第5章 9
仮面の男【劉閣】の裏切りにより、龍炎国の都で
孤立してしまった舜炎帝のいる城を取り囲んだ劉・小狼は
「もう決着は付いた! 舜炎帝に降伏を勧めよう!」
と言ったため、郭瑜は孫嘉に舜炎帝に降伏を促す使者として、
舜炎帝のもとに向かった。
だが、舜炎帝は
「誰が降伏などするか!」
断固、降伏を拒否した。
使者として来た孫嘉を返した後、舜炎帝は
「どうにかできぬか!……」
と配下の者にそう言うと剛騎【ごうき】が
「我が龍炎国と風の里【国】の境にある
劉・小狼らの城・奇岩城を攻めては?……」
と舜炎帝にそう進言した。
少し考えた舜炎帝は
「しょうがないなぁ…… 剛騎。お前が手勢を率いて行け!」
剛騎に奇岩城への出陣を命じた。
剛騎は直ちに手勢を整えると夜の闇に紛れ、
刹那と龐悦が護り、劉・小狼の妻の水蓮らがいる
奇岩城に向かった。
だが、龐悦は舜炎帝の動きを読んでいて、
色々と策を巡らせ、龍炎国の都の近くにいる
劉・小狼らのもとに舜炎帝の動きの事を報告した。
龐悦からの手紙を受け取った郭瑜は
「舜炎帝が動き出したそうです!……」
と劉・小狼に言った。
剛騎が手勢を率いて、奇岩城に近付こうとすると
早速、龐悦が仕掛けた火や水、落とし穴など
色々な罠に引っかかり、多くの兵を失った。
何とか、剛騎が奇岩城の見える所までやって来たが
もうすでに戦えるだけの兵は残っていなかった。
「しょうがない。 撤退をするしかないか……」
剛騎は残った兵を纏めると戦うことなく、
龍炎国の都に戻った。
その様子を奇岩城の城壁の上から見ていた龐悦は
「我の策が上手くいった…… 次に備え、
この城の周囲と城の強化をしておきましょう!」
と刹那に次の準備を行うように言った。
戻ってきた剛騎により戦わずして、負けたことに舜炎帝は
「何事だ!」
と酷く激怒した。
「もはや、我らに勝ち目はありません。
ここは降伏をしましょう! 今なら、まだ間に合いますから……」
舜炎帝の側近の一人・老斬【ろうざん】は
舜炎帝にそう進言した。
「降伏などするか! お前の顔など、見たくはない……
謹慎でもしておれ!」
舜炎帝は優秀な側近の一人・老斬を怒りに任せ、謹慎させた。
『もう決着は付いたな!……』
老斬は自分のことを謹慎させた舜炎帝に嘆きながら、
舜炎帝のもとから立ち去った。
龍炎国の都の城から自分の付き従う手下と兵と共に出ると
龍炎国の都にいる劉・小狼らに手紙を出した。
「これは罠ではないか?……」
郭瑜は老斬からの手紙を罠だと初めは疑っていたが
新しく仲間に加わった郭瑜の息子・郭遼が
「父上。信じても宜しいのでは?……」
と言うと
「それなら、お前が話を纏めてみよ!
良いよな? 郭瑜。」
劉・小狼は郭瑜にそう言った。
「まあ…… 小狼さまがそう言うのであれば……」
郭瑜は渋々、そう言い、郭遼に老斬のことを任させた。




