表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/13

お隣さん事情




「ロックウイングです」

「挨拶ならよかったけどさあ」


 オペレーションルームに戻ると、先に奏と郁が待っていた。


「ローパスって低空飛行で、翼を振る動きは挨拶なんです」

「知らんもん」

「上手にやれるのはさすが適性Aの亜里沙ですね」

「そうなのかー」


 そして俺は銃座に取りつけてあったキューブを岬さんに渡した。


 前回はそれを忘れて、岬さんが取って来てくれたのだ。


 しばらく待つと亜里沙もオペレーションルームに戻った。


「無事に帰還しました」

「ご苦労様。挨拶してくれたんだな」

「はいっ。無事にケイオスゴブリンを先場司令が倒してくれたと聞いたので」

「ああ、まあね」


 でもって一応亜里沙のモチベーションポイントを確認すると「スキンシップ」に戻っていた。


 安心しつつ、亜里沙と郁を撫で撫でする。


 そして次は奏。前回の続きってことで、3巻と4巻を買ってあげた。


「これでよしと」

「先場司令」

「ん?」

「先場司令の倒したケイオスゴブリンにレア種が混じっていました」

「おお。ってことは?ロット引ける?」

「いえ、まだですね。ケイオスゴブリンはそもそも雑魚なので」


 でしょうねえ。


 機銃で撃った時からなんとなく察してしましたよ。


 明らかにブラックハウンドよりも格下でしたよ、ええ。


「先場司令の射撃の腕前はどうなんですか、岬さん?」


 お?


 亜里沙が禁断の質問をぶつけたぞ。


 俺、固唾をのんで見守る。


「そうですね。照準は悪くないです。射程内に入った敵の周辺に着弾しています」

「おお」


 一瞬喜ぶ俺。ええ、一瞬だけでした。


「ただ命中率そのものはそれほどですね。着弾地点を見ての修正力がまだ足りないようです」

「ガンバリマス」


挿絵(By みてみん)


 そして俺の袖を持つ人が一人。


「郁?」

「大丈夫です。先場司令はお料理が上手ですから」

「お、おう」


 くうっ。染みるぜ。


 思わず頭を軽く抱いてぽんぽんしてしまった。


「ふわあ」

「あ、すまん」

「い、いえ」


 郁が赤い顔してハンガーへ行ってしまった。残りの二人も笑みを浮かべながらハンガーへと向かった。


「なんか俺、やっちゃった?」


 岬さんに聞くが、彼女は首を振った。


「全然大丈夫だと思います」

「そう言ってもらえると安心だよ」

「親愛や感謝の情で行った行動だと郁も分かっているはずですから」


 うん、そこ大事。


「次は夕方だな」


 定期便はだいたいそのあたりで来る。そう思ったところで警報が鳴った。


「もう不定期便かよ」


 レーダーの光点がいつもと違う方向から来ていることに驚きつつ言った。


「あ、いえ。違います」


 警報がすぐにやんで、光点の色が変わった。


 ん?違うのか?


『不定期便ですか?』


 亜里沙がハンガーから聞いて来る。


「違います。友軍です」

『了解』


 えっと?


「友軍?」

「こちらからですから、恐らく「エリア8.20」からだと思います」

「ちょうどうちらの後方基地だな」

「はい、そうです」

「一体なんだろう?」

「恐らく司令会議の前に先場司令のことを確認しておきたいのではないでしょうか?」


 ん?


「ってことは司令が乗ってるってこと?」

「自ら操縦する司令もたまにいますが、恐らく複座の戦闘機に乗って来ると思います」

「なるほど」

「ああ、ファントムⅡです。複座機なので、間違いないでしょう」

「出迎えた方がいいかな?」

「先場司令の判断でよろしいかと」


 その判断が出来ないのですよ。


「どんな司令かは知らないの?」

「直接会ったことはありませんが、女性の司令だとはうかがっています。資料にも書きましたが、相当なやり手です」

「あー、そうか。女性の司令もいるのか」


 自分が逆の立場だったらと想像する。


 うん、出迎えられた方が嬉しいな。


「じゃあ、出迎えて来る」

「どうぞお気をつけて」

「お、おう」


 結構気を付けるべきところなのか。


 ハンガーの前で待機する。


「友軍機ってことはどこかの基地からですか?」


 亜里沙が並んでくれた。


「たぶん「エリア8.20」からだろうって」

「なるほど。後方の基地ですね」

「なんでも女性らしい」

「へえ」


 ファントムⅡと言われた機体が着陸して来る。


 見事な感じだ。


 ハンガーの前まで来るとコクピットが開いた。


 郁と奏がはしごみたいなのを持って来た。


 後ろのコクピットからだけ人が降りて来る。


「若い女性だ」

「そうですね」


 女子高生か女子大生くらいの女子がこちらへ歩いて来る。


「エリア8.20の司令、大島です」

「エリア8.8の先場です」


 なんか敬礼されたので、見よう見まねで俺も敬礼で返した。


「えっと、オペレーションルームにご案内しましょうか?」

「いえ、ここで結構です。すぐに戻りますから」


 立ち話か。


 結構エンジンの音がうるさいんだが。


挿絵(By みてみん)


 そう思ったら、ずいっと距離を詰めて来た。


 ち、近いっす。


「司令会議の前にどんな司令が着任したのか確認に来ました」

「あ、はい」

「前任の司令が屑だったので」

「ああ、らしいですね」

「ちなみに司令の適性は?」


 言っていいのかな。いいよな?


「適性はCです」

「ふむ。こちら、エースですか?」


 視線が隣の亜里沙に向く。


 エース。つまりエースパイロットかと聞かれたってことか。


「そうです。うちのエースの亜里沙です。パイロット適性はAです」


 俺がそう紹介すると、少し亜里沙が嬉しそうだった。


「へえ、適性Aとは」


 そして大島司令の視線はハンガーへ。


「機体はセイバーとスターファイヤですか」

「そうです」

「パイロットは3名?」

「そうです」

「なかなかちゃんとしていますね」

「はあ、まあ、なんとか」


 なんか認められた?


「モチベーションポイントの管理は出来ていますか?」

「あ、はい。それはもちろん」

「食事も作ってくれます」


 亜里沙が笑顔で割って入った。


 それ、今、言うこと?


「へえ、先場司令が自ら?」

「そうです。とっても美味しいです。ぜひ昼時に来てください」

「分かりました。前向きに検討します」


 検討するんかい。


「あのですね」


 やはり俺がどんな司令か見極めるために来てくれたのだとしたら言っておかないといけないだろう。


「何でしょう?」

「俺、イレギュラーなんです」


 大島司令が驚いた顔をしている。


「それをわざわざ私に告白した理由は?」

「司令会議の前に俺のことを確かめに来てくれたのだとしたら、言っておかないといけないかなって思いました。司令会議の場で知ることになるよりいいでしょう?」

「もちろん、そうです。誠実な対応に感謝します」

「いえ、そんな。イレギュラーなんで失礼なこととか言ったりやったりしちゃうかもしれないんで」

「言っていただいて助かります。私としては出来るだけサポートしたいと思います」


 おお、なんと嬉しい言葉。


「感謝します」

「一つ忠告を」

「はい、お願いします」

「エリア8.9の緑司令は性格が悪いです。ねちねち粘着されるかもしれませんが、華麗にスルーしてください」

「うえ。そんな司令もいるんですか」

「います。特に隣接しているので、今後関わることもあると思いますので」

「ありがたい情報です。ちなみに反対側のエリア8.7の司令はどんな方ですか?」


 どうせならそれも聞いておきたい。


「どうせ分かることなので、教えます。椎内空です」

「ん?」

「ええっ」


 亜里沙驚愕。俺、きょとん。


「え?知らないんですか?椎内空ですよっ」

「し、知らない」


 亜里沙のテンションについていけない。


 誰よ?


「シンガーソングライターの椎内空ですよ?」

「うん、知らない」

「マジですか」


 ちょ、何その視線。


 やめて、亜里沙。


 俺、音楽とかほとんど洋楽しか聞かないんだって。


「なんかすまん」

「まあ、そう言う人もいるでしょう。性格は少しエキセントリックなところはありますが、さばさばしています」

「はあ、そうですか」


 要するに警戒するような相手じゃないってことだな。


「何はともあれ真面目そうな司令で良かったです。前は屑でしたから」


 大島司令、またそれ言ってる。


 よほど評判悪かったんだろうなあ。


「はあ、がんばります」

「連係が必要な場面があれば、遠慮なくお互いに連絡を取りましょう」

「ぜひお願いします」


 なんか頼りになりそうだ。大島司令。


「亜里沙」

「はい」

「先場司令を支えてあげてね」

「はい、もちろんです」


 うん、嬉しいぞ。泣きそうだ。


「では、これで」

「訪問ありがとうございました」


 またお互いに敬礼して短い会合は終わりとなった。


 大島司令がすたすたと颯爽とファントムⅡに近づいて乗り込んでいく。


 ああ、パイロットは男性なんだな。


 笑顔で会話してる。


 でもって俺達は手を振って大島司令を乗せたファントムⅡを見送ったのだった。


 なんでもあれは複座だけどとてもいい機体らしい。


 うちのスターファイヤとは雲泥の差なんだってさ。


 ごめんね、なんか。





「ファントム無頼」もリスペクトです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ