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27.簡単なことだ。悪魔にデブはいない

「おもしろくねーな」

 とデビーが苦々しい口調で言う。

「おもしろくねー流れだ」

「あの巨漢クンに心当たりある?」

 とミロクが問う。

「いや、わからねー。でも、あれは人間だな」

「人間。あれがですか?」

 と、トキオがまさかという顔をする。

「おれのように人間の姿に化けているんじゃなく、あのでっかい野郎に悪魔が取り憑いている」

「なぜ分かるんですか?」

 とカヤは言う。


 ミロクの動画は実写ではなくアニメーションだ。

 多少のデフォルメがあるだろうし、細部も異なっているだろう。

 大筋としては実際にあったことの再現だが、1から10までリアルとは言えない(そうしてしまうとタイムパラドックスが生じるらしい)。

 それなのに、なぜデビーはあの巨漢が悪魔そのものではなく、悪魔に憑依された人間と断言できるのか?

 そもそもかーらの攻撃を受けて微動だにしないというのは、いかにも人間離れしているではないか。

「簡単なことだ。悪魔にデブはいない」

 そう、天使と同じように。


 それに、攻撃を受けて平気なのは、憑依した悪魔が筋肉のリミッターを外しているからだそうだ。

 人間には「火事場の馬鹿力」という言葉があるように、日常で使っている以上の力を発揮することができる。

 だが、それはあまりに筋肉にとって負担が大きい上に危険でもあるため無意識にセーブを加えている。

 悪魔はそのセーブを加えるリミッターを解除したということだ。

 だからこそ超人的な動きも可能になる。


 当然ながらリミッター解除による代償は大きくなる。

 必要でもないのに一つひとつの動作に満身の力をこめることになるので、そのぶん筋肉が痛むことになる。

 おそらくは筋肉痛では済まないくらいに……。

 デビーが面白くない流れと言ったのは、そのあたりのことを指しているのだろう。

 あの悪魔に対峙するということは、あの人間を傷つけることにつながる……。


 巨漢にあれほど手荒い扱いを受けたくーまとかーらだったが、命に別状はないようだった。

 さすがそのあたりは人外である天狗ゆえのことなのだろう。

 だが、あれから……そう、くーまが足をつかまれて地面に叩きつけられた後に何が起きたのかは分からない。

 それを知るためのお見舞いなのだった。

 

 二人が裏家業をしている病院に入院したということは、誰かによって運び込まれたということだ。

 おそらくサメタニ組の人たちによってだろう。

 そうなると、くーまとかーらを発見したのもサメタニ組の人たちということになる。

 たまたまあの場所に行き合ったのだろうか?

 それともくーまとかーらの帰りが遅いから様子を見に来た?

 前者は偶然にしては行き過ぎているし、後者も考えにくい。

 くーまとかーらとあの巨漢との戦いはそんなに時間がかかっていない。

 ほぼ瞬時に決着はついており、様子を見に行こうと思う間もない。

「考えていても埒が明かない。お見舞いがてら直接聞こう」

 ということになったのだった。


 命は取り留めたというものの、面会謝絶の可能性は高い。

 とは言え、もとより直接訪ねるつもりはなかった。

 サメタニ組の人と顔を合わせたくなかったし(相手はヤクザだ。関わりは持たないに越したことはない)、そもそもすんなりと面会に応じてくれるわけでもないだろう。

 なにしろ裏家業なのだ。裏家業には裏家業なりの守秘義務がある。

 ミロクが組長室の不動明王に宿ることで得た情報では、くーまとかーらは驚異的な回復を遂げているようだった。

 なので実際に会えれば会話はできる。


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