13/13
(13)伝説の幕開け(やれやれ、スローライフはどこへ?)
「ぷはぁー! 生きた心地がしなかったぜ!」
ルシウスが去った後、ギルドは大歓声に包まれた。
「おい見たか! あの傲慢な鑑定官を黙らせちまったぞ!」
「魔力ゼロってことは、やっぱり結界の暴走だったんだな!」
「いや、聖女様を従えてる時点で、あの坊やただ者じゃねえよ……!」
冒険者たちは口々に俺を称え、セリアはホッとしたように胸をなでおろした。
「ダイスさん、お見事です! 水晶を壊さずに『無能』だと誤認させるなんて、どんな高等技術ですか!」
「いいえセリアさん、ダイス様は誤認させたのではありません。あの水晶から『鑑定』という概念そのものを消し去ったのです。やはり、底が知れません……!」
エレノアがキラキラした目で俺を拝んでいる。
「いや、俺はただ、静かに暮らしたいだけなんだよ……」
俺の切実な願いは、賑やかなギルドの歓声にかき消されていった。
魔力ゼロのFランク冒険者。しかし、その正体は、世界の理を親指一つで消去できる最強の存在。
聖女を側に置き、ギルドの受付嬢を味方につけた俺の「偽装スローライフ」は、こうして本格的に動き出した。
これからどんな強敵や理不尽が襲いかかってこようと、俺はただ、俺の平穏を守るために――すべてを「消去」して見せる。




