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やっぱり、ここにいた。
「梨音」
奏介が名前を呼んで、体育座りになって俯いていた梨音が顔を上げた。少し、目が赤くなっている。
「何で……ここにいるってわかったの?」
「そりゃわかるわ。俺らどれだけのつき合いだと思ってんだ?」
梨音がいるとしたら、機関車公園。
奏介はすぐに察しがついて、行ってみたら予感は的中。梨音は機関車の影に隠れてうずくまっていた。
「隣、座るぞ」
「……ん」
再び俯いて、小さく曖昧な返事。それをOKと受け取った奏介は、梨音の隣に座った。
「……あの後すぐに部長も出ていった」
「そう……」
「……頭を冷やさなきゃいけないのは俺の方かもしれない、って言って。らしくないよな」
不意に、辺りが暗くなった。見上げると、さっきまで快晴だったはずの空が、分厚い雲に半分以上塗りつぶされていた。
「とりあえず、今日は帰ろう。夕立が来るかもしれない」
「…………ってた」
「え、何て?」
「……彼方のこと、友達だと思ってた」
最初は、犬猿の仲にしか見えなかった2人。それが、いつの間にか一緒にいるのが当たり前な2人になっていた。
「それなのに、どうして……何も言わずにいなくなっちゃったんだろう……」
だからこそ、今回の事態で一番打ちのめされているのが梨音なのかもしれない。
「どうして……こんなことになっちゃったのよ……!」
梨音は奏介の肩にもたれかかった。梨音が、人の目も気にせずにさめざめと泣いている。乾いたコンクリートに、水滴の跡。
奏介は、自分の肩に顔を埋めた梨音の頭を、そっと撫でた。普段なら、こんなことをしたら有無を言わさず振り払われるかもしれない。だけど、梨音はそのまま受け入れた。奏介の、温かい掌を求めた。
少しずつ、梨音の涙は鳴りを潜める。すると、梨音の両手が頭を撫でる手首を優しく包んだ。
「奏介は……いなくならないでね」
「大丈夫」
奏介は答えた。もう片方の手を、梨音の両手に添えて。
「俺は、いなくならないよ」
「……ありがとう」
俯く隙間からわずかに見えた表情は、涙目のまま、笑っていた。触れたら、今にも砕けてしまいそうな笑顔。
曇天の色が濃くなっている。
もし夕立が来るのなら、梨音の涙はきれいさっぱり洗い流してほしい。
奏介は、思った。
ここまでが、遠野彼方がいなくなった日の話だ。
それから、残された3人の時計の針は止まったまま、今に至る。




