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銀のペンと魔法の回路 ―見習い修復師リリスティアと氷魔法を使う謎の少年、ときどき食いしん坊精霊のモフモフな日々。―  作者: 海優璃


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21.楽しいお昼ご飯

 さっきからブランの食べ方がおかしい……。


 一口分のオムライスを器用に浮かせて、自分の口の前まで運ぶ。匂いを堪能するのだろうか、しばらくその状態を保った後にパクっと口の中に入れて、今度は幸せそうな顔をして味わっているのだ。


 みんなその異様な光景に、ブランを凝視していた。リセが我慢できずに聞く。

「ブラン、前からそんな食べ方だった?」

「ん〜、どうだろう? スプーンを浮かせるより楽だし、食べやすいよ?」


 ブランの返事を聞いて、何だか諦めがついた。

「うん。ブランだもんね……」


 ラルフさんは、最初ブランにも、ブランが食事をすることにも、その食べ方にも驚いていたようだが、さすが上位の冒険者というべきか。

「精霊様は、やっぱ人間の常識じゃ測れないよなっ!」

 と笑っていた。


 以前、ブランは普段は気に入った人の前にしか姿を現さないと言っていた。

 ラルフさんの前に現れたということは、彼を気に入ったということなのだろうと思いたいが、オムライスの魔力に負けただけな気もする……と、こっそりリセは思ったのだった。


 気を取り直したラルフさんが言う。

「これ、すごい美味しいな。とろとろの卵も、このソース。えっと、ケチャップだっけ?」


 隣で、ジャンもおじいちゃんもうんうんと頷いている。

「本当だね! こんなに美味しくできるなんてビックリだよ!」

 リセも、もぐもぐ食べる合間に応じる。


「これだけでお店出せそうだな!」

 ラルフさんは相当気に入ったようだ。

「確かに。また食べたい。このお米が手に入ったら、また作ろうね」

 リセがジャンとブランに言うと、ラルフさんがちょっと必死な感じで頼んできた。


「えっ? その時は呼んでよ。何か欲しい素材あれば、言っといてくれれば探しておくよ」


 ラルフさんは食べ終わると、思い出したように改まってリセとジャンに向き直った。

「氷結のスクロールを二人で直してくれたと聞いたよ。威力も前以上だった。これで、正体はまだ分からないけれど、巨大魔獣をやっつけて来るな!」


「ジャンはしっかり剣の稽古をつけてやるから待ってろよ! リセも旅に出る予定があるなら体力作りを手伝ってやるよ」

「オムライスも最高に美味しかった。パワーが湧いてくるよ!」


 ラルフさんはぐっと力瘤(ちからこぶ)を作ると、「じゃあ、ちょっと行ってくるわ」と言い残し、その場で立ち上がって転移のスクロールを取り出した。キラキラと光る残滓を残して、彼は瞬時に消えていった。


 おじいちゃんが止める間もなかった。

「あいつ、やりよったな……。工房は大事なものがたくさんあるから転移禁止だと言って聞かせねばならん。そもそも、人の家の中から転移するなんてマナーがなっておらん」


 言いながら怒りが湧いてきたのか、強い口調でおじいちゃんがぼやく。ジャンがいる手前、念には念を入れて気をつけたかったという事情もあるのだろう。


「転移禁止の結界も追加しないとダメかね」

 おじいちゃんが肩を落とすと、「あっ! それ得意だから任せて〜!」とブランが申し出てくれた。

「なんて頼りになるの〜!」

 とリセがブランを撫で回したのは、言うまでもお約束だった。


 ブランが結界を見に行ってくれた後、リセはふと気がついた。

「あっ、おじいちゃん。ラルフさんから修復代もらうの忘れてた……」


「そうだったな。バタバタして忘れておった。金貨一枚と、何かいい素材でももらおうかね」

 おじいちゃんはニヤリと笑った。


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