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「違うんだベリオン! サビのアレンジはもっとこう……ぐわ~っといきたいんだ、こうぐわ~っと! もっとアメージングに!」
ジェロムが作曲ソフト入りの自前のPCをいじくりながら叫ぶ。
「そんな抽象的な表現じゃわからないです。あとベリオン言うな」
既存曲は早々に仕上げて昼過ぎから新曲作りを始めたが、早いものでもう午後の3時。買いだめしていたお菓子の袋はもう半分以上が空になっていた。この調子では、閉められる前にもう一度買い出しに行かないとまずいかもしれない。
と、奏介がそう思っている間にも梨音の手がお菓子に伸びる。みんな大好きブラックサンダーの袋詰め。
「あれ、ブラックサンダーももう空じゃん」
「おい嘘だろ、さっき開けたばっかだぞ!?」
そう言ってジェロムは空の袋をのぞき込む。そんな大げさな。
「オーマイゴッド……」
無念さをにじませて、ジェロムは空の袋を放り投げる。その軽さをアピールするように、ふわっと宙に浮いてテーブルに着地する袋。いや、軽いのはこの部室の空気そのものかもしれない。一人分欠けてしまった空気の密度は心なしか、すかすかになってしまった感じが否めない。
「彼方は、どうなんですかね」
今、ここに彼方はいない。
部室棟の外で、ギターの個人練習に明け暮れている。
別に、奏介達が部室の外に追い出したわけじゃない。本人が「1人で集中したい」と言って外に出ていった。それが、今からちょうど1時間前のこと。
「本人が外で練習するって言ったんだ。俺達は干渉しないほうがいい」
そうジェロムが言う。しかし、奏介はどこか釈然としない。そして、珍しく梨音は何も言わない。
「俺、ちょっと様子見てきます」
結局、我慢できなかった奏介はギターを置いて部室の外に出た。それでも、ジェロムと梨音は何も言わなかった。




