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ブラック九州戦国時代〜修羅の国の小大名に染まったら〜  作者: 逆川水府


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第10話 宝満城の高橋氏

1568年7月 勝尾かつのお城筑紫館  筑紫(ちくし)俊介広門


 俺たちは今、月に一度の評定を開いている。と言っても三人だけで大して広くもない広間に顔を合わせて諸々《もろもろ》を話し合うのだけだが。


 今の筑紫は周りで戦火が上がっている状況で予断が許されない。

 去年はみずからが戦火の火種になっていたが、早めの降伏で鎮火し筑紫だけは静かなものだ。


 だが周りを見ると戦火は鎮火するどころか燃え広がっていた。


 いつ火の粉が降りかかるか分からないので最新の情報を共有する必要があった。あちこちで反乱が起こっており、状況もややこしいから現状確認だって重要だ。

 というわけで先ずは近所の戦争の話題から始まった。


「博多の立花山たちばなやまで動きがあったらしい、弾正だんじょうが知らせをもってこちらに向かっているそうだ。先ぶれがあったからもう着くだろう」


 弾正は去年の戦いで支城で唯一陥落しなかった若山砦を守っていた侍大将だ。今は博多が見える天判山城を任せている。着いたらすぐさまここに連れてくるように命令してある。


「ならば今わかっていることだけでも話しておいては如何であろう。義父となる斎藤殿とは文をやり取りしているので御座ろう?」

「そうだな」


 島の提案に俺は地図を広げて扇子せんすを手に取り説明を始めた。


「知っての通り俺達は昨年の敗北によりしん大友に鞍替えしたわけだが、周りは反大友だらけだ。代表的なとこだけでも四つ、秋月、高橋、立花、龍造寺だな」

「特に大事なのは高橋、立花、龍造寺かの。なにしろすぐ隣じゃ」


 俺たちは北に高橋と立花、西に龍造寺といった勢力と領地を接していて、しかも仲も良くなかった。


「そしてその中で昨年から大友と戦になっている秋月と高橋の城だが全く落ちる気配はないようだ」

「秋月の古処山城、高橋の宝満城は共に堅城だしのぉ。特に高橋は数々の戦歴がある人物じゃ。簡単には落ちることはあるまい」


 高橋は元々は大友に忠実に仕えていた男だ。兄が主君に誅殺されても忠実に仕えていたので主君の大友宗麟から信頼が厚かった。

 有名な厳島いつくしまの戦いでは敗れた大内側に使者の一人として宮島に滞在していたが、戦の後にたった一人で安芸あき(広島)から豊後ぶんご(大分)まで、300キロ近い距離を生きて戻った剛の者だ。


 だが謀反を起こした。唐突にだ。

 ずっと機会を伺っていた可能性が高い。


 未亡人になった兄嫁を宗麟が妾にした事で疑心を抱いたとも言われている。好色である主君が人妻欲しさで無実の兄を殺したのではないかと考えたのだ。


 真実はわからない。

 だが功労者が亡くなってその妻が尼にならないように、形だけ側室にして保護する事はある事なんだ。


 俺は正式に降伏するため豊後に赴き、わずかな時間だが当主の宗麟と対面した事がある。その際に小さな国衆相手に気を遣ってくれているのを感じた。

 酒を振る舞おうとして俺が子供なのに気づき菓子を頂いたのだ。

 しかも菓子を包んでいたのはシルクの端切れだった。さり気ない権力アピールも出来る。

 そんな気を遣える人物がはたして家臣の妻を強奪するだろうか。


 だけど今まで忠実だった高橋が謀叛を起こしたのは事実なんだよなぁ。人妻強奪による仲違いは江戸時代の創作ではないかという説もあったが、この世界では普通に噂として流れていた。


「高橋が籠る宝満城へは越前えちぜん入道殿と斎藤殿もおさえに向かっているそうですが、落とす事も調略する事も難しいと思われまする」


 島も俺と同意見のようだ。

 そんなわけで兄の人妻を奪った主君に愛想を尽かしたのか、野心のせいなのか分からないが、高橋が簡単に降伏することが無いのは確かだ。

 そんな人間が猛将で堅城に籠っている。ここは間違いなく長期戦になる。


 俺は扇子で高橋が籠る宝満城を地図上でツンツン指した。

 そして今度は古処山城に切先を移動する。

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