第2章 19
翌朝、劉・小狼が目覚めるとすでに琶填の村には
孫嘉の姿は何処にもなかった。
『あいつ(孫嘉)は何処だ?』
劉・小狼がそう思いながら、郭瑜の家に行くと
家の周りを掃き清められ、家の前で郭瑜が
劉・小狼が来るのを出迎えていた。
自分を出迎えている郭瑜を見つけると劉・小狼は馬から降り、
慌てて、郭瑜に駆け寄り、郭瑜の前でひれ伏した。
郭瑜は恐縮しながら、そんな劉・小狼を抱き起こすと
「どうぞ、中にお入りください!」
と言い、劉・小狼と趙燕を家の中に招き入れた。
郭瑜の家の中にはお香が焚かれ、難しそうな本などが
山積みになっていた。
劉・小狼は水霞曉に迫っている危機のことや
それに対しての舜炎帝からの手紙のことなどを
郭瑜に事細かに話した。
郭瑜はそんな劉・小狼の話しをお茶を飲みながら、
静かに聴いていた。
劉・小狼は全部、話し終わると郭瑜の顔色を伺いながら
「お願いです。 私に郭瑜殿の力をお貸しください!」
と郭瑜に言った。
郭瑜は飲み干した湯飲みをゆっくりと机に置くと
椅子から降り、床に座ると劉・小狼に対して、
深々とお辞儀をし、
「こんな私でお力になれるなら…… お仲間の端に
お加えください……」
と言った。
劉・小狼は慌てて、座っていた椅子から降り、
郭瑜の顔を上げると
「そんなことはおやめください!」
と言い、郭瑜の事を気遣った。
こうして、劉・小狼は郭瑜を仲間に加え、我箕へと戻った。
劉・小狼が郭瑜と伴い、我箕の城へと戻ってくると庖悦らが
城門の前で出迎えた。
郭瑜は庖悦の姿を見るなり、乗っていた馬から降りると
「やはり、貴方でしたか! 小狼さまに私のことを
教えたのは……」
と庖悦に言うと庖悦は郭瑜を見ながら、
「はははぁ…… この世界広しで君に右に出る者は
いないからなぁ……」
と高笑いをした。
郭瑜はそんな庖悦の話しを上の空で聞きながら
「アイツ(孫嘉)は?」
と辺りを見回し、庖悦に孫嘉のことを訊いた。
庖悦も辺りを見回しながら
「やはり、沙隆にいたのはアイツ(孫嘉)だったか……
さあ。まだ、ここでは見てないが……」
というと
「そ、そうですか……」
郭瑜はがっかりした顔を浮かべた。
郭瑜が劉・小狼らと共に我箕の城に入り、今後の対策などを
話し合っていると郭瑜は自分らがいる部屋の中に人の視線を感じた。
郭瑜は自分の腰に携えている短剣に手をかけると
その視線の者に気付かれないように後ろに素早く振り返ると
その短剣を部屋の天井に向かって、投げ付けた。
『うわぁ……』
郭瑜の投げた短剣に驚き、郭瑜らがいる天井から
真っ黒なフードを被った男・風雅が落ちてきた。
「お前は何者だ!」
関遼らは天井から落ちてきた風雅を取り囲み、取り押さえた。
だが、劉・小狼は関遼らに取り押さえられている風雅を見ると
「その者は我らに危害を加えぬ! 放してやれ!」
と関遼らに言い、風雅を解き放つように命じた。




