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俺が最も愛するゲームの推しが画面の外に出て目の前に存在しているのだが!?  作者: 内山スク
栗編

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推しの本音

 ゴールデンウィークの五月三日。

 俺は桃を連れて、ショッピングモールに来ていた。

 ゴールデンウィークなだけあって、ショピングモールが人で溢れている。


「おお、ここには見たことのないお店が沢山ありますね。奏殿かなでどの


「最近できたところだからね。流行のアクセサリーと服とか置いてる店もあるかもね」


 今の時間は午前十一時四十八分。

 秋月生徒会長からは十二時にショピングモールの北口の近くに集合と言われているのだが。

 こんなことなら連絡先を交換しておくべきだった。


「あ! いた、おーい。篠節くーん」


 声がした方向を見ると、秋月生徒会長が手をこちらに振っていた。

 白いワンピースを見に纏った姿はどこかの令嬢に見える。

 隣にはポケットに手を突っ込んで歩く栗島瞬鬼くりしままたたきがいた。

 不良と真面目な生徒会長。

 こう見ると不釣り合いな二人だが、良好な関係を気付けているのが不思議だ。

 今もお嬢様を守るボディガードにも見えなくはない。


「よぉ、元気か篠節奏!」


「栗島さんも元気そうですね」


「おう! こっちに来てから自由に生きてるからな。それで隣にいるのがお前の推しか?」


 栗島が桃に目線をやると桃は綺麗に頭を下げてお辞儀をした。


「初めまして。東雲桃しののめももと申します。こちらの世界に来た仲間としてどうかよろしくお願いします」


「これは丁寧にどうもな、栗島瞬鬼くりしままたたきだ。よろしく頼む」


 同じ体験をした仲間だからか、二人は握手を交わした。

 それを見て、俺の心の中に言葉では言い表せないようなモヤモヤした感情が湧くのを感じた。


「さぁ、あいさつは済んだしそろそろ行きましょう」


「行くってどこへ?」


「買い物よ。瞬鬼様またたきさまの服も買わなきゃ。篠節くんこそ、桃さんに何か買ってあげなさいな」


「今日それが目的だったの?」


「そうよ」


 秋月生徒会長と話していると突然誰かに手を引っ張られた。

 引っ張られた手を見ると、桃が俺の手を握っていた。


「早く、買い物に行きましょう奏殿」


「ちょ、待って桃!」


 秋月生徒会長と栗島瞬鬼を置いていってしまったが、楽しそうな桃を見ていると立ち止まる気にはなれなかった。

 そして何より桃に手を引かれていると心のモヤモヤした感情がなくなったのを感じた。


          ***


 服やアクセサリーを買ったり、フードコートで食事を食べたりと俺達はショッピングモールを周りつくした。

 目に付くもの全てが珍しいのか桃は無垢な子供のように目を輝かせていた。

 それを見ていた秋月生徒会長も嬉しそうに、桃に色々教えてくれていた。

 同じ女性同士気が合うのか、それとも秋月生徒会長が面倒見がいいのか、二人はどうやら気が合ったらしい。

 今も二人で水着を買いに行っている。

 俺は店の外で栗島瞬鬼と一緒に桃と秋月生徒会長を待っていた。

 栗島瞬鬼は来た世界とそこまで変わらないからか、特に驚いたりするリアクションは見せなかった。

 自分が楽しんでいるというよりも、桃と楽しそうに話す秋月生徒会長を見て微笑んでいるように見えた。


「篠節奏・・・俺に訊かなくていいのか?」


「訊くって何を?」


「俺がこの世界に残りたい理由を・・・」


 まさか、栗島瞬鬼くりしままたたきの方から話を振ってくるとは思わなかった。


「・・・なんで、今それを俺に話そうと思ったの?」


「理由は霞に聴かれたくないからだ。だからお前と二人になれるように東雲桃に頼んだ」


 推し同士でいつのまにか作戦を立てていたらしい。

 ショッピングモールを回っている最中に、桃と話していたのか。


「残りたい理由って秋月生徒会長と関係あるの?」


「あぁ・・・俺は秋月霞が今縛られているものから解放してやりたいと考えている」


「縛られているもの?」


「秋月家ってのはな、エリートを育てるための英才教育をやっていて自由がないそうだ。秋月霞はそれで親にも怯えている。支配された鳥籠の人生ってわけだ」


 そうか、今ようやくわかった。

 栗島瞬鬼がこの世界に残り続けたいわけが。


「俺がこの世界に来た意味は秋月霞が助けを求めたからだと感じるんだ」


 栗島瞬鬼は秋月生徒会長とアニメの中で死なせてしまったお嬢様を重ねているのだ。


「俺のようなデジタルでできた、存在に何ができるかわからないがな・・・」


 栗島瞬鬼の抱えている闇は、罪の意識は消えていないのだ。

 今いる世界が変わったとしても、起こった出来事が変わるわけではない。

 フィクションの世界の出来事だったとしても、栗島瞬鬼というキャラが体験した出来事は残り続ける。

 アニメの世界から出てきても栗島瞬鬼の心はアニメの世界に縛られ続けたままなのだから。


「まぁ・・・霞が生きたいように生きられれば俺も元の世界に戻るさ」


「できるよ・・・栗島瞬鬼なら」


 自然と口から言葉が出ていた。

 確固たる保証も確信もない。

 だけど何故か言葉にして伝えなければならないと感じた。


「だって秋月生徒会長にとって、栗島瞬鬼は人生を変えるほどの推しキャラだから」


 俺の言葉を聴いて栗島瞬鬼は驚いたように目を丸くすると、笑い出した。


「ハッ・・・ハハハハッ。そうだな・・・そうだよなぁ・・・俺は霞が画面の外に出してまで会いたいと思う推しキャラだもんなぁ」


 不思議と栗島瞬鬼はスッキリしたような爽やかな表情を浮かべていた。

 まるで心の闇が晴れたかのように。


「ありがとよ、篠節奏。お前のおかげで俺も迷いが晴れたよ」


「なら、よかった・・・」


「おーい奏殿」


 桃の声が聴こえたため、目をやると店から桃と秋月生徒会長が出てきていた。

 明るい笑顔でこちらに手を振る桃とは打って変わって、秋月生徒会長は自身の胸を押さえていた。


「さすが桃さん・・・ゲームの中のキャラだけあるわね」


「どういう意味ですか霞殿? 何故胸を押さえられているのですか?」


 二人が何の会話をしていたのかはわからないが、栗島瞬鬼は何かを察したのか顔を赤くして黙り込んでいた。

 その後解散になり、秋月生徒会長と栗島瞬鬼と別れて帰った。

 桃が持つ買い物袋の中身は家に帰っても見せてもらえなかった。

秋月霞の秘密その3

東雲桃と水着を選んでいる際に、東雲桃のある部分を見て完敗した。

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