭臥山の内にいる劉・小狼軍の見張り兵の声と共に
劉・小狼らが頭臥山へと戻ってきた孫嘉を出迎えた。
商団を率いて、戻ってきた孫嘉を出迎えた劉・小狼は
「ご苦労であったなぁ…… で、西方の民の避難は?」
と孫嘉に西方の民の避難状況を尋ねると
孫嘉は少し困った顔をし、
「ええぇ…… 民の避難は終了したのですが……」
と言い、自分の商団に紛れている水蓮と風雅の方を見た。
「小狼さま。会いたかった!」
水蓮は劉・小狼の姿を見るなり、勢い良く、孫嘉の商団の中から
飛び出し、嬉しそうに劉・小狼に抱き付いた。




