第2章 21
風雅が劉・小狼の我箕の城で看病されている頃、
孫嘉は我箕から遠く離れた、智龍侯と龐炎侯との
領地の境にあった。
『これで良いのだ! 私があの方(劉・小狼)の傍に
いない方が良いのだ……』
孫嘉が劉・小狼のもとを黙って、立ち去った事を
少し後悔をしながら、龐炎侯の領地へと歩みを進んでいると
道の脇の小さな洞窟から風雅の帰りが遅いのを心配した
刻神がよろめきながら、孫嘉の前に現れ、倒れた。
『あ、危ない……』
孫嘉は慌てて、立ち止まり、自分の倒れた刻神を抱き起こし、
「だ、大丈夫ですか?……」
と言い、自分の前に突然、現われ、倒れ込んだ刻神の顔を見て、
びっくりした。
孫嘉の率いていた商団の医師の看病により、
弱りきっていた刻神は少し回復し、意識を取り戻した。
だが、刻神は弱りきっており、このまま、命を助けるのは
どんな医師でも無理だった。
刻神自身もそのことを感じ取っているのか、
気が付くと傍にいて、心配そうな顔をしている孫嘉に
「どなたか存じませんが助けてくれて
ありがとうございました…… ですが、私はもう長くはない……
大変、申し訳ないですが私に仕える風雅と言う者に
これを渡してくれませんか?……」
というと懐から一通の手紙と煌びやかな印を取り出し、
孫嘉に手渡した。
刻神は孫嘉に風雅宛ての一通の手紙と煌びやかな印を渡すと
その身体は光の粒子となり、消え去った。
孫嘉は刻神から託されたモノを見詰め、少し考え込むと
「さあ。行きましょう……」
率いた商団にそう言うと龐炎侯の領地とは
反対の方へと進み始めた。
数日後。
劉・小狼の我箕がにわかに慌しくなった。
我箕の城にいる劉・小狼らのもとに門兵がやって来て、
「小狼さま。孫嘉さまがお戻りです……」
と劉・小狼らに伝えた。
それを聴いた劉・小狼は慌てて、我箕の門へと急いだ。
孫嘉の前に現れた劉・小狼はすぐに元気がない
孫嘉に気が付いた。
劉・小狼は元気がない孫嘉に
「詳しい話を城の中で聞かせてもらおう……」
と言うと孫嘉らと共に城の中へと戻った。
城の中に戻る途中、孫嘉は自分の姿をじっと見詰めている
見慣れない少女(風雅)のことに気付いた。
孫嘉はそんな少女(風雅)に近寄ると
「もしや…… 貴方様は風雅さんと言いませんか?」
と尋ねると風雅は驚いた顔をし、
「ええぇ…… 私が風雅ですが…… 何か?」
と言った。
孫嘉は懐から一通の手紙を取り出すと
「あるお方から貴方にこの手紙を預かりました!」
と言い、その手紙を風雅に手渡した。




