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ちょっと家出してみようか  作者: 霜雪 雨多
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10/17

廃墟にて-3

久々に投稿できました。投稿がはやくできるようがんばります…

2階の客室へ行く前に、1階もみて回ろうとしたが、野々崎がどんどん進んで行ってしまうので、諦めて客室に行くことにした。


客室のある廊下は、他と同様にしん、と静まり返っている。それでも、過去に自殺者が出たことを思うとどこかおどろおどろしい。

客室はL字型に10数部屋配置されているようだ。


「それじゃあ、先に入りなさい」

「え? いや、野々崎が急いでたから先に入ってみたいのかと思ったんだが」

野々崎はツンと澄ましたように答えた。

「そういうわけではないわ。ほら、あなたがこの場所を選んだのでしょう。さっさと入りなさい」

命令されるのはどうも釈然としない。入るんだけどさ。

扉は室内側に向かって開くようだ。ドアノブをゆっくりと回し、押し開けた。


中はいたって普通の和室だった。

手前にはトイレと風呂場、洗面所があった。もちろん断水している。

トイレの便器には黒カビが生えまくっていたので、それは勘弁だ。

和室には、普通であれば置いてあるだろう背の低い机やテレビなんかの家具は皆無であった。旅館を閉めるときに全て売り払ったのかもしれない。

照らしてみても特に異常はない。幽霊が出るわけでもないし壁に人の顔が染み出してるなんてこともない。


あちこち照らしていると、続いて野々崎も入ってきた。

「どうやら安全そうね」

「僕を餌がわりに使うのやめてね」

「いいじゃない。減るものじゃないし」

「何かあったときに僕のSAN値は減るのですが」

「そんなことはどうでもいいわ。葉波くん、暗いから雨戸を開けてもらえる?」

まあそれぐらいは別にいいか、と雨戸を引きあける。

まばゆい光が入ってきた。一瞬目が眩むがすぐに慣れた。


ガラス越しにザアザアと雨が降っているのが見える。帰りはどうしようか。少なくとも僕は雨具を持っていない。

「葉波くん、今黒い影が素早く動いたのが見えたわ」

「え、なんだ。一体何が動いたんだ」

「まっくろくろすけかもしれないわ。押入れに隠れたけれど」

さすがにまっくろくろすけはないだろう。

押入れに注目すると数cmの隙間があった。きっとここを通って押入れに隠れたのだろう。

襖を開けよう。


押入れの中には本来仕舞われているはずの枕や布団は影も形もなかった。これらも売っぱらってしまったのかもしれない。

その代わりに一面にゴキブリがいた。子供から大人まで。結構な量が住み着いている。

ピンと伸びた黒光りする触覚、油でテラテラと光る羽根。

1匹のゴキブリと目があった気がした。


そして一瞬の静寂。


ガッ! と目にも留まらぬ速さで襖を閉めた。

直後、中からはゴキブリが羽音を立てて飛び回る、あまり精神衛生上よろしくない音が聞こえてきた。間一髪セーーーフ。

「まっくろくろすけはいたかしら」

「まっくろくろくろくろすけはいたけどな。大量に。自分で確かめるといい。」

「そう。遠慮しておくわ」

さすがにこんなあからさまに生き物がガサゴソしている襖を開ける気にはならないようだ。

天井にも畳にもやはり特段変わったところはない。安心したような、安心したような。


「いま、何か音がしたわ」


「え? 何も聞こえなかったぞ」

「幽霊かもしれないわ。行ってくる」

そういうと、野々崎はそのまま部屋の外へと出ていった。

…追いかけようか。別に一人が心細いわけではないぞ。

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