23話「目を逸らすことはしない」
その後は色々忙しかった。
というのも、日常の忙しさに関する話だけではなく、心の中がかなりざわざわしていて落ち着かなかったのだ。
ヴィヴェルのことは嫌いではない。いや、逆。きっともう、とうに、好きになっているのだと思う。ただ、まだ、自分がその事実を受け入れきれていないだけで。
そして、初めて想いを告げられた日からちょうど二週間が経った日、私はヴィヴェルを呼び出した。
「あれから色々考えてみました」
「感謝します」
緊張するけれど、でも、逃げていては何も始まらない。
「あの時は少々混乱してしまっていて……気の利いたことを言えずすみませんでした。でも、想いを伝えていただけて、本当に嬉しかったです。まずはその点についてお礼を言わせてください。ありがとうございました」
一歩前へ。
新しい世界へ進む時には、誰もが緊張するものだろう。
それでも進む。
穢れなき勇気を持って。
「これから、どうか、よろしくお願いします!」
思いきって一気に言いきった。
胃が痛い……。
吐きそう……。
けれども逃げたくはない。
ヴィヴェルは真っ直ぐに向き合ってくれている。だから私はそれに応えたい。彼が真っ直ぐ向き合ってくれているのに私だけが本題から目を逸らすようなことはしたくない。
「ほ、本当……ですか!」
数秒の沈黙。
その果てに。
「嬉しいです……!」
ヴィヴェルの表情が一気に晴れやかになる。
「ただ、その……話を進めるにあたり一つだけ条件があるのです」
「条件ですか?」
「……条件なんて言ってしまうと少し失礼な感じかもしれませんが」
「いえいえ。気にしませんよ。言いたいことは何でも言ってください」
彼は力強い目をしてこちらをじっと見つめてくれている。
「私、これからも、この店を引き続き営んでゆきます!」
かつて否定されたこと。
かつて未来を壊したもの。
それをまたこうして誰かに伝えるのは正直しんどい。
だがこれは私にとっては最も大切で譲れない部分。
なので、言わないわけにはいかない。
「この店を閉める気はないんです」
もう何と言われてもいい。そのくらいの覚悟で。崖から海へ飛び下りるくらいの勢いで。
「なので、それが問題でしたら、その場合はお断りさせてください!」
すると彼はふっと頬を緩めた。
「問題だなんて言うはずがないじゃないですか」
柔らかな声が耳に入ってくる。
「このお店があったから今のわたしがいるのですから、わたしにとってもこのお店は大切な存在ですよ」
「ヴィヴェルさん……」
「ですから当然、これからも、このお店を営んでいってください。わたしもそれを願っています。わたしとしてもできる協力はすべてするつもりですし」
前向きな言葉が聞こえてきて、とても嬉しい。
「本当ですか!?」
「もちろん」
「ヴィヴェルさんは怒りませんか!?」
「当然です」
「ああ、良かった……」




