スターファイヤはハズレですか?
結局亜里沙はジャイアントバットとあっという間に撃墜して、戻って来た。
ダメージはゼロ。
燃料と銃弾、整備の費用を差し引いても今回は、ポイントはプラスなんだと。
「がんばったな」
「はい」
そんでもってまた亜里沙を撫でる俺。
こんなんでいいのか。
まあ、亜里沙のにこにこの表情を見ていたら、いいみたいだ。
「さて、先場司令」
「はい、岬さん」
「今後の方針なのですが」
「はい、お願いします」
またホワイトボードだな。
「まず、機体とパイロットの補充です。その後にメカニックです」
「うん、だろうね」
「セイバーは基本的には空戦向きの機体になります」
「空戦ってことは、飛んでる敵と戦うってことだよね?」
「そうです。一応爆装も出来ますが、ああ、爆装は爆弾をぶら下げて行くことです」
「爆弾?え、でも、周囲は「ケイオス」だろ?」
「そこを渡って来るデイモンが結構な頻度で出現します」
「なんとまあ」
デイモン器用だな。分解されないのか。
「機銃掃射である程度は掃討できますが、やはり爆弾が効果的です」
「ふむ」
「つまり爆弾を落とすのが得意な機体が欲しいってことか?」
「その通りです。亜里沙一人で運用することも不可能ではありませんが、疲労度やモチベーションポイントを考えると、やはりもう一人パイロットがいないと厳しいでしょう」
「うん、そこは納得できるよ」
ただ疑問がある。
「あの、ロットで、その爆弾が得意な機体ってのを選べるわけ?」
「ダメですね。ロットはあっちの世界でガチャみたいなものですから」
「だよねえ」
「もう少し司令が経験を積めば、ロットの数倍のポイントを使って、機体を指定して購入できるようになりますが、まだ無理です」
「ああ、そんな仕様なんだ」
ってことは現状ではロットしかないってことじゃないか。
「ロットを引くしか機体を手に入れる方法は、現状ないってことでいいんだね?」
「そうです。現状は」
「今、ロットを引くのは?」
「ポイントを考えると、もう3回ほど亜里沙単独で定期便を倒してもらえれば、でしょうか」
「その途中で爆弾が必要な敵が来たら?」
「亜里沙にセイバーで頑張ってもらうしかないですね。一応爆装出来ますから」
「負担になるんじゃないか?」
「こちらに侵攻する間隔によりますね」
「何とかなる?」
しかし俺の問いに岬さんは答えてくれなかった。
場合によっては厳しいってことか。
「2機を所有するとなるとメカニックの不在が問題になります」
「そうだよね」
さっき整備が必要って言ってたもんな。
「メンテナンスに時間が掛かるようになります。せっかく2機所有していても、同時に運用できないことになります」
「そりゃ意味がないな。ってことはロットで機体とパイロットとメカニックを引かないといけないってことになるよね」
「そうです。あと」
「あと?」
「初回のロットは必ず単座戦闘機が出ますが、次からは場合によっては複座型戦闘機も出ます」
「複座ってことはパイロットが2名必要ってこと?」
「そうです」
「ってことはパイロットのロットを2回引く必要があるってことか」
「十分に能力を発揮するためにはそうですね」
「き、厳しいね」
なんか転生ものみたいな話で説明をされたから、チートで楽々攻略みたいな感じになるのかと錯覚していたよ。
この基地の運営、すごく大変なんじゃないか?
◇
『亜里沙、定期便は今回うちじゃなかったみたい。戻っていいわ』
「はーい」
私はセイバーのコクピットから降りて指令室に戻った。
「待機ご苦労様」
「はい」
こんな場合でもちゃんと先場司令は私を撫でてくれた。
自分のモチベーションポイントがスキンシップなのは、きっと幼い頃に父親を亡くしているからだろう。
母も愛情をもって育ててくれたが、母子家庭なので夜もアルバイトをしていたからスキンシップは少なかった。
自分のモチベーションポイントがスキンシップだと知って、ちょっと恥ずかしかったけれど、先場司令は気にしないで私を撫でてくれた。
運動神経に自信のある私だったから、パイロット適性がAだと分かっても、妙に納得した。
何しろ長野県の田舎だ。毎日チャリ通学で、部活もバスケ部だった。県代表の一歩手前で負けちゃったけど。
視力もとってもいいしね。
デイモンに地球を滅ぼされたらたまならい。
地球なんて規模でこれまでものごとを考えたことはなかったけれど、あの高校生活の日常が消えてしまうのは困る、って言うか許せない。
アカシックレコードから説明を受けて、この戦いに身を投じるかと確認された時にも、二つ返事で了承した。
私に出来ることは、しっかりとやり遂げたい。
そう思っている。
◇
「これで定期便が2回連続ハズレですね」
ジャイアントバットの定期便がお隣の基地、「エリア8.7」へと向かって行くのがレーダーに映っていた。
「珍しいの?」
「まあ、隣にずれていくことはたまにありますが、何も今じゃなくてもと思います」
「俺が、不運なのかな」
「いえ、そう言うつもりではありません。すいません」
岬さんに謝られちゃったよ。
「でも「ウェイブ」が来ることを考えたら、戦力の充実は喫緊の課題だもんな」
「そうですね」
「ウェイブ」
いろいろと岬さんから説明を聞いて知ったことの一つである。
デイモンが相当数な数で一斉に押し寄せて来る現象だ。
普段は定期便と少しの不定期発生なのだが、稀にこの「ウェイブ」が起きるのだと言う。
その「ウェイブ」にも規模があって、記録によれば大規模ウェイブによって、エリア8は陥落の危機に陥ったことがあるらしい。
ちなみに岬さんはその時はまだ着任していなかったそうで、岬さんが在任中はまだ大規模ウェイブは発生していないとのことだった。
「あ、レーダーに感アリ」
赤い点は1つだけ。
「亜里沙、出撃を」
「了解ー」
亜里沙が走ってハンガーへ向かった。
「デイモンは「ギガントクロウ」と判明。その数1体」
『聞こえたー。離陸しますー』
爆音を響かせてセイバーが離陸して行った。
「ギガントクロウは大きなカラスの形のデイモンだよね?」
「そうです」
レクチャーを受けた中にあった。それほど強いデイモンではない。
嘴や爪の攻撃をして来るが、たぶん亜里沙の操るセイバーならば大丈夫だろう。
『タリホー』
視認したと亜里沙から報告が上がる。
『ねえ、白いよ。これレア種じゃない?』
「気を付けて、速いわよ」
『ラジャー』
レア種が登場した。
レア種は速度が違ったり、防御力が高かったり、攻撃方法が違ったりする。
ドキドキしたけれど、赤い点はすぐに消えた。
『キル、リターントゥベース』
「お見事」
そう岬さんが言ったが、また別の赤い点が灯った。
「亜里沙、新手よ。同じく「ギガントクロウ」。方向は10時方向」
『ラジャー』
そしてなんと今回もレア種だった。
それもあっさりと亜里沙が倒した。
「これは当たりを引きましたね」
「当たり?」
「ポイントが高いんです、白いレア種は」
「そうなのか」
「レコードキューブで確認しないと確かなことは言えませんが、これでロットが引けると思います」
「おお。定期便は外れたけど、これでチャラだな」
「おつりが来ます」
岬さんが嬉しそうだ。
戻って来た亜里沙を撫で撫でして、岬さんが受け取ったレコードキューブで確認するのを見守る。
「やはり当たりでした」
「と言うことはロットが引ける」
「はい、お願いします」
亜里沙も居住区に戻らずにロットの結果を確認するために指令室に留まっている。
「じゃあ、まず機体から」
「はい、お願いします」
「単座出ろー」
そう言いながらぽちっと押す。
表示された機体を読む。
「えっと、スターファイヤ?」
「ああ」
ああ、やってしまった。岬さんの表情で察してしまった。
「まさか、これ」
「ええ、複座です」
「す、すまん」
「仕方ありません」
「まあ、でも、F-94なら取り敢えずパイロットだけ乗せて、レーダーはうちのF-86で担当すれば運用できるでしょ?」
亜里沙が言った。
そうなのか。
「まあ、背に腹はかえられませんね」
「あまり適性な運用とは言えないけれど、なんとかなると?」
「ただ、このC型の機体は機銃がないんです」
「ん?」
「空対空ロケット装備なんです」
「ロケット弾をばばばーって撃つタイプってこと?」
「そうです。機銃の弾に比べて費用がかかります」
「あー、ポイントの消費が激しいってことか」
「その通りです」
「なんかすまん」
「いえ、最初にA級の亜里沙を引いたのですから」
「まあ、そうか」
A級はなかなか出ないらしいしな。
「当てるのも難しいらしいから、私がスターファイヤに乗ろうか?」
「それも考えられますが、まずは次のパイロットをお願いします」
「お、おう」
岬さんに促されてぽちっとな。
「あら、また女子だ」
そしてドアがガチャリと開いて、女子がひょこっと亜顔を出した。
「えっと、着任しました。でいいのかな?」
「いいですよ。ようこそ、郁」
「あ、ども。曽々木郁です」
またセーラー服女子高生だった。
いや、女子中学生か?ちっこいぞ。
「パイロット適性C、メカニック適性C。これは逆に当たりですよ、先場司令」
「あ、メカニック適性があるんだ」
「そうです。これはラッキーです」
「よろしく、郁」
「はい、よろしくです」
「では、郁。現状をレクチャーします。ちなみに先場司令はイレギュラーです」
「わあ、そうなんですか。大丈夫なんですか?」
「私達で大丈夫にするんです」
「あ、うん」
なんか、すまんな、みんな。
その後、岬さんから郁に現状の説明があった。
その結果、やはり、セイバーには郁が乗り、攻撃を命中させるのに技能が必要なスターファイヤには亜里沙が乗ることになった。
「じゃあ、俺、昼飯作って来る」
「はい、お願いします」
3人は機体を見にハンガーへ行くと言うので、俺はそろそろいい時間なのでキッチンへと向かうのであった。
なんと地味な機体をチョイスしたもんだと、自分でも呆れています。




