#013:事前説明は大事ですよ
お待たせしております。
本文中の中にデタラメ方言もどきを使用しておりますが、正しくは無いのであまり突っ込まずにかるーく流して頂けると幸いですm(_ _)m。
検査―――そうクラフさんから聞いて私が連想したのは、学校や会社で体験した健康診断程度の代物だった。
ゼオさんに案内された一室には、近未来的な白衣(クラフさんの職場の制服とのこと)を着用した方々が数名と、訳わからない模様が床に描かれ、そのほぼ中央に透明な柱が一本、天井まで突き建っていた。
「こっちの部屋にある服に着替えてきてくれるかしら」
検査服なんて人間ドック並みの検査をするのだろうか、少しなめていたな‥と、思ったんだ。この時は。
ドアを隔てたそこは簡易ベッドを一台置かれただけの小さな部屋で、ベッドの上に置かれた淡いピンクの服が一着、丁寧に畳まれて置かれていた。
「あ、そうそう。その服以外は身に付けちゃダメだからね」
「え!」
「術式が拒絶反応を示しちゃって正確な数値が出ないのよ。コレでも繊細な術を組み上げてあるから宜しくねぇ」
理由があるなら仕方ないだろう。着替える間、誰も入らないように告げてから服に手をかけた。
人間ドックに行った事がある方なら想像は出来ると思う。行った事のない方は妄想でもいい。テレビや小説から想像してもらって構わない。
ひざ下丈の襟元がゆるぅりとした淡いピンクのワンピースモドキ、多分女性用なんだろうけど、ちっこし私にはでかすぎねぇかい?
しかも下着類一切つけちゃだめって、理由は判ったけどさぁ
落ち着かない!
しかし、検査が終わらなければこの格好のままであるわけだし‥、ええい、なるようになれっ!
「おっ、お待たせしました‥」
部屋を出た途端、白衣を着た女性によって、手足に銀色の拘束具みたいな枷ををつけられて、透明なガラスの柱に入れられ、プシって音と共に閉じ込められて「え!」と驚くと一言。
「んじゃ早速、纏めてデータも取るからよろしくねぇ」
くらぁまてぃそこの釜、何笑いながら気軽に言ってんのよ、この格好と検査内容の説明くらいしなさいよ!
と、言う間もなく、足元からすごい勢いで侵入するのは、緑茶みたいな色をした透明なぬるま湯。
しかも僅かにとろみがあるなんて、やだこれなんなのよっ。
「ちょっ、なにすんのよ! やめて、溺死させる気」
「大丈夫よ。肺が満たされれば溺れないから」
あっという間に胸下まできたとろみ緑茶は私を床から浮かせる事なく呑み込んでいく。
イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ。
口を掠める水面に足掻いても、浮かない体は空気を奪いゆく。
とぷん、と呑み込まれた私の視界に映る淡い被膜は私に圧力と恐怖を与え、空気と音を奪う。
もがいても足掻いても、ぬるま湯に浸った枷は動きを封じるかのようにぴくりとも動いてはくれなかった。
閉ざされたフィールド内であがく私に残されたのは、体内のわずかな空気と無音の恐怖、見えるはずの視界に映るのは緑茶色の水だけ。
苦しくて怖くて、体の自由と視界と呼吸を奪われた現実に完全なパニック状態のあたしは、悪循環で余計もがいてしまい、結果わずかな体内の空気すらも一気に吐き出してしまった。
やば‥、水が‥‥。
むせかえる程の水が体内に流れ込み、終わらない流れは私を意識事押し流す。
生理的に涙が出そうな痛みが鼻と喉を襲い、流されるように奪われる自由に悔しくて、意識をふるわせて叫ぶ。
―――ざけんじゃねえっ! 一方な押し付けはいらないわよっ。責任者でてきやがれぇっ!!
『<‥おめえさ、ほんてん望むんか?>』
確かに聞こえたこの声、ニワトリと違うし、ヘクサやクラフさん達とも違う。
―――誰!
『<望むってんだば、覚悟すんだなや。‥ひぎけぇすんだば、最後だでな>』
何を‥‥、最後?
『<わしら受げ入れるんも拒んも、こっからさぎはでけんけ。よぉっぐ悩んだらええ>』
―――せっ、説明無しに巻き込んで決めろなんて無責任でしょがっ!
私の決断を、伝える‥前に、ヤバい。意識‥あれ?
…*…
‥‥ぱち、目を開けると白い天井に、眩しい照明。
はて、何処だ此処は。
身体を起こそうとして、力がはいらない事に気がついた。微妙に疲れ果てた感覚がある。
―――ええっとお、なんでこうなったんだっけ?
『あ、気がつきましたか?』
あれ、なんかすっごい幼い可愛らしい声ですけど、‥‥誰?
『どこか痛いですか? 気持ち悪くないですか?』
「‥だいじょうぶ」
ただ何だか怠いだけだし、つうか声出すのも億劫だわ。
「ちょっと怠いだけ‥」
『良かった。あなたに何かあったら僕、どうしたらいいかわからないから』
‥僕って事は男の子なのかな、つうか何処にいるの?
「どこ、いるの?」
姿が視界に写らないから分かんないけど、近くにいるのは間違いない。
『ここにいるよ、僕はここ』
ぱさっ、と軽い音をたてて私の胸元(の布団の上)に降りたったのは、まごう事なく。
「‥‥‥雀?」
『‥‥‥すずめって?』
緑茶色したチビッコ小雀がちょこんとそこにいた。
「あれ、えと、‥‥精霊?」
『うん、あなたに喚ばれたから来ました。あなたが僕の主なんですよ』
「‥‥はい!?」
くりっと傾げた小首につぶらな瞳、うん。かわいいけど‥精霊?
「‥‥襲う精霊? よんだの? 私が?」
『えと、おそってほしかったのですか?』
「いやほしくないから。そもそもヘクサに言われたからだし‥、ってあれ?」
ちょっと待て待て待て。
「そもそも私、なんで此処にこうしているんだっけ?」
『あなたが強い願いで言ったから僕が此処にいるんですよ』
「願い?」
『はい。願いましたよ?』
なにを願った‥?
『叶えましょうね。願いは叶える事でしか浄化できないんですから』
「誰が、叶えるの?」
『願いは願った者が叶えなければいけないんですよ。誰かの手を借りてもいいから叶えて初めて浄化されるんです』
にこやかなかわいい声で、言うことは何だか辛い気がする‥。
「私の願いって‥‥ナニ」
「ハルカ。具合はどうだ?」
クラフさんの声がするけど姿が見えない。‥って、あれ?
「すると此処って、クラフさんの職場?」
『入るぞ、起きれるか?』
『無理に決まっているでしょう。どれだけの無理をさせたと思っているんです』
うわ、雀の口調が辛いぞっ。
『まうあの鍵がいかなるものか知るものは存在しなかったんだ。ましてやそれに精獸の介入が入った例なぞある訳ないだろう』
あ、ヘクサが見えた。クラフさんも‥、あれ。何かありました?
「身体はどうだ?」
何だか痛々しいものを見る目になってませんか?
「とりあえず力は入りませんし、喋るのは億劫です。なのでこうなった経緯を含めて、一体何の検査をして私がこうなったのか詳細に説明を求めていいですよね?」
ニッコリ笑って言ってみましょうか。
「あ、検査内容について事前に何の説明も無かった事だとか、それによって私が受けた精神的苦痛とか、どうしてくれるつもりなのかも勿論してくださいますよね?」
判ってしてたなら問答無用でたこ殴りしてやるっ!
お久しぶりです。お待たせしてすみません。
今月から就職支援でパソコン講座を受講してまして、少々頭と時間が足りなくなってます。
珍しく頭痛に悩まされ1日寝てましたよ〜、閑話休題。
次回は緑の雀についても描かなきゃだし、説明文になりますね。
あ、折角だから次回はハルカ以外の視点でいきますね。(←これから描くとバルバレ)