第11話:うちのサンタが騒がしすぎる!
《 前回のあらすじ 》
俺は70年ぶりに働いたんだ。
七福神ども、お前らも働けや!
瀬戸内海、宝船の出現ポイント。
夜空は満天の星。
下は黒々とした冬の海。
波は穏やかで、まるで
「正月は静かに過ごそう」と海が言っているようだった。
そんな静寂を、轟音がぶち破る。
ズガアアアアアアア!!
ルドルフが超高速で引っ張るソリが、
海面すれすれを爆走していた。
後部座席でノエルがマイクスタンドを握り、大きく叫ぶ。
「着陸地点確認! 宝船まであと30秒!
クランプス、準備はいいか!?」
「耳がキーンってなって、全然聴こえませんわっ!」
「準備OKと理解したぜぇ!」
海面に、ぼんやりと光る巨大な影。
和風の帆を張った、黄金の宝船。
甲板では、七福神が酒盛り真っ最中だった。
恵比寿「いやー、日本人が勝手に巡ってくれるから楽じゃのう~」
大黒天「賽銭も集まってくるしな~」
布袋「うぃーっ! 正月は寝正月じゃー!」
弁才天「横顔のほうが映えるかしら♡」
毘沙門天だけが槍をピカピカに磨きながら
「ふむ……」と空を見上げていた。
その視線の先──
ドゴオオオオオオオオン!!!
轟音と共に、ソリが宝船の甲板に隕石みたいに突っ込んだ。
船が30度傾き、酒瓶がゴロゴロ転がる。
煙の中から、ノエルがゆっくりと降り立つ。
赤いマントが夜風にヒラリ。
両手にコルト・ガバメント。
口元には満面の笑み。
目は完全に死んでいる。
「よお、神様方。初詣に来たぜ!」
七福神達が身を硬直させた。
恵比寿「……なんだこのエロサンタは?」
大黒天「御朱印泥棒か?」
布袋(寝たまま)「夢じゃろ……」
ノエルが、ズカズカと甲板を歩きながら、ビシッと中指をたてる。
「てめーら!
新年を担当してんだったら、寝てないで働けッ!!」
「「「「「「は?」」」」」」
恵比寿が釣り竿を構える。
「人間の分際で神に向かって……!」
竿を振り回す。
ノエルのスカートを、釣り針がガツンと引っかけた!
「エロサンタ、釣り上げたりー!」
「ちっ! 調子乗ってんじゃねえよ鯛野郎!」
ノエルが逆さ吊りのまま、銃を乱射する!
バンバンバンバンバン!!
だが弾丸は全部鯛に変形し、甲板でビチビチ跳ね回った。
恵比寿「ははは、宴を邪魔した罰だ!」
他の神も、ゆっくり立ち上がる。
「「「「「「神罰を受けろ!」」」」」」
ノエルは宙吊りの糸を腕力だけでビリビリと引きちぎり、甲板に軽やかに着地した。
──次の瞬間。
甲板全体が、まるで生き物のように蠢いた。
床板の隙間から、漆黒の“何か”が音もなく這い出し、蛇のようにうねる。
ズズズズズズッ……!!
影は一瞬で無数の縄と化し、七福神たちを取り囲んだ。
「問答無用で襲いかかってくるとは……日本の神様って、本当に無粋ですこと」
月光を真正面から浴びて、影の中からゆっくりと姿を現したのは、
銀髪を夜風に靡かせたクランプスだった。
ルビーの瞳が妖しく輝き、右手に握られた四連のカギ爪が、冷たい月光を浴びて白く煌めく。
「大人しく、なさいませ」
ズルルルルル!!
漆黒の縄が奔流となって襲いかかり、
恵比寿、大黒天、弁才天、福禄寿、寿老人、布袋──六柱の体を一瞬で絡め取り、甲板に固定した。
恵比寿「なっ……なんだこの影は!?」
大黒天「くそっ、身動きが取れねえ!!」
弁才天「ちょっと映え悪すぎでしょ! こんな拘束プレイやだー!!」
だが。
ガキィィィィン!!
轟音と共に黄金の閃光が炸裂。
毘沙門天だけが、影の縄が触れた刹那、
全身から迸る金色の闘気を爆発させ、
漆黒の縄を焼き払い、粉砕した。
甲冑が重々しく鳴り響く。
毘沙門天は無言で、槍を構え、クランプスを睨みつけた。
「悪魔の術か。面白い。
だが、戦いの神に通用するとでも思ったか」
黄金の闘気が一瞬で膨れ上がる。
クランプスが、わずかに顎を引いて一歩退いた。
「……あら。完全に無効化されるなんて、初めてですこと」
ノエルが唇の端を吊り上げる。
「残ったのは武闘派の一人だけか。
他の雑魚とは格が違う、殺気だな」
毘沙門天が、ゆっくりと宝塔を掲げながら、
真正面に一歩踏み出す。
甲板が軋み、海面が震えた。
「サンタの小娘に悪魔、トナカイ付きか……
正月早々、面白い遊び相手だ」
宝塔の奥から、あの忌まわしい虹色の光が、
粘つくほど濃密に漏れ始める。
ノエルの表情が、笑みを消した。
「……その光、まさか虹色の石か?」
ルドルフが、背中の毛を逆立てる。
「七福神もあれ使うの!?」
毘沙門天が、静かに笑った。
「ほう? 知っているのか、小娘」
ノエルは、右手のコルト・ガバメントを、指一本でくるくる回しながら、笑顔で牙を剥く。
「知ってるも何も、去年、北極で俺がぶっ壊したやつだぜ」
銃口が、毘沙門天をピタリと捉えた。
──ここまで読んでくれた良い子たちへ。
お疲れ様だったな。
だが、まだ帰るなよ?
・次のエピソードは12月27日、20時に投稿予定だとよ。
虹色の宝石、マジうぜえ!
・ブックマークしてない奴、手あげろ。
ホールドアップしろとは言ってねえ。
・活動報告も要チェックだ。
小話をアップしていくよう、作者を脅しといた。
本編が待てない良い子は、そっちも読め。
──ノエルより。




