第2章 2
牙狛侯は突然、自分のもとにやって来た智龍侯のことを
気にしながらも冷静を装いながら
「いや…… 元気ですよ! 街も私も……」
と言い、誤魔化すように笑い飛ばした。
智龍侯はそんな牙狛侯の顔色を伺いながら
「そうですか…… それは舜炎帝もお喜びになるでしょう
……それはそうと。話しは変わりますが……
劉・小狼と言う者が護る我箕に不穏な動きをする者らが
いるようですが…… 牙狛侯は何か、お知りではありませんか?」
と牙狛侯にそう言うと牙狛侯は途端に顔色を変え、
「さあ…… 何も知りませんなぁ……
何か、わかったら、そなたにお伝いしましょう!」
と言い、明らかに智龍侯から顔を背けた。
趙燕と蒙虎幻が新たに劉・小狼の仲間に加わったことで
我箕は更に発展した。
それは4侯も無視できぬようになりつつあった。
劉・小狼がいつものように趙燕と共に
我箕の城下の見回りをしていると街中に
怪しげな商人がいることに気がついた。
劉・小狼はその怪しげな商人に気付かないふりをし、
『趙燕。 あの者のことがわかるか?』
と趙燕に怪しげな商人のことを尋ねた。
趙燕も一瞬、その怪しげな商人の事を確認すると
別に気付かないふりをし、
「さあ。わかりません…… でも……」
というとその怪しげな商人の前を劉・小狼と共に
通りすぎたがその後、趙燕は自分の手下で
その怪しげな商人のことを探らせた。
我箕の街中にいた、怪しげな商人は我箕から出ると
我箕の近くの森の前に滞在している商人の一団の
陣幕の中へと入っていった。
その陣幕の中にいる一人の商人の男(孫嘉)は
我箕から帰ってきた怪しき商人に
「どうでしたか? 我箕は?……」
と訊くと怪しき商人は
「中々、良い街かと……」
と答えた。
孫嘉は自分がいる陣幕の外を気にしながら
「そうですか…… なら、近いうちに我箕へと
挨拶に行かないといけませんね!」
というと外に向け、持っていた短刀を投げ付けた。
孫嘉の投げた短刀を受けた趙燕の手下は慌てて、
その場から逃げ出そうとしたが孫嘉の投げた短刀には
毒が塗られていたのか、趙燕の手下は気を失い、
その場に倒れ込んだ。
劉・小狼は趙燕の手下が中々、戻って来ないことを
心配していると
「兄者!……」
と言い、張爛が劉・小狼のもとに駆け寄ってきた。
「何事だ! 張爛」
劉・小狼は張爛に用件を訊くと
「た、大変だ! 商人らしき男が兄者に会いたいと
やって来ている!」
張爛は慌てながら、劉・小狼にそう言った。
劉・小狼は何だか、嫌な予感がしたがとりあえず、
その商人らしき男【孫嘉】に会うことにした。
孫嘉と対峙した劉・小狼は
「そなたか? 私に会いたいというお方は?
……で、私になんの用か?」
というと孫嘉は劉・小狼に一礼をすると顔色を変えず、
冷静な表情で
「お初にお目にかかります…… 旅の商人を
やっております孫嘉といいます!」
と劉・小狼に話しかけてきた。




