第10話:うちのサンタが妬みすぎる!
《 前回のあらすじ 》
世界中の子供に、プレゼント配ったぜ。
(中身は極悪ジンジャークッキー10キロ)
北極、サンタクロースの家。
12月31日 23時58分。
暖炉の火が明るく室内を照らし、時折パチパチと火の粉を跳ね上げている。
外は猛吹雪。吹き荒れる風が窓をゆらし、雪がガラスを叩く音が絶え間なく響く。
室内はシナモンとバター、そしてほんの少しの銃油の匂いが混じった、クリスマスの残り香だった。
ノエルは革張りの巨大ソファに深く沈み、膝の上に業務用サイズのポップコーンを載せている。
赤いミニスカサンタ服は裾が短すぎて、暖炉の火に照らされるたびに白い太ももがチラチラと光る。
右手にはリモコン、左手にはコルト・ガバメントをくるくると回しながら、テレビを睨みつけている。
暖炉のすぐ横にはルドルフが座り、両手でコーヒーカップを包んでいた。
クランプスは暖炉の影に半身を沈め、黒いコートにヤギのぬいぐるみキャップ、手にはクッキーの袋を抱えてポリポリ食べていた。
テレビの大画面では「世界まるごと年越し生中継!」という特番が大盛り上がりだった。
シドニーで花火がドカーンと上がり、ニューヨークで巨大なボールがゆっくりと落ち、日本の寺で除夜の鐘がゴーンと鳴る。
「ハッピーニューイヤーッ!」
緊張の解けた明るい笑顔で、三人が声を揃えて新年の挨拶を交わした。
これまでノエルは、ひとりでマフィア映画を観ながら静かに新年を迎えるのが恒例だった。でも今年は違う。サンタ活動をチームで再開した記念すべき年だし、クランプスも招いて、賑やかに新年パーティを開いていたのだ。
そしてコーナーが変わった。
「さて日本のお正月といえば~七福神巡り~♪バブル崩壊から景気が低迷していますが、今年こそは良い年になりますように」
画面にゆるゆるのCGで宝船が登場する。
恵比寿は釣り竿を垂らしたまま爆睡、大黒天は米俵を枕にして横になっている。
布袋さんは大きな腹を出してイビキをかき、福禄寿と寿老人は頭を並べて昼寝。
弁才天は鏡を見て髪を整えている。
毘沙門天だけが甲冑をピカピカに磨いているが、周りは全員寝正月モード。
BGMは三味線アレンジの「めでた~い、めでた~い」。
ノエル、ポップコーンを口に運ぶ手がピタリと止まる。
一粒、ぽとりと床に落ちる。
「……は?」
静寂が室内を包む。
「……はぁぁぁぁ???」
暖炉の火がビビって音を小さくした。
ノエルがゆっくりと立ち上がる。
ポップコーンボウルが床に転がり、カリカリと乾いた音を立てる。
「ルドルフ」
「な、なんだい!?」
「クリスマスって俺ら、何時間働いた?」
「えっと……24日から25日にかけて、ほぼノンストップで……」
「残業代は?」
「出るわけないでしょ」
「クランプス、悪い子は何人地獄送りした?」
「プレゼントを配るだけで手一杯でしたので、0人。私の新記録ですわ」
「それに比べて、七福神の奴らは?」
「日本人が勝手に巡って御朱印コンプして終わりですわね」
「俺は世界中を徹夜で回ったってのに、あいつらは船で寝てるだけ???」
ノエルの瞳が、完全に覚醒した。
壁に近づき、油性マジックを掴むと、ホワイトボードにでかでかと殴り書き始めた。
【2026年の目標】
・七福神にクリスマス級の労働をさせる
・宝船を爆速仕様に改造
・ド派手に過ごす
書き終えた瞬間、ノエルはマジックペンをポイッと投げ捨て、
両拳をガッチリ握って叫んだ。
「行くぜ! 七福神を強襲だ!!」
「えええ、ノエル、今から!?」
「年明けパーティーは……? ジュース開けたばかりですのに」
「パーティーなら、これから派手にやるぜ! めでてー!!」
暖炉の火がビュオオオオと燃え上がり、
北極の夜空に赤いマントを翻す最悪のサンタが飛び立った。
──ここまで読んでくれた良い子たちへ。
お疲れ様だったな。
だが、まだ帰るなよ?
・次のエピソードは12月26日、20時に投稿予定だとよ。
七福神どもに殴り込みしてやるぜ!
・ブックマークしてない奴、手あげろ。
ホールドアップしろとは言ってねえ。
・活動報告も要チェックだ。
小話をアップしていくよう、作者を脅しといた。
本編が待てない良い子は、そっちも読め。
──ノエルより。




