幕間
翌日の昼前にコータスを除いたガルーザ達偵察部隊が帰還し、それから少し遅れてカーラの増援二千五百の兵士が到着した。
「よく来てくれた。ガルーザの報告によれば奴等の場所はこの地図の場所で間違い無いようだ」
「…兄さんこの地図はなんなんですか?」
「奴等がばら撒いた奴だよ。どうせこっちの戦力を削ぐための物だろうと思っていたんだが場所が正しかったからこちら側から離反者を求めているほど戦力がひっ迫しているようだ」
「なるほど……。それでいつ頃出陣するのですか?」
「そうだな……お前の兵士を休ませる必要があるから明日の朝になるだろうな」
「分かりました。それでは兵士達に休むように伝えてきます」
カーラはそう言うと部屋を後にしようとしたがカーラがドアノブを掴む前にそのドアが開いた。そのドアを開けたのはガルーザだった。その後ろにはナタールとコータスもいた。
「どうした? 何か用か?」
「実は昨日帰ってこなかった私の部下がつい先ほど戻ってきたのです。そして彼の言う分には明日に奴等がここに侵攻してくるとのことです」
「詳しく聞きたい。中に入ってくれ。カーラ、お前も聞いておけ」
「分かりました」
カーラは元いた席に戻り、ナタールとガルーザそしてコータスも部屋の中に入った。
「それで……どうやってそれを知ったのだ?」
「実は……」
コータスは自分が捕まった事と何故か何の束縛も無しに解放された事を伝えた。
「ふむ…それはどういうことだ? 私なら情報が伝わらない様に殺すが…何故奴は生かしたのだ?」
「さあ…? 何か考えがあるんじゃないの?」
「敵に自分達の居場所をばらすメリットは無いと思いますがね……」
「むしろ返さずに人質として扱った方がまだメリットがあったはずだ……なのに何故返したんだ?」
四人は考え込んだが答えは出なかった。すると不意にコータスが立ち上がった。全員がそれに気づき、顔をそちらに向けると明らかにコータスが正気でないことが分かった。目は白目を剥き、口は大きく開け放たれ両手はだらしなく垂れ下がっていた。
「どうしたんだ?」
「……」
コータスは答えなかった。その代わりに服の下から青い光が現れ、一瞬でコータスの体を包み込んだ。そして光が消え現れたのは毒々しい紫色の頭髪を持つネレスだった。
「ルーブクスの皆さんどうも。私の名はネレス。どうかお見知りおきを…」
「貴様! どうやってここに来た!」
カーラは立ち上がり、剣を抜いた。だがネレスは慌てる事無く続けた。
「あー今の僕に斬りかかっても無駄だよ。一時的にこいつの肉体を借りているだけだから傷つくのはこいつだけだ」
「カーラ、剣を収めろ。……それでネレスとやら、君は一体何の用でそんな魔法を使っているんだ?」
「それは君達に伝言があるからだよ。もうこいつが言ったと思うが我々は明日の朝ここを目指して進軍をする。勿論正々堂々と正門の東門を目指してね」
「何故……そんなことをばらすんだ?」
ランバは冷静に聞いた。
「それはね……正当なる勝利のためだよ。奇襲などの卑怯な作戦を使った所で民衆はついてこないからね。だから君達も我々を正々堂々と迎え撃った方がいいんじゃないのかな? 城の中に閉じこもっている臆病者呼ばわりされたくないのならね」
「ふん……。何とでも言え。私は私なりの戦術でお前達を倒す」
「そうか……それは残念だ。君達の顔が絶望に染まるのを楽しみにしているよ」
そう言っている途中でネレスの体が青い光に包まれ出した。
「どうやらこの肉体が限界のようだ。それでは明日戦場で会おう」
言い終わると同時に青い光が強くなったかと思うとネレス、もといコータスの体が爆散し、辺り一面にその肉片が散らばった。後に残ったのは粉々に砕け散った緑色のペンダントの欠片だけだった。
「魔法の使用方法は分かった……。けど……必要な魔力が多すぎる……。私でも一発撃てるかどうかが怪しいなんて……」
クルスは頭を抱えて呟いた。クルスの魔力の量はルーブクスにいる魔法使いの誰よりも多く、単独では使用することの出来ない魔法を容易く使用することが出来る他にその射程距離も長かった。
「他の魔法使いに協力してもらった所で打てる数はせいぜい二発……。外すことは出来ないわね……」
クルスは多人数で魔法を使用することで一人あたりの魔力の消費量を減らすことを考えたがそれをしても二発が限度であることを計算によって導き出していた。
「まあいいわ。どうにかしてドラゴンさえ潰してしまえば残りは雑魚だから何とかなるはずよね……」
クルスは楽観的に呟くと本を閉じてその狭い部屋を後にした。




