#020:とりあえず‥orz
いっ‥‥一年振りの更新になりました。言い訳は更新履歴にて。
彼らが落ち着いたのは、それなりの時間が経過した頃だと思われる。多分。
なにせ時計もなく、景色も何もない空間で、ハッキリ言い切れるだけの材料が余りにも無さ過ぎるのだから仕方ない。
私の疑問は残念ながら解決に向かう気配は全く見られず、下手をすると解決の糸口は掴めてもより複雑化しそうな気もする。うん、現状認識はこんなところだが‥。
今更だけど‥‥何で私、こんな所に居るんだろう。
いやいや。キッカケは分かってるし、身体もダメージ受けてたから気絶したのは理解る。しかしなんでこんな空間でこんな事してるのか訳わかんないわ。
『そら、あんたはんがアテ等と話出来はるように、わざわざこしらえしたし。ホンマ、そないな事も判れへんおつむで、よおまあまうあはんが受け取れはりましたなぁ』
いきなり左後方から聞こえてきた"人を見下した口調"は鼓膜を振るわす声音と相まって、正直関わりたくないと脳内警報びんびんに鳴り響ってます。出来れば一切合切全て無視してこの場から逃げたいです。
心情的にはAT●ールド全開にして「逃げちゃだめだ[×∞]」の呪文を唱えながら赤いカッターナイフを構えて迎撃するとか、どこぞの物語の主人公宜しく周囲の迷惑省みず加減問答一切無用の必滅攻撃を笑顔でぶちかませたら、嘗て感じたことの無いほどスッキリ爽快になれるだろう。例え其の後に怒涛の後悔や罪悪感が待っていたとしてもだ。
そういったチートな能力フラグは生まれてこの方一向に立つ気配も見えない一般ピーポーな平凡女に出来ることと云えば、精々脳内補完して自己満足しておく位しかないでしょう。普通のパート社員には無理って噺です。
振り返ってみればポストに巣箱宜しく鎮座していた鶏に遭ってこのかた、野生の鳥とランデブーしたわ、メタボに仕事押しつけられたわ、異世界にぶっ飛ばされるわ、美形に遭遇するわ、話を聞かねえ輩に難題押し付けられるわ、検査と称してえらい目に遭うわと災難連続。
出会った方々の美醜はともかく、まともな人格者が居てくれた事は不幸中の幸いというか救いだった。うん、これでヤンデレSM鬼畜俺様が標準装備ですが‥なんてこられた日には、全力拒否してバイク盗んで走り出す。
『盗んやら盗ッ人でしょ、あんたはん?』
「人の思考を勝手に読むな、ついでにどや顔で突っ込むな」
27年の短くもない人生の中でこれほど記憶からの抹消を願い、精神安定を含めた諸々の些細な理不尽さの解消のため一発殴らせろと本気で思えるぐらい、聞き覚えのある声が、何・故・か・近場から聞こえた気がする。たぶん気のせいだ、ほら、どうせ夢の中だろうし。
そして泣いていた二匹は何故私の手の中からいつの間に消えているのか、誰か説明してほしい。
『あんたはん、現実逃避癖と妄想癖がおますのとちがいすのん?
それにしてもまぁ‥鍵っちゅうモンは、見た目ちっさいわ、口もおつむもけったいなんがええんやろか。こないな所は、魔獸等と変われへん気ぃ‥』
「だからいい加減黙ろうか?」
じゃなきゃその口、手を突っ込んで気道塞ぐぞマジで。
ホントに毎度毎度何処から湧いて来やがりやがったっ!!
白い鶏の癖にっ!!
否。それでは世の真っ当な白い鶏に失礼だ。(←真っ当な鶏って何!? なんて質問はしないやうに。)
つうか、何なのこの口の悪さ。しかも、科白だけ(・・)ならまだマシだ。(聞いている私には音の高さや感情が付随してるから更に来る←本音)
仮にこれをツンデレ女子中学生が「あんたバカ?」なんて科白付きで言ったとしても、一部の大きなお友達を喜ばすぐらいの威力しかないと思う。
が、コレを(多分地声をまともに出せば)低音域気味なよく通る男性の美声、で!! 某幼児番組の司会を勤めるお姉さんのように柔らかーく、やさしーい猫なで声でありながら見下されるよう蔑んで言われてみよう(←一部の腐腐腐なお友達ならhshsとか、萌萌してくれるだろう)。
ちなみに私には、…だめだ、無理無理無理!!!!
そこまでレベルが達してないようだ。見よ、この見事なチキン肌!!
うぅっ気色悪いわっ、似非関西弁の性悪鶏がっ!(←怖気鳥肌オカンが走るわっ(泣))
『なんぼ“鍵持ち”やさかいにって、言語形態のちゃうあんたはんに負荷のすけない手段を選んや結果やわ。‥‥なんよ、その眼ェは』
私がこうなったそもそもの原因であるあんた等に同情する気は無いっつーの。
「勝手にこんな訳わからん世界に引きずり込んで、何の説明もせずに上から目線で見下す発言をぶちかます状況で、価値観の違いだらけの現状に一体何を求めるつもりだ似非関西弁オネェ鶏!!」
『‥微妙にくろしいのはイヤミやろか? それともまうあはんと同調し切れへんからかいな‥』
オネェからオッサン口調に成ってるぞ鶏。(←鳥肌治まらず)
「つうか、あんた等それが標準なわけ? 微妙なエセな方言訛りがバラエティー過ぎて困るんだけど」
聞く側としては愉しいが時折理解が追っ付かないときが多々あるのは、私の理解力の足りない所為だろう。以前仕事で方言によるポカをしたことがあるので、気をつけてはいる。
『ホウゲンナマリ?』
「郷土に色濃く根付く言語。それを聞けば大概の出身地が判るからある意味便利だけど、理解に悩む時もあるから取扱いには気をつけるべき代物。さっきの二匹とあんたで関西、東北、九州と色々に聞こえているわけ。詳しくなんて知らないからそれっぽくってぐらいだけど」
鳥達の言葉は翡翠を除けばいずれも地方色豊かな方言もどきだった。思い返せばクラフに初めて逢ったときも、なんちゃら語ってマニアックだと言われたんだよね。
『‥あんたはんの中で、まうあの鍵が中途半ヘリに働いてるさかい置き換えれへん言語がそないになるんやわ。イヤやわ〜』
「そんな声色の気色悪いエセな関西弁聞かされる此方が嫌やわ。大体まうあの鍵とやらを勝手に押しつけたんはそっちでしょうが!!」
『原因をとやかく云うやけ言うて、これさかいどないしよけ、とか考えられん輩が喚かんといてぇな。あんたはんとちごぉてウチ等、隙やおまへんの』
目の前のオネェ鶏に下から見下す目線で追い出すように罵られて、ぷちぃ‥と切れかけた理性を何とか(大人の対応で(笑))つなぎ止める‥‥。うん、頑張れ私。
―――おまへはどこのS嬢王様じゃ!!
つうか、脳内映像で黒皮ボンテージに赤いペディキュア姿で、黒い鞭を手(羽??)にする鶏が浮かんで‥‥‥、あたし憑かれ‥、イヤ疲れてるんだろうかと悩ま、いやいや悩まないっ!!
『初期設定もせぇへんで、いきなって突っ込んさかいに、誤作動を起こすのは予想しとったさかいまやええやけど。説明してへんは予想出来んわ。あんのボケ、このツケは高かくつくさかい』
目線をあたしの左後方にズラしたオネェ鶏が、どえらい怒りの変顔で睨みつける。‥何か居るんだろうか?
『あんたはんが最初に逢うたのが説明役やったの。特にあたりがあらへんボケやさかいに、話ぐらいどしたとと思っとったのよ』
「‥何の話をするつもりだったの」
『ヘリ的には"引きこもりの爺ぃを、話し合いの場に引きずり出すてったい"の依頼やったのどす』
「は?」
ちょっと待て、なんだそのツッコミ処が微妙な話は。
『まぁ、あんたはんの微調整しもって話どしたげるわ。そこ座って目ェ瞑り』
まぁ、話をしてくれるなら聞こうじゃないか。ムカつくビジュアル見ないで済むし。
そんなわけで大人しく其処に胡座した。
…*…
私の精神的な諸事情ひっくるめて鶏の話を要約すると、まうあの鍵と云うのは"まうあ"と呼ばれる存在が記したとある一冊の本に対する管理者権限の事らしい。
所謂ホムペ管理者―――まうあの鍵を持てる者―――が不在の為、色々発生していた問題を解決すべく彼等なりに代行を立てて対応していたが追いつかなくなったらしい。
サーバー元による強制撤去して一からやり直せば? と訊けば、ホムペに介入している部分が、現在複写も出来ない代物で、下手にいじれないらしい。
そういった箇所が幾つか在るのでまうあの鍵を捜していたし、それ以外での解決策も探していたそうだ。
「で、"引きこもりの爺ぃを、話し合いの場に引きずり出す手伝い"の依頼ってのは?」
代行したうちの二人が深いところまで潜り込んで出てこなくなったから、探してつれてきてほしいんだって。結構偉いらしいけど。
『問題なんは、その片割れがそのまんまぽっくり逝ってしもてる事に気ィ付かいないまんま継続したはるんやわ。まぁそっちゃはアチコチに解るよう手ェ打っとったさかいええやけど、流石になん時まやてこのまんまにしとくのもどないかとおもってな』
えーと、先程400年程まうあを探しているとカラスことテオが云ってなかったっけ?
つまり、私が喚ばれたのは管理者権限での書き換えと、迷子の捜索依頼が目的ってわけね。‥こっちの都合も事情もまるっと無視して。
『ぶっちゃけ、まうあ狂信者達の暴動も何とかして欲しいのもあるンやわ』
「だからどや顔標準で勝手に思考を読むのは止めれ。人を何だと思ってんの!!」
顔を見なくても声色に出てるくらい判るわ、エセ関西弁鶏!
『ちんまい変わり者のけったいな適合者‥やろなぁ』
―――ぴきっっっっ!!
『さて、鍵はこないなもんでっしゃろ。確認するさかいに一旦落としますえ。慣らしを兼ねて多少時間あげるさかい、不グツはその時に云うてや』
「いい逃げか!」
『いゃぁねぇ。この多忙で切羽詰まった中、不慣れなあんたはんに多少やて時間をあげようってゆーウチの心遣いを無にしはるなんて、器がちっさいって云うか、ガキって云うか、見たまんまやわぁ』
「人の神経逆撫でしまくった上で挑発するその言い草に、腹を立てずに何しろと?」
『つべこべ言わずにとっとと行きや。それと、その紙なくしたらあかんえ』
紙?
『まうあはんの残した《鍵言葉》やから、無くすと願いは成就せぇへんで』
「はぃいっ!!??」
ぷっつり、電源を切られたテレビの画像のように、意識はそこで途絶えた。
多分強制的に落とされたんだと思う。
確認する術はないけれど、時間がないって云うのは嘘じゃないんだろう。
そしてまた逢うんだろう、そう云っていたし。まぁ文句はきっちり言ってやるから覚悟しとけ。エセ関西弁鶏!