憧れのベルサイユ宮殿
「クリスチャン様!!」
ちょうど仕事帰りのクリスチャンにピンクのワンピースに白のエプロン姿のフランソワーズが声かける。
「フランソワーズ、買い物か?」
「はい、今日の夕食用の。クリスチャン様は今帰りですか?」
「ああ。」
「クリスチャン先生!!」
そこに1人の少年がやってきた。彼はジョン。クリスチャンが受け持つ生徒の1人だ。
「やあ、ジョン。」
ジョンはフランソワーズに目をやる。
「先生、今日は奥様とご一緒ですか?」
クリスチャンは生徒達にはフランソワーズのことは妻だと話している。
それを聞いてフランソワーズは頬を染める。
「ああ、ちょうどそこであったんだ。」
「そうか、あっ僕お父さん待ってるから行きますね。さよなら!!」
ジョンは元気よく手を振りながら去って行った。
その様子を物陰から馬車に乗って眺めてる少女がいた。
「クリスチャン様とあの娘はそういう関係だったのね。」
彼女はオペラ座の仮面舞踏会でクリスチャンと踊った少女だ。
「出して。」
少女は馭者に命令する。
「はい、アメリアお嬢様。」
馬車は街から去っていった。
夕食の時クリスチャンから思わぬことが告げられた。
「フランソワーズ、来週はいよいよ王妃様主催のベルサイユ宮殿での舞踏会だ。君が今まで頑張ってきたことを母に見せるんだよ。」
クリスチャンの母とはコンティ大公妃のことだ。フランス社交界で彼女のことを知らない物はいない。フランソワーズの舞踏会出席はクリスチャンが母である大公妃とのかけなのだ。
「あの、クリスチャン様」
フランソワーズはどこか浮かない顔をしている。
「どうしたんだ?」
「本当に行くのですか?ベルサイユ宮殿」
「当然だろう。僕達はそのために今まで頑張ってきたのだから。」
「ですが、」
フランソワーズは仮面舞踏会での出来事を心配していた。またあの男に出くわさないだろうか?それにフランソワーズは今の暮らしも嫌いではなかった。クリスチャンの妻として隣にいられることが。
「フランソワーズ、仮面舞踏会での約束果たせなかっただろう。だからベルサイユ宮殿では絶対に僕と踊ろう。」
フランソワーズは仮面舞踏会ではクリスチャンと踊る約束をしていた。それを楽しみにしていたのにあんなことが起きてしまった。
「はい、一番先にクリスチャン様と踊ります。
」
フランソワーズはクリスチャンの手を取る。
1週間後大公妃の屋敷でわっかのドレスを着せてもらうフランソワーズ。これは昔クリスチャンがクリスティーヌだった頃に着ていたものだ。
ドアのノック音と共に大公妃がやってくる。
「お母様」
フランソワーズは大公妃をそう呼ぶと真っ直ぐお辞儀をする。フランソワーズは今日は大公妃の次女でイギリスの女学校への留学から戻ってきたということになっている。クリスチャンが男装してエスコートをするのだ。クリスチャンは白の軍服を身にまとっている。
「お辞儀は綺麗にできるようになりましたね。今日は期待していますよ。」
フランソワーズは顔に笑顔が見える。
フランソワーズ達を乗せた馬車は程なくしてベルサイユ宮殿へと着く。コンティ大公妃の屋敷の何十倍の広さであった。フランソワーズは声を上げて叫びたくなったが堪える。
「さあ、参りましょう。お嬢様」
フランソワーズはクリスチャンの手を取り馬車を降りる。
フランソワーズは背筋を伸ばし宮殿へと足を踏み入れる。
「公女フランソワーズ・ド・コンティ」
バトラーがフランソワーズの名前を告げる。
貴族貴婦人達の視線が一気にフランソワーズに向けられる。




