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ヴィラレットの剣技の基礎


 ジューネスティーンは、ヴィラレットが腰に差しいている剣を見て、似た様な剣だと思った様だ。


(へーっ、世の中には、同じ様な作りの剣が有るんだな。)


 ジューネスティーンは、呑気にヴィラレットの腰の剣に目をやると話しかける。


「さっきの体捌きはすごかったです。 冒険者は上半身、特に腕の力を鍛えがちですけど、安定した足腰があるから上体を維持できる事を見落としがちです。 しっかりと足捌きで躱せる人は久しぶりに見させてもらいました。」


 ジューネスティーンの褒め言葉にヴィラレットは少し顔を赤めつつ答える。


「私、冒険者になる前に少し剣を教えてもらった事が有って、その時の師匠が、剣は足から作るものだって言われてたもので、習いたての頃は剣を振るより足腰を鍛えられてたんです。」


 それを聞いて感心する。




 安定した下半身があるから上半身の激しい動きにも付いていける。


 人は、手首を左右に振るだけでも体全体が動いている。


 体全体のバランスを取りながら動くには、下半身が安定している事が重要になる。




 その事を弁えている人は、どんどん伸びるものなのだ。


 ジューネスティーンは、優しく声を掛ける。


「良い師匠に恵まれましたね。 その通りだと思います。 見ていてあんな力強い魔物の攻撃を受けるには、どんなに体を鍛えても受け止めるのは難しいでしょう。 それに動きが止まらない方が効率が良いと、自分も思います。 それにあの動きなら持っている剣が威力を発揮するでしょうね。 動きながら捌いていきますから刺すより斬る方が、攻撃の幅が広がると思います。」


「ええ、以前はレイビアを使っていたのですけど、折れてしまったので今はこの剣を使ってます。 斬るための剣なので軽く反っていますから、とても使いやすくて、それに細身の剣なのに、折れにくくて曲がり難い剣だって聞いてます。」


 ジューネスティーンは、自分のコンセプトと同じ様な剣が世の中にはあるのだなと思ったのだろうが、それ以上の詮索はしなかった。


「それは良かった。 良い剣に巡り会えたみたいですね。」


「はい。 ありがとうございます。 とても助かってます。」


 ジューネスティーンは、不思議そうな顔をしたが、そのままスルーした。




 ヴィラレットは、先日、カインクムから購入した剣は、ジューネスティーンから製造ノウハウを聞いて作ったと聞いている。


 ジューネスティーンが居なければ、この剣を手にする事もできずに、もっと重い曲剣を使う事になったかもしれない。


 そうなると、今の様な動きが出来たとはかぎらない。


 そう思うと思わずお礼を言ってしまったのだ。




 ジューネスティーンは、今の戦い方を見て、自分達パーティーに欠けているものを考えていた。


 ユーリカリア達の戦い方は、少なくとも前衛になれる人が4人おり、弓と魔法職も優秀なら同数の敵に襲われても、前衛が接敵する前に半数は倒せる事になる。


 前衛の接敵後の戦い方もしっかりと決められているのだろう。


 もし、さっきの弓矢が、一つ外れて3体と対峙した時にも、それなりの戦術を用意しているのだろうと考えられる。


 ユーリカリア達を見ていて、自分達に照らし合わせると、現時点で魔物と接近戦を行えるのは、ジューネスティーンのみで、レィオーンパードとアリアリーシャについては、前衛と言っても接近戦が出来るかと言ったら、ヴィラレットの様に、立ち回る事ができる可能性はかなり低い。




 レィオーンパードとアリアリーシャ、2人の戦い方はどちらかと言うと、前衛より斥候の戦い方に近いのだ。


 一撃を加えた後に直ぐに離脱する、ヒットアンドウエイ方式なので、ガッツリと向き合って戦うのは向かない。


 2人にもヴィラレットの様な回避しながら攻撃を加える事ができれば攻撃手段が増えるので戦術もバリエーションが増える。


 それに、アンジュリーンとカミュルイアンにも同じ様な事が出来れば、更に戦術の幅も広がるし、万一、魔物に突破されてしまった時には、弓より剣の方が有効になる。


 それなら、2人のエルフにも剣にもっとなれてもらえれば、もっと戦える様になるのではないかと考えている。




 一度の攻撃で、複数の敵と対峙するには、突破された時の事を前提として、全員が接近戦闘ができた方が生存率は格段に上がる。


 倒せなかったとしても、剣で牽制しつつ時間を稼げるだけでも、その間に誰かが駆けつければ生存率は高くなる。


 帝都に入る前に戦った東の森の魔物は1匹だけだったから、あの戦術で良かったのだろうが、複数の強い魔物と対峙した時には、メンバーの損傷も考えなければならない。


 そう考えると、ユーリカリア達の戦い方を、もっと分析して、自分達のメンバーに身に付けさせる必要が有ると、ジューネスティーンは考えているのだ。




 ユーリカリアは、考え込むジューネスティーンを見ると、声をかける。


「よお。 戦場で、あまり、考え込むのは良くないぞ。 弱い魔物でも集中してないと、足を掬われる事もある。」


「ああ、すみません。 今の戦い方を見て、自分達に何が足りないのか考えていたんです。」


「その様子だと、新しい課題も見えてきたみたいだな。」


 そう言ってニヤリと笑う。


「ええ、大変勉強になりました。」


「じゃあ、どうする。 こっちは、遠距離で仕留めた魔物のコアを拾いに行きたいんで前進するつもりなんだ。 多分、その辺りに行く頃には次の魔物が近づいてくるはずだ。」


「わかりました。 それじゃあ、そこまでは自分達に露払いをさせてください。」


「ああ、わかった。」


 ジューネスティーンの提案にユーリカリアは同意した。


 ユーリカリアもジューネスティーン達が、どんな戦い方をするのか、見てみたいと考えていた様子なので、いい機会だと考えているのだ。



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