第2章 10
智龍侯を除いた3侯はただちに舜炎帝がいる部屋へと
駆け込んできた。
3侯は舜炎帝の部屋のありさまを見て、劉・小狼と趙燕が
侵入者だと思い込み、
「お前らか、舜炎帝さまがこの海月宴に侵入した
怪しき者とは?……」
と言い、劉・小狼と趙燕を捕らえようとした。
だが、舜炎帝は趙燕の傍から立ち上がり、
自分がいつも座る玉座に座ると
「控えよ! その者らは我の命を救った我の客人だ!」
と言い、劉・小狼と趙燕を捕らえようとしていた
3侯らを怒鳴りつけた。
3侯らは舜炎帝の威厳に満ちた風格に恐縮しながら、
後ろへと下がった。
そこに蒐賽のことを片付け、遅れてやってきた智龍侯に
舜炎帝は一瞬、劉・小狼の事を見て、
「智龍侯! 我の命を救った客人を持て成す準備をせい!」
と智龍侯に命じた。
舜炎帝は3侯らを退かせた後、自分の部屋で智龍侯が
用意した食事などで自分の命を助けた劉・小狼らを持て成した。
舜炎帝は智龍侯や劉・小狼の話から劉・小狼らが
我箕という地を治めている者と知った。
舜炎帝は劉・小狼らを見ながら、かつてこの世界を
救った者【劉・小狼】らのことを思い出していた。
舜炎帝は目の前にいる劉・小狼に
「お主らの力をわしに貸してはくれぬか?」
と思わず、口にした。
突然の舜炎帝の一言にその場にいた智龍侯を含め、
劉・小狼らは一同に驚いた。
少し落ち着いて、劉・小狼が
「どういうことですか?……」
と舜炎帝に尋ねると
「じ、実は……」
舜炎帝は今の水霞曉のことを色々と話し始めた。
劉・小狼は舜炎帝の話を全部、聞き終わると
表情を曇らせた。
劉・小狼の表情を見た智龍侯は
「どうしたのですか? 悪い話ではないのでは?……」
と口を挟むと劉・小狼は言いづらそうに
「悪い話ではないのですが…… わたしのような者が
4侯の方々を差し置いて、舜炎帝さまの近くで
お力を貸せば、智龍侯さまは別としても他の3侯の方々が
どう思われるか?…… それによって、争いが起きかねませんか?」
と言うと舜炎帝と智龍侯は深く押し黙った。
劉・小狼は舜炎帝のことを考え、力は貸すが我箕の民らが
心配と理由で舜炎帝の傍近くにいることは鄭重に断り、
自分らの居城・我箕へと戻った。
劉・小狼は我箕へと戻る途中、今回のことを沙隆の孔游に
報告したくて、傍にいる関遼に
「ちょっと、先に帰っていてくれ! 沙隆に寄って、
孔游殿の顔を見てくる。」
と言った。
「一人では危のうございます! 海月宴の ことも
ありますから…… 誰か、お付になった方が……」
関遼は劉・小狼に誰か、供の者を付けるように進言した。
劉・小狼も関遼の進言を聞き入れ、張爛を引き連れ、
沙隆の孔游のもとに向かった。




