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ちょっと家出してみようか  作者: 霜雪 雨多
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廃墟にて-4

あまりに唐突で、数秒反応が遅れた。

慌てて廊下に出ても、もう野々崎の姿はなかった。

他の客室か?

そう考えて10数部屋ある客室を見て回り、呼びかけてもみたが野々崎はいなかった。

ゴキブリはいた。


となると1階まで降りたのか…

僕も軋む階段を降りた。


すると、闇から何かが近づいてくる気配がする。

共にグジュグジュという音も聞こえる。

僕らがまだ探索していない食堂や風呂場がある方向だ。

反射的にそちらへスマホのライトを向ける。

そこにいたのはパリッとしたスーツを着た男3人だった。

グジュグジュという音は彼らの足からしているようだ。

「えっ、あ、あのー」

彼ら3人は僕を素通りしてそのまま走っていった。

そして玄関から外へ出ていった。


…一体何だったんだ。

肝試しにしては格好がおかしい。それに光源をもっていなかった。何の目的で侵入してきたのだろうか。


おっと、降りてきた目的を忘れるところだった。野々崎はどこに?

3人がやってきた方向に声をかけてみる。

「ののざきーいるかー?」

「そんなに声を出さなくても聞こえてるわ」

闇から野々崎が姿を現した。

案外近くにいたようだ。


「客室で待っていてくれればよかったのに」

「ゴキブリと同じ部屋で、いつ戻ってくるかわからないお前を待っているのは嫌だったからな。で、さっきの男3人は何だったんだ?」


「幽霊よ」


「は?」


「彼らは待望の幽霊よ。こんな廃墟でスーツ姿でいる人間がいるなんておかしいわ。可能性としては自殺者の幽霊しかありえないわ」

「いや確かにスーツ姿はおかしいけど、論理飛躍しすぎだろ… それにだいたい、あったぞ。足」


野々崎は僕をバカにしたように笑った。

「葉波くんは自分の目で幽霊を見たことがあるの?」

「ないけれど」

「幽霊に足がないなんて、テレビやゲームなんかでの、先入観の塊でしかないわ。実は幽霊には足があったってだけよ。なんの不思議もないわ。


強引だが、理にかなっていそうな気がしないでもないな。


「それじゃあ、その幽霊はどうして出ていった?」

「それは、私がチョップを奴らの脳天に喰らわせたからよ」

「ええっ!?」

幽霊にチョップしたとかどういうことだよ。

「物音の正体を確かめに1階に降りて探索してたら、食堂にいたのよ。彼ら。私の姿をみるやいなや襲いかかってきたから必殺のチョップを喰らわせて撃退したってわけ」

幽霊って普通透けるのでは…?

というかそうなるともはや人間と幽霊って何が違うのかって問題が生じそうだが。


「ああもう、まどろっこしいわね!」

彼女が手を振り上げた。やばいと思ったときにはもう遅かった。

ゴッ、という鈍い音がする。

本日2回目の手刀を頭に喰らった。

「あの男3人は幽霊だった! わかった?」

「…そうだな。きっと幽霊だったんだろう」

痛む頭部をさすりながら僕はそう答えた。

出来ることならもう喰らいたくないものだ。痛いものは痛いからな。


「それじゃ、戻るか。幽霊がいたことがわかったのだからもうここにいる理由はない」

「まだ幽霊がいるかもしれないわよ? 写真撮ってなかったし探索しましょう。そう広くない旅館だからといっても、まだ調べ始めて一時間も経ってないわよ」

「僕は、ここが幽霊が出ないホラースポットだと聞いてやってきたんだ。本物がいるなら戻るよ」

「そう」

その瞬間再び手刀が飛んできた。

おおっと! この僕が予測していないはずがないだろう!

真剣白刃取りのごとく、手刀を両手で挟んで受け止めた。

ゴッ、という鈍い音がする。

本日3回目の手刀を頭に喰らった。

人間って、手が2本あったね…ガクッ。

野々崎に半ば引きずられるようにしながら探索を続けた。



結局、他に幽霊と思われるものをこの後発見することはなかった。

とりあえず廃墟はこれで終わりです

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