ある神官の成長日誌 〜ジュール編・そのに〜 03
「受け身の取り方って……ジュール、怪我だけはしないでね」
細身の男の名前は、バルナス。賢者の学院※の魔術師である。階級は導士補。
身長:175cm。体重:63kg。年齢はレイブンよりは少し下のようだ。肌の色は白色で、髪の毛は黒色の癖毛。切れ長の眼の中に光る金色の眼が、神秘的な雰囲気を見せていた。
長袖、長ズボンの上からローブを羽織り、手にはゴツゴツした杖を持っていた。
バルナスは、研究室にこもるよりも現場に出て知識を得るほうが性にあっているという、インドア派が多い魔術師のなかでは、ある意味での変わり者である。
講義の無い日は、自らの趣味と実益を兼ねて冒険者として活動しているのだ。
「さて、始めるぞ」
審判であるガロンが声をかけた。
「勝負は、寸止め。勝敗は、致命傷となる部位に剣先を当てた方が勝ち。両者、準備はいいか?」
こうして、模擬戦が始まった。
大方の予想通り、レイブンの圧勝である。大物喰いのロマンを捨てきれなかった面々は、ジュールの勝利に賭けていたらしい。バルナスが嬉々として、掛け金を回収していた。
「やはり、大物喰いは、ならず!!」
「無念っ」
残念そうなんだが、やはり暑苦しい。
ここで終われば、単なるエンターテイメントで終わるのだが……。このメンバーだと……そうは問屋が卸さない。
事態は斜め上の方向に向かって、急速度で吹っ飛んでいく。
「ん? あの灰色熊は、なんて言った?!」
灰色熊。誰かがつけたレイブンの通称である。大柄な身体と、灰色の髪の毛から……らしい。誰だか知らないが、抜群のネーミングセンスである。
「気合弾の魔法 を、牽制に使えと……言ったぞ!!」
「そんなこと、できるのか?!」
「わからんっ!」
観戦者たちは、楽しそうだ。
※賢者の学院とは……。
この世界では一番の権威を誇る教育機関であり、魔術師と賢者の育成を行っている。もともとは、とかく世間から嫌われる存在である魔術師の保護とお互いの学問の振興のために造られた組織である。
本部はサロストという東方一の大都市にあり、世界中の大都市に支部が設けられている組織なのだ。




