我慢しろと言われても、痛いもんは痛い
この度は更新が遅れてしまい、申し訳ございませんでした。
「ご命令通り、五黒大天衆の一人『窃盗神』のカネホシスを始末しました。・・・・・・ええ、きちんと死んだかどうか確認しました。」
無線機のような物で連絡をしているのは、崖から落ちたカネホシスにトドメの一撃を喰らわした男だ。そいつは、銀色の長髪に英国紳士のような格好をしている。男は、カネホシスの始末に疑問を抱いたのか、連絡相手にこう言った。
「しかし・・・よろしかったのですか?神星は探してもすぐに代えは見つからない貴重な人材。それを一回のミスで殺して捨ててしまうのは勿体無いと思うのですが・・・」
神星は全員がなれるわけではないので、男の意見は最もだ。それに努力すればなれるものでもない。男の疑問に連絡相手・謎の王の側近の女性は答えた。
「確かに貴方の言う通り、神星は貴重な人材よ。普通の人間では不可能なことでも、能力次第では可能にすることが出来る。・・・・・・でもね、神星であろうが普通の人間であろうがミスは許されないの。あのお方の理想の為にもね。」
そして、彼女はこう続けた。
「まあ、カネホシスの能力は神星の中でも比較的多いタイプの『ブースト系』。珍しいわけでも、大して凄いものでもない。異世界人一人始末出来ないような奴は生かしておいても役に立たないわ。・・・・・・それに、神星が例え一人残らずいなくなったとしても私達には『アレ』がある。そうでしょう?シルバー・・・」
シルバーと呼ばれたその男は、胸ポケットに手を入れて一つの紅い水晶玉のような物を取り出した。
「ええ、『コレ』があれば私は誰にも負ける事はありません。・・・そうだ。ついでに来たので、これから私が異世界人を始末しましょうか?」
腰に携えた刀に手を触れながら、シルバーは言った。
「いや、異世界人に関しては五黒大天衆の一人・アブラギッシュが向かっている。あのお方の命令を受けていない貴方が始末してしまったら、後から色々と面倒な事になる。そのまま帰って来なさい。」
「・・・分かりました。では、直ちにそちらに戻ります。」
側近の女性の言葉にシルバーは、反論する事無く素直に応じた。
そして、連絡を終え、無線を切ったシルバーはそのまま風の様に去って行った。
「店長!!」
その声と共に喫茶店『青い春』のドアが勢いよく開いた。そこには、桃太郎がフラフラになりながらも立っていた。彼の姿を見たマリーは目を大きくさせて驚いた表情になった。お客がいない事もあって、マリーはすぐに桃太郎の傍まで駆け寄った。
「ちょっ・・・どうしたのそれ・・・!!」
マリーは桃太郎の左手を指さした。ついさっきまで何とも無かったのに、この数時間でここまで酷くかぶれていたら、そりゃあ誰だって驚くだろう。
「『コゲチャドクガ』・・・とかいう毛虫のせいです。つまづいて転んだら地面にうじゃうじゃいて、気が付いたらこうなってました。」
さすがに『自分で付けました』とは言えないので、桃太郎は適当に取り繕った。
「『こうなってました』って・・・」
『そんな軽い感じで言われても・・・』と言いたそうな顔でマリーは桃太郎の顔を見た。
「とりあえず、消毒液とか包帯を貸してくれませんか・・・?」
「はいはい、ちょっと待ってね・・・」
そう言うとマリーは、二階まで包帯等を取りに上がった。桃太郎は待っている間、ずっと立ちっぱなしは辛いので、近くの椅子に腰かけて待つ事にした。ゆっくりと腰かけた桃太郎は、今回の戦いを振り返った。
「(今回は何とか勝てたが・・・・・・次はどうなるか分からねえな。今回だって相手が金に目が無い奴だったから、そこを突いて勝つ事が出来たのであって、本当は首絞められた時に死んでいたしな。こんな事なら、体育が柔道だった時にもっと真面目に習っておくべきだった・・・『俺の将来に柔道は必要ない』と最初っから決めてかかっていたから、技とか受け身の仕方とか忘れちまったよ。)」
桃太郎が心の中で後悔していると、二階からマリーが救急箱を持って下りて来た。
「はい、じゃあ左手出して。」
「・・・お願いします・・・。」
桃太郎はマリーに言われるがまま、かぶれている左手を出した。さっきよりも若干、酷くなっているような気がする。マリーは救急箱から塗り薬の入った容器を取ると、蓋を開けた。容器の中には、純白のクリームが入っていた。それを見た桃太郎は、『化粧品じゃあないのか?』と思ったが、『まあ薬局に売ってある塗り薬は大体白いか・・・』と、思ったので何も言わなかった。
マリーが結構な量のクリームを容器からすくい取ると、一気に桃太郎の左手に塗り出した。その瞬間、痛みが桃太郎を刺激した。
「いっ・・・!!」
「我慢しなさい。」
痛がっている桃太郎にマリーはぴしゃりと言った。
「(我慢せえ言うなら、もうちょっと優しく塗ってくれませんかねえ・・・)」
とはいえ、赤の他人の自分にここまでしてくれているので、桃太郎は文句を言わずに痛みに顔を歪ませながら我慢した。その光景は赤の他人から見て、とてもシュールな光景だった。
引き続き、この作品をよろしくお願いします。




