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とりあえず親子丼




「赤字なんです」

「え?」


 レコードキューブについて説明をしてもらっていたら、岬さんが言った。


挿絵(By みてみん)


「デイモン倒したのに?ポイント入るんだよね?」

「たった1体の雑魚ですから。普通は群れで来ます。燃料代としてギリギリペイで、弾薬分は赤字です」

「ああ、そうなのかあ。そのポイントの管理とかは岬さんに任せることは出来るのかな?」

「現状、仮でそうなっていますが、先場司令が管理することも可能です」

「あ、いや。まだよく分かっていないから、俺が必要だと思う時だけ使わせてもらうってことで」

「分かりました。ポイント使用の権限の主を私に移行します。そこで了承を押してください」


 俺がタブレットを見ると、そこにボタンが出ていたので、ぽちっと押した。


「では、基地の維持管理、所有機体の整備や弾薬などの管理は、私がしばらく行います」

「お世話になります」

「仕方ありません。イレギュラーですから」


 その言葉がまた出た。


「その、イレギュラーってやつなんだけどさ」

「はい」

「説明してもらっても?」

「もちろんです」


 またホワイトボードにいろいろ表示される。


「デイモンがアカシックレコードを侵食しようとしている話はしました」

「うん」

「その浸食を止めようとしているのも、また、アカシックレコードなのです」

「すまない。アカシックレコードが分からないんだが」

「そうですね。アカシックレコードとは一般的に宇宙の誕生から現在までの記録のことを指します。「宇宙の図書館」や「生命の書」などとも呼ばれています」

「スピリチュアルな感じ?」

「掠ってる感じですかね」

「掠ってんのか」


 まあ、いいや。どうせ詳しく聞いても分からない気がするしな。


「デイモンに抵抗しているのは、私達が住む地球のアカシックレコードです」

「地球の記録ってこと?」

「そういうイメージです。どちらかというと地球の存在でしょうか」

「地球の存在を消そうとするデイモンに、地球が対抗していると?」

「いい感じです」


 なんか初めて岬さんに褒められた気がするぞ。


 もっと褒めてくれていいですよ、岬さん。


「アカシックレコードは、デイモンに対抗するために、現在最も地球上で戦闘力を有する私達人類に白羽の矢を立てました」

「なるほど」

「しかし宇宙人が攻めて来た映画みたいに現実世界で戦うわけではありません。この世界、「アストラルスペース」でデイモンに抵抗する必要がありました」


 ここは「アストラルスペース」と呼ばれる世界なわけだ。


「転生ものの小説を読んだことは?アニメとか?」


 突然話題が変わったぞ。


「ちょびっとだけだな。不慮の事故で死んだら転生するみたいなのだろ」

「そうです。その時に作品によっては人知を超えた存在、神のような存在が現れて、主人公にチート能力を与えるような展開があります」

「分かる。え?まさか、俺、死んだの?」

「死んでいないはずです」

「そっか。良かった」


 別にトラックに轢かれそうな子供を助けたりしていないしな。


「選ばれた人物は、アカシックレコードから説明を受けます」

「あー、それ、俺、受けてないんだよな」

「そのようですね。その途中をすっ飛ばした者が、時々この「アストラルスペース」に出て来ます」

「それが俺だと。え?ってことは岬さんやさっきの亜里沙も?」

「そうです。アカシックレコードからの説明を受けて、ここに来ています」

「あー、だから亜里沙は出て来すぐに何をするべきか分かってたわけか」

「その通りです。パイロットとしてロットに登録される人は、パイロットの技量もマスターしてこちらに出現します。元々の適性などによって、そのランクがS級からABCDEと分けられています」

「Eとか悲しいな」


 しかし岬さんは首を振った。


「パイロットとして出て来る人は、パイロット適性はC級以上になっています」

「え?じゃあ、E級は実質いないってこと?」

「違います。例えばメカニック、いわゆる整備士ですね。メカニックとしてロットに登録されている人が、メカニック適性Aで、パイロット適性Eという感じで出ます」

「あー、なるほど。って言うかメカニックも必要なのか」

「はい、現状最低限の整備しか行われていません」

「あ、一応いなくても機能はするんだ」

「最低限、ですから」

「あ、すいません」


 めっちゃ睨まれた。


「また、適性は経験を積むことでランクアップすることがあります」

「あ、成長とかあるんだ」

「人間ですから」

「あ、はい」


 こっちではそう言うのないのかと思った。


「ひょっとして俺、司令適性とかある?」

「あります」

「あるんだ」

「はい」


 沈黙。


「えっと、教えてはくれない?」

「ご自分で見られます」

「あ、これね」


 俺はタブレットを操作して自分自身の項目をチェックした。


 あ、C級でした。


「さっき、パイロットはパイロット適性Cが最低ラインだって言ってたね」

「はい」

「ってことは司令適性もC級が最低ライン?」

「その通りです」


 脱力するしかない。


「すまん」

「いえ、卑下する必要はありません。経験していきましょう」

「あ、えっと、前任者はなぜいなくなったわけ?」

「ポイントが枯渇しました」

「あらまあ」

「いわゆる詰んだという状況です」


 ふと疑問がわく。


「その、岬さんってサポート役としてとても優秀に見えるけど、岬さんがいてもその司令はダメだったってこと?」

「はい、ご自分でポイントを管理すると言って、パイロットのロットをずいぶんと熱心にされて」

「あー、ハーレム願望かあ」


 なんか分かるけれども。


「えっと、ここが「エリア8.8」ってことは、他にもあるわけだよね、その基地が」

「はい、このように」


 ホワイトボードになんか出た。


「この点がそれぞれ基地?」

「そうです。ここは「エリア8」と呼ばれるデイモン迎撃ラインのひとつとなっています」

「デイモンって歩いて来るのはいないの?」

「ああ、外を見てください」

「外?」


 俺は立って窓際に歩いた。


「海?ここは島なのか?」

「海に見えますが、「ケイオス」と呼ばれています」


 遠くからだと少し濁った海に見えるなあ。


「粘性のある物質で、落下してそのままでいると溶けます」

「酸性ってこと?」

「違います。分解酵素みたいなのがあると思ってください」

「ってことは戦闘機が墜落すると溶けて死ぬってことか」

「そうですね」


 命がけなのか。


「ああ、でもこちらでは死にますが、現実世界では別に何も起きないはずです」

「え?そう言う仕組みなんだ」

「私はまだ死んでいないので分かりませんが。と言っても、こちらの世界でのことは現実世界では一瞬の出来事で、何も覚えていないはずです」

「理屈は分からないけれど、結果は理解した」


 さらにホワイトボードの基地が点滅した。


「ここ「エリア8」には全部で、前線基地として12個。後衛基地としてさらに12個の基地があります」

「この二重の半円状に配置されてるやつだな」

「この円の中心から基本的にデイモンが沸いて来ます」

「沸いて来るのか」

「はい。その頻度などについては追々」

「分かった」


 今度は建物の図が表示された。


「私達がいるここが司令部となります」

「その光ってるところだな」

「そうです。ここがハンガー」

「ハンガー?」

「機体の倉庫だと思ってください」

「わかった」

「こちら居住区。ここが共有スペースで、食事などはここでします」

「ああ、食事な」

「食事は一日に一回ですね」


 嘘?マジで?


 俺の顔を見て、岬さんがくすっと笑ったような気がする。


「そんな表情をしないでください。食事は一日一回で十分なんです。空腹感がそのくらいなんです」

「あ、そうなんだ」

「食べようと思えば食べられると思いますが、きっと満腹感がすごいですよ」

「あー、とりあえず、一日一食で試すよ」

「そうしてください。食糧はポイントを使うので」


 それならなおのこと無駄遣い出来ないな。


「一日の感覚は24時間?」

「そうです。そこの時計は地球と同じです。夜も来ます」

「食事は?」

「お昼の12時に1回というのが普通です。ちなみに睡眠もとる必要があります」

「なるほど。えっと、料理は出来るのかな?」

「キッチンがありますから出来ます」

「俺が料理しても?」

「司令が?まあ、構いませんが」

「小腹が空いた感じがあるんだ。何か作って食べてもいいかな?」

「どうぞ。ご案内します」


 岬さんに連れられて共有スペースに行くと、会議室みたいな、食堂みたいな感じだった。


「あの奥が居住区です。あの一番端の部屋が司令の部屋です。隣は私で、その隣に順にロットで引いたメンバーが入っています」

「あそこだけランプが緑になってるのは、亜里沙が入ったから?」

「そうです」


 後で部屋の中を見せてもらうとしよう。


「キッチンはこちら、冷蔵庫、それからいろいろな物がそちらの棚に」

「ふむふむ」


 ガスコンロみたいなのが5口もあるぞ。


 鍋も大小いろいろ揃ってる。社員食堂のキッチンみたいな品揃えだろうか。


「地球では劣化する食材でも、冷蔵庫に入っている限り劣化したり腐ったりしません」

「すご」


 そう言って冷蔵庫を開けるが、すっかすかだった。卵、それから鶏肉、豚肉が少しか。


「え?食材は?これだけ?」

「前任者が」


 岬さんがそう言って一つの棚を岬さんが開けると、インスタント食品とレトルト食品がどっさり入っていた。


 あー、察し。


「岬さんはお腹減っていないの?」

「まあ、少し」

「今日の分はまだ食事していないんだよね?」

「していませんね」

「じゃあ、一緒にどう?」

「…分かりました」


 なんか警戒されてる?信用されてない感じか。


 もう一度冷蔵庫を開く。


「米はあるんだよね?」

「レンチンのですね」

「あー」


 さっきの棚にどっさりあったな。


「可能なら、お米、無洗米の買っておいてくれるかな」

「司令の腕前を確認してからでもよろしいですか?」

「なるほど。いいよ。亜里沙の分も作っていいよね?」

「いいと思います」


 じゃ、3人前だな。


 俺はレンチン用のご飯パックを2つ出した。


 電子レンジも3台あるぞ。


 そこにご飯パックを入れる。


 そして冷蔵庫から卵と鶏肉を取り出した。


 調味料は、ここか。調味料の品揃えはすごいじゃんか。これを使わないなんてもったいない。


「親子丼ですか?」


 岬さんにめっちゃバレてた。まあ、この食材だからな。


 調理をしつつ、パックご飯をほぐしながら丼に移し替える。


 親子鍋で鶏肉を出汁のもと、さらにめんつゆを入れて煮込み、そこにとき卵を流し込む。最後にもう一度めんつゆを少しだけ。


 いろどりが寂しいがいいものがないので、仕方なく味付けのりを砕いて少し乗せた。


「亜里沙を呼んできます」


 岬さんが亜里沙を呼んで来る間に、テーブルに親子丼を三つ並べる。


 箸と、一応スプーンも用意する。


 お吸い物はインスタントがあったので、それで間に合わせた。


挿絵(By みてみん)


「あー、すごい。え?これ、司令が?」

「まあね。お吸い物はインスタントだよ」

「お手並み拝見します」

「親子丼くらいなら楽勝だよ」

「いただきます」

「いただきます」


 とは言え、やはり人に振る舞う時は緊張するな。


「あら、美味しい」

「美味しいです」

「良かったよ、口に合って」


 俺も親子丼に手を付ける。


 うん、まあ上出来。玉ねぎとか三つ葉とか、もうちょっと食材がそろっていれば、さらに良くできる気がするぞ。


「司令ってコック適性あるんですか?」

「ん?そんなのあるのか」


 調べてみるが、俺のパーソナル情報にそんなものは無かった。


「ないな」

「えー、そんなはずないですよ。こんなに美味しいのに」

「亜里沙、実は先場司令はイレギュラーなの」

「え?」


 亜里沙が固まって俺を見た。


「うん、どうもそうらしい」

「わ、分かりました。がんばりましょう」

「ああ、がんばるよ」


 なんか俺だけいろいろ分かってないのが、また実感させられるな。


「で、どうかな?合格かな?」


 俺は岬さんに聞いた。


「合格ですね。無洗米、取り寄せておきます」

「ありがとう。後で、食材とポイントについても教えて欲しい」

「わかりました。司令は食にこだわる方なんですね」

「あ、うん。まあね」

「では、一定のポイントを先場司令の裁量で使えるようにしておきます。それで必要を思う食料品を購入して下さい。無洗米だけは買っておきますので」

「ああ、分かった」


 ちなみに自炊大好き。


 お取り寄せも大好き。


 アレンジレシピも大好きな俺である。


 もっとも腕前は他人に披露する機会がほぼなかったので不明だが、自分で作って美味しいと思えていたから、そこそこはあるんだと思う。


 ちなみに生ごみはダストボックスみたいなところに入れれば良くて、皿などの洗い物は洗浄機があって、しかも洗い残しなしのパーフェクト洗浄らしい。


 細かいことだが、ありがたいな。


「亜里沙、そろそろ定期便が来るかもしれないわ」


 親子丼を食べ終わると岬さんが言った。


「あ、そうなんだ。じゃあ準備しておく」


 なんだ、定期便って?


 恐らくハンガーへと向かう亜里沙の背を見送って、それから岬さんを見た。


「定期便は、デイモンがほぼ定時に来ることです」

「律義?」

「どこの基地に向かうかはほぼランダムです」

「で、ここに来る可能性もあるってことか」

「はい。初期段階なので、雑魚デイモンであれば、逆に来てほしいところですね。あ、警報です」


 岬さんが立ち上がるので、俺も付いて行く。


 レーダー画面に赤い点が4つ見えた。


「ああ、さっきのはぐれはこの編隊からのようですね。ジャイアントバットならば5体で来ることが多いですから」

「そうなんだ」

「亜里沙、レーダーに映ったわ。恐らくジャイアントバット。数は4」

『ラジャー。離陸する』


 また轟音を響かせてセイバーが離陸して行った。


「ジャイアントバットってどういう攻撃して来るんだ?」

「ジャイアントバットは通常種は嚙みつきですね」

「噛みつきかよ」

「レア種は超音波攻撃みたいなのをしてくることがありますが、まあ、定期便ではいないです」

「そうなんだ」


 ということは、あのセイバー戦闘機で、銃撃しながら噛みついて来るジャイアントバットを躱すのか。


 なんかすごいんじゃないか。


「相手、4体いて平気なんだよね?」

「ええ、亜里沙はA級ですから、問題ないです。良かったですね。ポイント稼げますよ」

「あ、うん。まあ、無事に戻って欲しいね」

「そうですね」


 岬さんがちょっと笑顔になってくれた。





めんつゆ最強説。

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