表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/12

第九写:初めての魔物退治

すいません、一年以上間隔を開けてしまいました。また、読んで頂けたら幸いです

「魔物退治?」


「そう。ククリの上でリザードマンの群れが増えすぎてるから、生態系の調整も兼ねてね。まぁ毎年恒例のイベントって思って良い。」


「ただ、今年はいつもより多く出現したらしいわ。」


「えぇそれじゃぁお腹空いちゃうよ。」


 俺の問いにユジンが答え、ユリカが追加で説明して、幸が悲しそうな声を上げる。


「大丈夫ですよ。いつも午前中には終わりますから、お昼御飯はちゃんと食べれます。」


 しかし、時雨が幸に説明すると幸は嬉しそうな顔で、「ほんと、良かった!」と言った。

 にしてもリザードマン狩りか授業の説明では、性格は猟奇的で気性が荒い。食性は肉食、知能は低く、魔法は基本的に(ガーディ)しか打てないらしい。しかし、中には特異種として知能が高いドラゴノイドや、リザーシャーマンという者が稀に表れるらしい。そいつらは、リザードマンの群れを指揮し、人を襲ったりするらしい。しかし、全ての魔物に言えることだが、なぜ彼らが純人や亜人を襲うのかは分かっていない。人を襲うことでどのような利益があるのか。


「で、今回は五人パーティーを組む訳だけど、パーティー名の提出が義務付けられてるわ。どうする?」


 と、ユリカが、思案に更けていた俺に声をかけた。それに俺は、「え?」と返すと、彼女は「ハァ」とため息をはいて、


「どうせ考え事してて聞いてなかったんでしょ?パーティー名よ、パーティー名をどうするかって話。」


「あ、あぁじゃぁ………」


「ハァイ!トマトが良い。」


「却下よ。」


「ガァァン!!」


 俺がパーティー名を考えていると、幸が挙手をしてパーティー名を発案するが、一蹴され、時雨に泣きついていた。


「んじゃチーム:エボリュートは?」


「嫌よ、ダサいわ。」


「ダ、ダサい……。」


 幸に次いでユジンが発案するが、またもや一蹴され、ユジンも時雨に泣きつく。が、


「ちょっ、ユジンさん止めてください!ってドコ触ってんですかこのロリコン!!」


 と時雨に蹴り飛ばされた。そして時雨は、ユジンから身を隠すように、幸と一緒に俺の後ろに隠れた。


「で、なんか無いわけ?」


「イヤ、無いわけ?と言われてもなぁ……。」


「じゃ、じゃぁ皆さんの魔法から取って、五行はどうでしょう?」


「五行?あぁあの水、金、地、火、木の奴ね。」


 俺とユリカが、話していると、俺の後ろに隠れていた時雨がおずおずと言った風に自分の意見を出す。


「雄輔さんの言う通りです。水は幸さんの氷、金は雄輔さんの雷、地はちょっと無茶ですけど、ユリカさんの歯車というか光、火はあのロリコンの炎、木は私の風です。」

 さりげなくユジンのあだ名が決まったところで、ユジンを除いた四人が同時に、視線をユリカに向ける。このメンバーだと、だいたい決定権はユリカが握っていた。


「うぅん、良いんだけど、捻りが足りない気がするわ。なんかこう、ビシッと来るような物が良いのよ。」


「じゃぁ、ユリカは何が良いの?」


 幸の問いに、何故か困った顔をしたユリカは、


「え?……そうねぇ……じゃぁゼニアウィーターは?」


「何それ?」


「えぇと、古代語の言葉で『偉大なる狩人』って意味よ。」


 俺の問いに、ユリカは追加説明する。しかし、これは……


「かっこつけ過ぎじゃないか?」


「う、うるさいわね。もうアンタだけよ、意見出してないの!」


 俺の指摘に顔を真っ赤にして怒鳴るユリカ。しかし、意見を出せと言われてもなぁ。


「じゃぁ……。もぉユリカ愚連隊で良くない?」


「……なんで私の名前が入ってんのよ?それに愚連隊って何?」


「えぇと一応ユリカがリーダーだから。そんで愚連隊ってのは、ようは不良のあつ……」


「意味じゃないわよ!なんで私達が愚連隊なのって話!」


「………さぁ?」


「さぁって。……はぁもう良いわ。」


「あの、ユリカさん。もう最初からある5班で良くないですか?」


 時雨の呟きに、俺はバッとユリカに視線を会わす。


「なぁ、パーティー名の提出が義務付けられてるって言ったよな?」


「………えぇ。」


「でも最初から5班って名前があったんだよな?」


「………だって、かっこよくないんじゃない。」


「………。」


 どうやら、ユリカの尺度はかっこいいかかっこよくないからしい。


「はぁ……じゃぁチームファイブだ。」


「ファイブって?」


「遠い国での五の数え方だよ。」


 俺の発案に、半泣きで俺を見るユリカ。意味を教えてやると、何故か嬉しそうな顔をして、「しょ、しょうがないわね!雄輔がどうしてもって言うからパーティー名はファイブに決定よ!」と意気揚々と宣言した。

 というか、ユジンがさっきからピクリとも動かないのだが、大丈夫だろうか?




―――――――――




 魔物退治同日。 事態は、想定外な方向に向かっていた。生徒に死者が出たのだ。それも一人や二人ではない、十五人もの被害者を出した。事態を重く見た教師陣は生徒達を避難させていた。


「死人が出るなんて………。なんか変よ、今年のリザードマン。」


 俺達ファイブも、ベースキャンプに戻るために、足早に森の中を歩いていた。そんな中、ユリカが困惑した表情を見せながら、呟いていた。


「死傷者が出ることは珍しいのか?」


「珍しいってレベルじゃありませんよ。そもそもリザードマンって言うのは、集団で来られれば、多少は面倒ですがハッキリ言って弱い部類です。それにコチラ側は五人パーティーで行動しているのに、開始から三十分の間に三パーティー分も死者が出るなんて、例年だったら多少は怪我をする人もいますが、死者なんて基本出ませんよ。」


 と、周囲を警戒しながら喋る時雨。それに、先導役として前を歩いていたユジンが「でも、この前話したドラゴノイドとかは別だ。」と補足の説明をした。


「つまり、この森にドラゴノイドやリザーシャーマンが潜んでいる可能性があるんだな?」


「そういうことよ。正直、リザーシャーマンならともかく、ドラゴノイドがいたら、大分きついわよ?」


「なんで?」


「リザーシャーマンの場合、雄輔の速さと、幸さんの遠距離魔法でどうにかなるんですが、近接格闘が得意なドラゴノイドは素早く、身のこなしが速いから、捉えるのは大変なんです。」


「えぇと。じゃぁ両方ユウスケが頑張るしかないんだね?」


「そうなんですが、ドラゴノイドの相手はなるべく避けるべきです。彼らは、竜には劣りますが、ブレスが使えます。」


「なっ!?」


 幸と時雨の会話を聞いていた俺は、思わず驚愕の声をあげた。ブレスとは、竜が使う攻撃方法で、無詠唱どころか、トリガーを言う必要すらない上に、威力は純人が使う上級魔術を優に上回るという。そんな物が相手では、確かに厳しい。


「なんて、噂をしてたら……来たぞ。」


 不意に、ユジンが口を挟む。すると、眼前に緑色の鱗に覆われた体表に、ズボンと言うには、頼りない茶色い布で下半身を筒み、磨耗している斧を握りしめた二足歩行のトカゲ人間、リザードマンがいた。


「っち。最悪ね。向こうも五匹のパーティーをくんでるわ!!」


ユリカは、舌打ちを鳴らして、長剣を抜き払いながら、悪態をついた。


「ひとまず撃退しましょう!雄輔さん、ユリカさんで前衛を!私とロリコンで、幸さんを援護して幸さんに大きな魔術をお願いします!!」


 時雨が指示を飛ばし、俺達はそれに従い行動を開始した。


「光牙の番兵、我が剣に宿り、向かい来る敵を打ち払え!『守りの光剣(ガディガルセリバー)!!』


 ユリカは、ワードを唱えながら長剣を鞘から抜き放ち、トリガーを叫びリザードマンに向かい駆け出す。


「千を貫き、万を切り裂く雷の剣、『雷神の』。」


 俺もユリカに続き早口にワードを唱え、トリガーを言い放つ。そしてリザードマンの群れに斬りかかる。


ーーー


 ほどなくして、リザードマンの群れの殲滅を終え、俺達は休憩を入れていた。すると突然、森の奥から悲鳴が聞こえた。「何、今の!?」とユリカが分かりやすく困惑の声をあげる。

「向こうからだ!」

 誰よりも速く、ユジンが声の元に駆け出す。それを、「ちょっ、待ちなさい!」とユリカが呼び掛けるが、勿論止まるハズもなく、森の中に消えて行った。

「ッチ、あの馬鹿!雄輔くん、私達より先に行って状況を見てきて!私達は、ユジンを追いかけるから!」

「分かった。幸、二人に付いていくんだぞ?」

「うん!」

 幸の元気な答えを聞くと、彼女の頭を撫でてあげ、蒼雷を再び纏い跳ぶ。

 声は断続的に聞こえ続けている。途中、ユジンの横を通り抜けたが、足を止めずに駆けた。その直ぐに、森が開けた場所が見えた。その瞬間、俺は戦慄を覚えた、嗅いだことのある匂いが、俺の鼻腔を擽ったからだ。コレは、血の臭い。人間の血の臭いだ。俺は、更に加速し、森を抜けると、斧を振りかざすリザードマンを、俺は肉眼に捉え、その足元には、別のクラスの女子がいた。両足があり得ない方向に曲がり、腕の力で後ろに引き下がり、恐怖に怯えた焦点の合わない眼で、無慈悲に、その斧を振り下ろそうとするリザードマンを見ている少女が。

「させるかアァァぁ!!」

 叫びながら、俺は跳んだ、そして、そのリザードマンに全力の力を込め、最高速度で跳んだ、人間では出しえない飛び蹴りを、リザードマンの顔面に喰らわす。

 直撃した瞬間、俺の足の裏に何かが砕ける感覚が走る。今までの速度のせいか、感覚がスローになっていた俺は、リザードマンの顔面が変形していく。まるで潰れたトマトのようになっていく、その姿を見た。目が吹き飛び、鱗は弾け、顔の骨がリザードマンの頭部を貫き、俺に返り血を被せながら、外界にその姿を晒す。そして、身体ごと、反対側の岩に向かい吹き飛んだ。そのリザードマンだった残骸は岩に衝突し、そのリザードマンだったものが、肉片になり、岩に赤い花を咲かせた。そして、宙を、舞う斧を左手で掴み、少女の前に着地する。


「あっあぁ……。」


 後ろの少女から、恐怖に犯された、言葉にならない声が聞こえた。改めて見ると、服が乱雑に引き裂かれており、必死に抵抗したのだろう、両腕も傷だらけになっていた。見たことがある。敵国に侵略された村や町で、幼い少女が大切なものを無慈悲に奪われたその姿に、助けても助けても、違う町、違う村で少女が泣いた。手遅れだった事も何度もあった。侵略者にとって、侵略地の人間は玩具に過ぎなかったのだ。さっきのリザードマンも、彼女を玩具にしたのだ。

 言い様のない怒りが、俺の全身を包んだ。無言のまま上着を脱ぐと、彼女に羽織らせ、さっきのリザードマンの仲間の方に目線をやる。リザードマンが8体。そして、彼女の仲間だったのだろう女の子の屍を、貪り喰う大型のリザードマンが1体。アレが、ドラゴノイドなのだろうか。いや、違う。アレに知能を感じない。ならただのデカイだけのリザードマンか。仲間が1匹死んだのに見向きもしないか。

「……殺す。」

 呟きと同時に、再びワードとトリガーを唱え、蒼雷を纏うと、左手の斧を1匹のリザードマンに投げつけた。そのリザードマンは、投げつけられた、斧をかわしたが、投げると同時に、走り出した俺の飛び蹴りを喰らい、砕け散った。断末魔すら上げられずに死んだリザードマンの屍を踏み台に、群れの中央にいる大型のリザードマンの下に跳び、空滅丸で斬り裂く。が、余りに大きいため、せの命を刈り取るまでには至らなかった。

「グギャァ!?」

 そして、斬られたことでやっと俺の存在に気付いたそのリザードマンは、のっそりと俺に向いた。その時、奴に向こう側が、俺の視界に写った。そこには、沢山の少女達だったものが転がっていた。俺の心が、烈火の如く燃えあがったのは、必然的であった。

 しかし、そんな事を知りえない他のリザードマンの内5匹が、斧を振りかざし、俺に飛び掛かる。俺は怒りに任せ、空滅丸を横凪ぎに振るうと、蒼い光の軌道を残し、リザードマン達の身体を真っ二つに斬り裂いた。蒼雷により、傷口が焼かれたせいで、血は飛び散らず、代わりに肉の焼けた焦げ臭い匂いが、辺りを満たした。その焼けた死体が、地面に落ちる前に、俺は走り出し、1匹唖然としているリザードマンを走り去り際に両断し、もう1匹を飛び蹴りで砕いた。残るは、今更立ち上がった大型のリザードマンのみ。自分以外が一瞬で全滅していることに驚いたのか、呆然と立ち尽くしているソイツに向かい、俺は再び走る。今度は、腹に空滅丸を突き立てる。また、コイツの汚い断末魔が上がったが俺は気にせず、突き立てた空滅丸を横凪ぎに振り、腹を捌く。そして、振り抜いた力を利用し、身体ごと回転させて、右腕を斬り飛ばす。間髪入れずに左腕も斬り、右足左足と続き、最後に尾も斬り飛ばすことで、完全な達磨にした。リザードマンは、痛みと恐怖で歪んだ顔をしていたが、だから何だと心で呟き、その顔面を踏み潰した。

「ふん、強いな人間。」

 突然声を掛けられ、声の下、俺が出て来た反対側の森のほうに視線を向ける。そこから出て来たのは、ドラゴノイドだった。直感だったが、コイツがドラゴノイドなのだろうと理解した。リザードマンとは格が違うのだ。背格好は同じなのだが、瞳が違う、理性ある者の眼をしていた。そして、斧ではなく、両刃の長剣を右手に持っていて、腰と肩に鎧をつけて、肘まである手甲で身を固めていたが、それぞれの鎧はバラバラで、それぞれ違うデザインをしているのが気になった。

「私の名は、ドラグノフ。二つ名は誇りある竜騎士。強き者のと戦うために来た。貴殿を強者とお見受け致し、決闘を申し込む。」

 長剣を構えながら、ドラグノフと名乗るドラゴノイド。正直、奴の佇まい、醸し出す雰囲気から、かなりの使い手だと理解していた。俺が勝てるかは五分五分なら良いところといったふうだ。しかし、今逃げれば、間違いなく、今だ恐怖に震える彼女が殺されるだろう。ならば、ユジン達が来るまで、時間稼ぎをするのが俺の仕事だ。

「俺は、水池雄輔。二つ名はないが、その決闘。受けよう。」

 俺は、自分の死を覚悟し、ドラグノフとの勝負に挑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ