暗雲立ち込めるシンガポール
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1941年12月11日シンガポール沖
十数隻からなる艦隊が蒼海を切り裂いて進んでいた。
その艦隊の中心を進む大型艦は特異な形状の主砲配置を持っていた。
全部に三連装の砲塔を3基持ち、艦の後方に艦橋がある。
マストにはユニオンジャックが誇らしげに翻り、自らが英国海軍であることを主張していた。
インディファティガブル級巡洋戦艦2番艦「インヴィンシブル」、英国海軍が送り出した東洋艦隊の旗艦である。
その周りを固めているのはネルソン級戦艦のロドニー、カウンティ重巡洋艦ドーセットシャー、コーンウォール、E級駆逐艦エレクトラ、エンカウンター、エスカペード、エスコート、エスク、エクスプレス、F級駆逐艦フォレスター、フォアサイト、フォーチュン、フォックスハウンド、フューリーの計11隻の駆逐艦であった。
旗艦インヴィンシブルに座乗するのはトーマス・スペンサー・フィリップス大将である。
後に彼の率いる東洋艦隊は、帝国海軍から「シンガポールの怪物」と恐れられる獅子奮迅の活躍をすることになる。
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1941年12月13日柱島泊地
真新しい一隻の戦艦が浮かんでいた。
全長は、駿河型や扶桑型の戦艦よりやや長く、その全幅はかなりの装甲厚がある事を示していた。
だが、艦橋は駿河型、扶桑型に類似しており、上部構造物だけを見れば判別し難い。
しかし、主砲塔は46センチ三連装砲が4基12門と過去の日本戦艦に例がない。
瑞穂型戦艦一番艦「瑞穂」、7万トンを超える巨体に12門もの46センチ砲を搭載する帝国海軍の切り札であり、ポスト六六艦隊計画の一番艦である。
瑞穂の乗組員は2,800人を超えており、これ程の巨艦であれば、慣熟訓練を終え前線に配備されるまでに約6ヶ月はかかる。
一刻も早いこの艦の前線への投入が期待される戦時中では、あまりにも長い期間であった。
だが、戦争は予想より早くこの瑞穂に活躍の機会を与えたのである。
インディファティガブル級巡洋戦艦
同艦型 インディファティガブル インヴィンシブル インプラカブル
性能諸元
排水量常備:39,313トン
全長236.4m、水線長:233.5m
全幅35.3m
吃水9.1m
機関 海軍式三胴型重油専焼水管缶8基+パーソンズ式オール・ギヤードタービン4基4軸推進
最大出力140,000hp
最大速力28.5ノット
航続距離18ノット/7,300海里
乗員1,740名
兵装Mark II 40.6cm(50口径)3連装砲3基
Mark XXII 15.2 cm(50口径)連装速射砲6基
Mark VIII 12cm(43口径)単装高角砲6基
2ポンド(4cm)ポンポン砲8連装2基
装甲舷側 380 mm
甲板 179 mm
主砲防盾 406 mm(前盾)、279 mm(側盾)、184 mm(天蓋)
説明
ユトランド沖海戦で得た戦訓を取り入れた巡洋戦艦である。しかし、その装甲の厚さはもはや巡洋戦艦ではなく戦艦と言っても申し分ない程であり、帝国海軍や合衆国海軍では高速戦艦に分類されている。その攻撃力の高さと高速力、防御力の高さから史上最高のイギリス戦艦と呼ばれている。また、竣工当時はその完成度の高さから、インコンパラブル・バトルシップ(比類なき戦艦)とも呼ばれた。現在は、インヴィンシブル級の後継艦に当たるインドミタブル級が建造中である。