第1話 禁忌の目覚め
ブリブリ…ブリッ!!
オレはウンコを漏らした。
昨日食べた牡蠣に当たったんだろう。
幸い、下痢でないから一本糞だ。
この一本糞を我が聖剣とする。
……と、格好つけて決意したまでは良かった。
良かったのだが、ここで一つ致命的な問題にぶち当たった。
熱い。そして、普通に手が汚れる。
いくら我が魂の聖剣(※さっきケツから出たてホヤホヤ)とはいえ、生身の手でダイレクトに握り締めるのは人道的にどうなんだ。
オレのなかのちっぽけな倫理観が「それはやめとけ」と激しく警鐘を鳴らしている。
オレは周囲を見回した。
運良く足元に、聖なる教えがギッシリ詰まった
ありがたい新聞紙(断じて特定の宗教のアレではない)が落ちているのを発見する。
オレは聖なる新聞紙を厳かに拾い上げ、聖剣の持ち手部分にこれでもかと巻き付けた。
よし、これで完全無欠のグリップ(持ち手)が完成だ。
手触りはカサカサしているが、防御力は完璧。
オレの尊厳はギリギリ保たれた。「待ってろよ、冒険者ギルド……!」
オレは新聞紙仕様の聖剣ウンコを堂々と携え、街で一番賑わう冒険酒場ギルドの扉を勢いよく蹴り開けた。
――その瞬間だった。
「ぶふっ!?」「カハッ、あ、ガ、ハ……ッ!」
一歩足を踏入れた途端、酒場にいた筋骨隆々の戦士たちが、泡を吹いて次々と床に崩れ落ちていく。
おいおい、どうしたお前ら。
「目が、目がぁぁぁ! 鼻が、鼻が溶けるぅぅぅ!」「おい誰だ、ギルドの中にバイオテロ兵器を持ち込んだ馬鹿は――」
受付の可愛いお姉さんも、白目を剥いてカウンターの向こう側へ綺麗にスライディング土下座の姿勢で気絶した。
酒場を包むのは、この世の終わりみたいな阿鼻叫喚の地獄絵図。
そして次の瞬間には、静寂が訪れた。
臭さで、酒場の人間が全員死んだ。
嘘だろ。オレ、まだ聖剣を一振りもしてないんだけど?
ただいまの討伐数、ギルド丸ごと全員。
オレの冒険は、まだ始まったばかりである。




