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シクウノソラニ  作者: 津村の婆ァ
13/22

#011:朝飯前の出来事

Q.ハルカは誰と朝シャワー浴びた?



1.ヘクサがすりすり

2.1人に決まってます

3.知らないうちにラグラスが‥



答えは本編で



※2010/11/10修正


 朝からベットの上にいたのは、昨夜倒した自販機に現れた白い悪魔ことあのニワトリ。


 しかもなんだその顔。ニマニマ〜と笑って気持ち悪い。


『無事来れたみたいですやの、いや〜あんた運いいわ』


「‥神出鬼没なニワトリなんてどこのホラーよ。あんた私に怨みでもあるわけ?」


 無論怨まれる覚えなぞございませんが、言い分は聞かないと分からない。


『怨むなんてせぇへんがな、あんさんにはあてらの願いを託さななりまへんよって』


「勝手に巻き込んでいうことがソレ?」


 なんかもう、状況を説明しなさいよ。訳わかんない。


『時間なくて堪忍え。あんさんに願うのは二つや』


―――話聞いてんの?


「誰も引き受けるなんて言ってない‥」

『‥受けひんの? つきまとうで〜』


 ひっ、卑怯だぁ。脅しだストーカー発言したぁぁぁ。


「脅す? 卑怯者」


『それはそれやし。あんさんにはまうあはんを捜して説得してもらうだけやろ』


「訳も顔も姿も知らない人を何で探さなきゃならないのよ。訳ぐらい言いなさいよ」


 それによっては引き受けて‥‥‥る、余裕ない。絶賛出来るくらい右も左も分からん迷子だし。


『まぁ、鍵を受け取れたっちゅうのが一番やしなぁ』


 鍵? え、受け取ったっけ。


『あてらが探しまくって漸く見つけたのがあんさんや。あてらは永くは居れへん。そこで代理を立てたのがあんたや』


「勝手に決めないで。いい迷わ‥」

『見事な蹴りやったなぁ…。あれ、どないするつもりやったん?』


 ギクッ。あれって‥自販機よね。


『あれってあんさんの稼ぎやったら、結構な値段しますやろなぁ』


 半目で見下すなっ、このエセ方言トリっ!!


『‥あてらの眷属には話してあるし。まうあの鍵ある限り縁は切れへんで?』


「それ、どういう意味よ。まうあって何なの?」


『まうあの鍵は身体やなくて、その魂に在るんえ』


 魂にある?


『まうあはんの説得出来ひんなら、あてら出来るまでずーっと纏わりつくから諦めてぇな』


 ちょっと待て、つうと何。あのニワトリに出逢ってからの、やたらと鳥にかまわれたあれって‥‥‥まさか。


『こっちの方がまうあはんの気配に鼻利くんは多いやろ、気も力も強うおし。熱烈歓迎やろなぁ』


「はぁっ!? なにそれ、やだ断固拒否よ。ストーカーお断り」


『せやからサッサとまうあはん見つけて説得しよし』


「だから何で説得なのよ。訳わかんない」


『あてらに連絡はまうあはんの説得終わったらよこしぃ〜』


「こら待て、名前位名乗れバカァ!」


『ほな吉報よろ〜』


 訳わかんないぃいい。なにこれ丸投げも良いとこでしょ。信じられない。




     …*…




『‥カ、ハルカ』


―――誰、ってあれ‥?


『目、覚めたか‥?』


「‥ヘクサ?」


『ああ、よく寝てたな。クラフも起きたからそろそろ起きろ』


 あれって‥夢だったわけ? うわーっ、やな夢みたぁ。


『‥‥ハルカ、それは何だ?』


「ふぁひ?」


 ヘクサの目線は膝の上?


 ひょいっとベットに飛び乗ると膝の上にあったそれを、器用に前脚でヒョイヒョイと引き寄せ嗅ぐ。


『覚えがないな。‥いつからあった』


「ヘクサに言われるまで気がつかなかったから」


『‥誰にあった』


 なんか声が怖い?


「ヘクサ、どうかしたかい?」


 あ、この声はラグラスさんかな?


『ラグ、侵入された』


「もうかい。むこうさんも焦ってるかな。あ、ハルカさんおはよう」


 あの、声をかけながら入るのはいいんですけど、寝起きの(見た目ちんまくても一応未婚の)女性の部屋に堂々入るのは辞めませんか?


「‥おはようございます」


「よく寝れたみたいだね。ご飯出来てるし、クラフも起きたから一緒に食べない?」


 朝から美形の微笑みは辞めましょう。本気で免疫無いんですよ。


「い、いただきますけど、その前‥」

「うん、そっちの扉にトイレとシャワー有るから好きに使って。それとそこの棚に、僕ので悪いけど着替えあるからよかったらどうぞ」


―――なんで言おうとしたこと分かったんだろ。もしかして気配りできる人?


『ラグ、クラフに渡せ』


 ヘクサはアレを器用にくわえてラグラスさんに持って行った。


「‥精霊の目印じゃない。これはまた立派だねぇ‥」


 ラグラスさんが手にしているのはいわゆる鳥の羽根。長さ約30センチ強はある真っ白なそれは、羽根ペンとかにある駝鳥の羽根ではなく、羽毛布団とかに使われている水鳥のダウンのような、ふぅんわりした羽根だった。


『精獸クラスで間違いないだろう』


「うわ、そうなの。貰ってもいいのかな」


 ラグラスさん、目が、スッゴく顔がキラキラです。美形なのにキラキラしすぎです。


『任せる。ハルカ、行くぞ』


「や、だからご飯の前にと‥」

『シャワー浴びるんだろ。ほらこっちだ』


 待て待て待て、なんだその態度? いや口ぶりは。


「ヘクサ? 私ひとりで入りたいんですけど」

『却下。ダメ。言ったろ』


―――いつから俺様キャラになった、ヘクサ。


『離れたくないし、離さないで欲しいって』


 ちょとまてぃ、それはそう言う意味かおいっ。トイレや風呂までなんて、どういう罰ゲームだ。羞恥心がMAXで死ねるよホント。


『こんな土産置かれて、ハルカを1人になんて出来るか』


「それこそ意味不明だってば。第一ヘクサ雄でしょ? 恥ずかしいから止めてよ」


 もう訳ワカメじゃなくて、わかんない。


「うん、ヘクサ。女の子の着替え覗くのはやめたほうがいいよ。嫌われたいなら止めないけどね」


 ラグラスさんナイスです。


『奴らに奪われるなら嫌われても阻止する』


 どこの悪モンだ、倫理に引っかかりたくないから止めなさい。


「‥‥少なくとも泣かれるよ、いいの?」



 ビクッ



「怯えてさ、もう笑ってくれないかもよ?」



 びくびくっ



「‥‥まぁ、求婚した男のする態度じゃないよねぇ?」



―――何なんだ、この態度は。


『‥‥‥部屋の前にいる』


 ガクッと肩を落としたように、トボトボと部屋を出て行くヘクサの姿に、かつて何かがあったことは想像ついた。が、聞く気にはなれなかった。


「ハルカさん、待ってますから早く来て下さいね」


「あ、はい。ありがとうございます」



 パタンと閉まったドアを見て、今のうちにサッサと済ませてしまおうと行動を開始した。




     …*…




 感想からいえば、シャワーもトイレもまぁ一般的な大差はなかった。


 借りた服は厚めの長袖Tシャツとスパッツみたいなパンツだったんだけど、持ち主の身長がけっこう有りますからね。


 膝上ワンピース並み(下着は仕方ないのでまた付けてます)の袖を折り返して調整し、これまた余るスパッツの裾を大きく折り返してなんとか格好を付けた。


 改めて着ていた服を見ればけっこう薄汚れていて、使っていた布団やらシーツやらの汚れが気になってしまった。


「後で洗わせていただきましょう。うん」


 皆さんを待たせてるから、とりあえず簡単にベットを整えるとドアを開けた。


『‥ハルカ』


 ヘクサ、ドアの前でちょこんとお座り。いつから君は忠犬ハ○公になったよ。


『‥すまん』


 耳までうなだれてさぁ、私と大差ない大きさの狼が、ちょこんって座ってウルウルしてんのよ。


 ああ、もう許してあげやうって気になるぢゃない。


 反省するかわいげあるしね。白いストーカーと違って。


「‥‥お風呂とトイレと着替えは流石に止めてね。とりあえず、ごはん食べて、聞きたいことに答えてくれるなら、今回は許してあげる」


 妥協したげるから、情報下さいね。


 ヘクサ、わかったと応えてからひっついて来ました。よしよし、美形のラグラスだったら間違いなく悲鳴上げて逃げるパターンだけど、ヘクサはまだ狼なので照れずに済む。


 ビミョーな心境を察してくれるほど、彼らと親しくないのが救いの今、唯一照れずにいられるのがヘクサだけだから、気まずいくなるのは避けたい。


 なによりヘタレな私は、此処ではなにも知らない迷子なのだから。




 昨夜夕飯を頂いた部屋に行くと、二人の男性が席についていた。


「ああ、やっときたね。そこに座って」


「ラグラスさん、服お借りしてます。えと‥‥‥」


 ぴし


『‥‥ハルカ?』


「‥‥どうかしたか?」


 しっ‥、知らない若い男がいるぅぅぅ!?


「おや、どうかしたの?」


 何かまたラグラスさんと、別な意味での美形って、やっぱり腐女子の好物なだったわけー!?


「ヘクサ、何かしたのか?」


『とりわけだってはしてないが、クラフの顔を見たとたんに固まったな』


「俺の?」


―――いま、なんて聞こえた?


「そういえばクラフはちゃんと顔を見せたんですか? すごい髭顔だったと言われましたよ」


―――クラフって、クラフィスさん!???


「髭? ‥‥って、ああ。防護マスクのことか」


「ま、ひっ髭‥ええっ!?」


 こいつぁ朝から何の嫌がらせ?


 ヘクサを始めとした男共は、そろいも揃って長身の上、系統違いな美形ばかり。


 喧嘩売ってるわけ? へっ、どーせ私は、平凡面の何の面白味に欠けるチビですよ。その上童顔に見られる日本人、しかしてその中身は腐ったヘタレ女だ。分かっているから比較すんじゃねぇぞ、うらぁっ。


 などと内心腐っていじけてひねてると、目の前に美形が来やがった。うあぁぁぁぁっ!!!!


「‥‥‥大丈夫か?」


 美形は遠くから見て眺めるのが正しい鑑賞法だって知らないの?


「いっ、いきなり近寄んないでください。つうかホントにクラフィスさんなんですか?」


 そう言えば確かに眼の色は鳶色だけど、そこまで意識してみてなかったな〜なんて思う。


「‥ああ、間違いなく昨日飼い主としてのマナーを言われた上に、食い物を分けて貰ったクラフィス=ディレード本人だが?」


 なにを今更、と言われても、あの髭面の下がこんななんて知るかぁ。


「ホントに私より年下のクラフィスさんなわけ?」


「そこまで疑うなら昨日のやり取り全部言えば信じるか?」


「‥‥結構ですよ。離れてくださいませんか」


 ご本人のようですが、すいません。朝から既に疲れました。




 美形もヘクサもニワトリも嫌いだぁぁっ。


朝からお疲れサマー、そしてこれからゼオの質問やら検査やらあるんですよ。


うふふふふ。



その前に彼らの自己紹介を改めて入れておきますね。



しかし名前のセンスは欠片もないな〜、自分。

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